「宇宙の原料」水素原子を、LEDの光でフラスコの中に作り出すことに成功

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宇宙一ありふれた原子が、実験室で扱いにくかった理由

水素原子の1つの状態を表す「波動関数」を、絵にしたものです。 色の違いは、その波の「位相」(波のどの段階にあるか)の違いを表しています。水素原子の1つの状態を表す「波動関数」を、絵にしたものです。 色の違いは、その波の「位相」(波のどの段階にあるか)の違いを表しています。Credit: Berndthaller / Wikimedia Commons(CC BY-SA 4.0)

まず、ボンベに詰められた水素ガスは、水素の原子が2個つながった分子です。

電子が1個多い水素のイオンや、原子の芯にあたる陽子とも違います。

今回の主役は、1個の陽子のまわりを1個の電子が回るだけの、ひとりぼっちの水素原子です。

この電子には相方がいないため、水素原子は宇宙で最も小さな「ラジカル」です。

ラジカルは、化学で最も基本的な「反応しやすい粒子」ですが、水素原子を作るにはあまりに過酷な条件が必要でした。

最初に水素原子を一時的に作ったのは、1912年、アメリカの化学者アーヴィング・ラングミュアです。

アメリカの化学者アーヴィング・ラングミュアの写真です。 ラングミュアは、プラズマの化学の分野でも大きな仕事を残しました。アメリカの化学者アーヴィング・ラングミュアの写真です。 ラングミュアは、プラズマの化学の分野でも大きな仕事を残しました。Credit: Darren.dolan / Wikimedia Commons(CC BY-SA 4.0)

彼はタングステンの線の上で水素ガスを1,700℃を超えるまで熱し、原子に引き裂きました。

白熱電球の中で光る、タングステンでできたフィラメント(細い線)です。 ラングミュアが水素ガスを熱したのも、このようなタングステンの線の上でした。白熱電球の中で光る、タングステンでできたフィラメント(細い線)です。 ラングミュアが水素ガスを熱したのも、このようなタングステンの線の上でした。Credit: Pixelmaniac pictures (Leave a reply) / Wikimedia Commons(CC0)

この原子が冷たい金属の表面で再びくっつくと、温度は3,400〜4,000℃に達しました。

その熱は、金属の中で最も熱に強いタングステンさえ溶接できるほどでした。

この方法は数十年にわたり、最も強力な工業用の溶接法の一つとして使われました。

1922年には、紫外線を当てた水銀の原子が、水素分子をばらばらにする方法(水銀光増感)も見つかります。

ただ、これには規制の厳しい有毒な水銀の蒸気と、特別な紫外線ランプが必要でした。

1991年には米イェール大学のロバート・クラブトリーが、この方法で作った水素原子を物作りに使えると示しました。

プラスチックの原料になる物質で、炭素どうしの二重結合を壊せたのです。

ただし、クラブトリーは同じ1991年に、それまでに考え出された水素原子の作り方は、どれも物作りの方法としては実用に耐えないとも結論づけていました。

水銀や過酷な条件に頼らず、ふつうの実験室で水素原子を使いこなす方法は、まだなかったのです。

水素原子を作る方法を、1912年の方法と今回の方法で比べた図です。上は強い熱、下は光と薬品という、まったく違う道すじで同じ水素原子が生まれます。水素原子を作る方法を、1912年の方法と今回の方法で比べた図です。上は強い熱、下は光と薬品という、まったく違う道すじで同じ水素原子が生まれます。Credit: ナゾロジー編集部(編集部が作成した図、論文の図1(Flodén et al., Journal of the American Chemical Society (2026)、CC BY 4.0)をもとに作成)
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