脳の中には「修理係」がいる
脳卒中の代表的な病気である脳梗塞では、脳の血管が詰まり、酸素や栄養が届かなくなった部分の神経細胞が死んでしまいます。
このとき、失われた細胞そのものを完全に元通りにすることはできません。
しかし脳には、残された神経回路をつなぎ直したり、神経の働きを支える構造を修復したりする仕組みがあります。
今回の研究で重要な役割を果たしたのが、ミクログリアと呼ばれる細胞です。
ミクログリアは、脳の中に住んでいる免疫細胞の一種です。
普段は脳内を見守る警備員のような存在ですが、脳が傷つくと現場に反応し、炎症を起こすだけでなく、修復を助ける働きもします。
研究チームは、脳梗塞を起こしたマウスを詳しく調べ、損傷後のミクログリアが「インスリン様成長因子1(IGF1)」といった、神経の回復を助ける物質を作ることを確認しました。
いわば脳が損傷すると、ミクログリアが「修理モード」に入り、神経のつなぎ目であるシナプスや、神経線維を包む髄鞘の回復を支え始めるのです。
そして、この修理モードを始めるスイッチとして働いていたのが、「YY1」というタンパク質でした。
YY1が働くことで、ミクログリアは脳を治すための物質を作れるようになります。
反対に、YY1の働きを失わせると、ミクログリアは神経修復に必要な物質を十分に作れなくなりました。
つまり今回の研究は、脳卒中後の脳がただ壊れっぱなしになるのではなく、内部で自然な修復プログラムを立ち上げていることを示したのです。
ただし、ここで大きな問題があります。
その回復力は、いつまでも続くわけではなかったのです。









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