
『死んでも何も残さない 中原昌也自伝』(新潮社)著者:中原 昌也
創作の秘密解き明かす「自伝」
中原昌也、40歳。作家にしてミュージシャン、そして画家。でも、「自伝」は早すぎるでしょ、やっぱり。ただし、ここに書かれてあることは、興味深い。中原が東京の、典型的な「都会の子」として生まれ、80年代の混沌とした文化状況の中で多感な10代を送ったことが、彼の生み出す作品に決定的な影響を与えている。そのことはだいたい推測できることなのだが、本人の口から、そのあたりの関連性を語ってもらうと、腑(ふ)に落ちる部分が多い。
たとえば、あるノイズ・ミュージックについて、中原はこんなことを語っている。そのバンドの音楽を聴くのは「単調」だからだ、と。予測不能の即興から遠く離れて、延々と続く単調さに浸っていると、巨大なハテナマークが出てくる。そこが面白い、と。
きちんと構成されたものなど、何も面白くない。一文を書きしるす。その先の一文は書いてから呻吟(しんぎん)して生み出される。着地する場所など、決まっていない。
いまどき珍しい無頼派のような生活の一端も、惜しみなく語っている。中原の小説のファンのみならず、未読の方々にも彼の創作の秘密は興味深いだろう。
【初出メディア】
日本経済新聞 2011年4月20日
http://www.nikkei.com/

19 時間前
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