『維摩経とは何か 空・不二・中道から読むブッダの思想』(中央公論新社) - 著者: 植木 雅俊 - 張 競による書評

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維摩経とは何か 空・不二・中道から読むブッダの思想
『維摩経とは何か 空・不二・中道から読むブッダの思想』(中央公論新社)著者:植木 雅俊

聖徳太子が著した『三経義疏(ぎしょ)』の一つに『維摩経義疏』という注釈書がある。本書はその原典の内容と意義について、新しい知見を踏まえて詳しく解説したものである。

『維摩経』は三幕戯曲のような形を取っており、古代インドの商業都市ヴァイシャーリーがその舞台になっている。主要な登場人物は在家菩薩のヴィマラキールティで、その名前は「維摩」や「維摩詰」と漢訳された。原典のサンスクリット語の名称は「ヴィマラキールティの教え」との意味で、鳩摩羅什(くまらじゅう)訳『維摩詰所説経』にちなんで、『維摩経』と通称されている。

インド仏教史の流れにおいてこの経典の意義を読み解いたのが本書の特色である。伝統的・保守的な小乗仏教を批判し、大乗仏教を宣伝する目的で編纂(へんさん)された『維摩経』はどのような時代背景のもとに成立したか。如何(いか)なる宗教思想を伝えようとしているか。また、同じ大乗仏教経典でも、さきの時代に成立した『般若経』と、後の『法華経』とどこが違うか。それらの問題について、具体例を挙げながら、詳細に紹介されている。仏教の奥深さを知るための、手近な道案内である。
【初出メディア】
毎日新聞 2026年9月5日
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