
『マサニエッロの反乱 一七世紀ナポリの民衆蜂起とその後日譚』(ミネルヴァ書房)著者:倉科 岳志
17世紀のナポリ周辺はスペイン王国の支配下にあった。その徴税権に加え、貴族たちの中間搾取があった。
そのしわ寄せを被ったのが下層民であった。間接税が導入され、とくに果物と野菜への課税がなされ、庶民の基本食材であったから、不満が爆発する。一六四七年七月七日、徴税人と卸業者の対立と混乱があり、群がる少年たちがイチジクやリンゴなどを役人の顔面に投げつけたりした。
その一群のなかにいた魚売りのマサニエッロなる男が果物の代わりに石を投げ始め、少年たちもそれにならった。「間接税をなくせ」という騒動はますます大きくなり、もはや暴動といってもよかった。反乱はナポリの各地に飛び火し、世俗の人間ばかりか、聖職者たちもおり、他の地域と連携しやすかった。指導者たちのなかでもマサニエッロにはことさら魅力があり、王のごとくその命令に庶民は従ったという。やがて悪政反対の暴動の拡大を恐れた王宮側から和睦の申し入れがあり、船上で大盤振る舞いの祝宴が催された。ところが、この饗宴(きょうえん)の後、マサニエッロには狂気じみた言動が目立つようになったという。その顚末(てんまつ)やいかん? 近世イタリアの民衆史が鮮やかによみがえる。
【初出メディア】
毎日新聞 2026年9月5日
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