海の水は彗星や小惑星がなくても手に入った?
海の水は彗星や小惑星がなくても手に入った? / Credit:Canva地球の表面のおよそ7割は、海に覆われています。
これほどありふれた水ですが、その出どころは、実はいまも決着がついていません。
そもそも地球が生まれた太陽の近くは、水にとって熱すぎる場所でした。
太陽から遠い寒い場所なら、宇宙を漂う小石は氷をまとっていられます。
ところが地球のあたりでは、水は氷のままではいられません。
石と水素から水が生まれる過程を再現――地球の海の起源に新説① / Creedit:川勝康弘そのため、地球を組み立てた材料そのものは、からからに乾いていたと考えられています。
乾いた材料からできた惑星に、なぜこれほどの海があるのか。
よく語られる答えが、いわば「宇宙からの宅配便」説です。
地球が育つ途中や、できあがったあとに、氷を抱えた彗星や水を含む小惑星がぶつかり、外から水を運び込んだという考えです。
しかし今回の研究チームが考えたのは、水を外から運ぶのではなく、育っていく地球がその場でつくってしまう道でした。
水の起源を、乾いた岩と水素に求める考え方です。
その鍵を握るのが、地球の育ち方です。
昔からの有力な説では、地球は岩の塊どうしが衝突と合体を繰り返し、数千万〜数億年かけて育ったと考えられてきました。
石と水素から水が生まれる過程を再現――地球の海の起源に新説② / Creedit:川勝康弘これに対して近年注目されているのが、宇宙を漂うミリからセンチほどの小石を次々に集めて、数百万年ほどで一気に育つという考えです。
この小石こそが、からからに乾いた地球の材料です。
その仲間は、いまも隕石の中に丸い粒(コンドリュール)として残っています。
生まれたばかりの太陽のまわりには、水素を主とするガスも漂っていましたが、このガスは数百万年ほどで消えてしまいます。
数千万年かけて育つのでは間に合いませんが、数百万年で一気に育つなら、地球はガスが残っているうちに大きくなれます。
そして大きくなった地球は重力でこのガスを引き寄せ、厚い水素の大気をまといます。
石と水素から水が生まれる過程を再現――地球の海の起源に新説③ / Creedit:川勝康弘そこへ小石が次々に落ちてくると、落下のエネルギーが熱に変わります。
この熱は、大気の上のほうでは、すぐに宇宙へ逃げていきます。
ところが下のほうでは、そうはいきません。
大気の底ほど、上に積み重なるガスが多く、気圧が高くなります。
それは、底ほど分厚い毛布を何枚も重ねてかぶっているのと同じことです。
熱はこの毛布にさえぎられて、なかなか外へ逃げられません。
こうして熱は大気の底にこもり、大気は下へ行くほど熱くなっていきます。
地球ほどの大きさになると、大気の底は2700℃、200気圧(深さ2000メートルの海の底ほどの圧力)を超えることもあると考えられています。
岩石を溶かすには十分すぎる熱さです。
この熱い大気の中へ、小石は次々に飛び込んでいきます。
流れ星は猛スピードで大気に突っ込むので、一瞬で燃え尽きてしまいます。
これに対して小石は、分厚い大気のブレーキをまともに受け、秒速数メートルほどのゆっくりした速さで、何千キロメートルもの道のりを落ちていきます。
そのあいだに、まわりの熱で溶けていくのです。
つまり当時の地球の空では、溶けた石の粒が、熱い水素にどっぷり浸かったまま、何日もかけて落ちていたと考えられます。
この小石の雨にも、水素の大気にも、海をつくれるほどの「水」は含まれていません。
けれども、両方を合わせれば「水の材料」はそろっています。
石と水素から水が生まれる過程を再現――地球の海の起源に新説④ / Creedit:川勝康弘水は、水素2つと酸素1つが結びついたものです。
水素のほうは、大気にいくらでもあります。
もう一方の酸素は、乾いた石の中にたっぷり含まれています。
実は地球の岩石は、重さのおよそ半分が酸素です。
わかりやすいのが、水晶です。
水晶は、ケイ素1つと酸素2つが結びついたもの(二酸化ケイ素、SiO₂)で、重さの半分あまりを酸素が占めています。
岩石の多くは、このケイ素と酸素の組み合わせを骨組みに、鉄やマグネシウムなどが加わってできています。
石が乾いているというのは、水の粒(水分子)を含まないというだけのことなのです。
問題は、その酸素を石から引きはがせるかどうかです。
石と水素から水が生まれる過程を再現――地球の海の起源に新説⑤ / Creedit:川勝康弘ケイ素やマグネシウムは酸素とがっちり結びついていて、熱い水素でも簡単には引きはがせません。
その点、鉄は酸素をそれほど強くは抱えていません。
そこで主役になるのが、鉄さびと同じく鉄と酸素が結びついた成分(酸化鉄)です。
熱い水素がこの酸化鉄に触れると、水素は鉄から酸素を奪い取って水(水蒸気)になり、酸素を手放した鉄は金属の鉄として残ります。
地上では、この反応が新しい鉄づくりに生かされ始めています。
鉄鉱石の酸素を石炭ではなく水素で奪い取り、煙突から二酸化炭素の代わりに水蒸気を出す「水素製鉄」です。
乾いた小石が熱い水素の中を何日も落ちていくなら、地球の空そのものが巨大な水素製鉄所になります。
石から次々に水が生まれても、おかしくないのです。
では、小石が落ちていくあいだに、本当に水はできあがるのでしょうか?







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