「恥ずべき器官」と呼ばれていた時代から続く、知識の空白
「クリトリス×粒子加速器」――先端部の神経に『5本の樹』を世界で初めて発見 / Credit: Lee et al., bioRxiv (2026)1486年の魔女狩り文書『魔女に与える鉄槌』などに代表される言説の中で、クリトリスは「悪魔の乳首」とみなされていきました。
これは魔女を見分ける身体的特徴のひとつとされ、女性の身体の一部が文字通り罪の証拠として扱われていた時代の記録です。
時代は下って1546年、フランスの解剖学者シャルル・エティエンヌは、自著の中でクリトリスを「恥ずべき器官」と記述しています。
ですが1844年になるとドイツ人解剖学者ゲオルク・ルートヴィヒ・コーベルトによって、二股の脚や血管・神経まで含めた、当時として非常に精密な解剖図が描かれます。
ところが1948年、世界で最も権威ある解剖学教科書『グレイ解剖学』の第25版で、編集者の判断によってクリトリスの記述が削除されてしまいます。
1995年の第38版でようやく『ペニスの小型版』として復活したものの、コーベルトが100年以上前に描いた精緻な姿には到底及ばない記述でした。
その後1990年代後半から2000年代にかけてMRIなどの撮影技術を使うことで、外から見える小さな突起は全体のごく一部にすぎず、皮膚の下に二股に分かれた「脚」が骨盤の奥まで広がっていることが「再認識」され、多くの人々に知られることになります。
こう見ると、クリトリスの研究はまさに時代との闘いだったと言えるでしょう。
その後、クリトリスの神経の数を計測する研究などが盛んに行われ、神経密度がペニスの6〜15倍に達することが報告されるなど、大きく研究は進みました。
しかしタブー感が薄れても、2002年から2022年までの20年間で陰茎亀頭に関する論文数は陰核亀頭の論文の20倍にも達するなど、研究予算や関心の分配は不均衡な状況が続いてきました。
ペニスなどでは比較的詳細に研究されてきた神経の全体像も、クリトリスでは不明のままだったのです。
そこで研究者たちは、思いがけない道具に手を伸ばしました。









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