北朝鮮で進む「金正恩一強」体制。朝鮮労働党々規約“改定”が映す「権力集中の実像」

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北朝鮮では、憲法だけを見ていては、統治の実像を捉えることはできません。国家を実質的に動かしているのは朝鮮労働党であり、党のあり方を定める党規約には、体制の方向性や最高指導者の権限が色濃く反映されています。メルマガ『宮塚利雄の朝鮮半島ゼミ「中朝国境から朝鮮半島を管見する!」』では、著者で宮塚コリア研究所代表の宮塚利雄さんが、公開された党規約を手がかりに、北朝鮮の統治構造がどのように変化しつつあるのかを考察します。

北朝鮮は憲法の上に朝鮮労働党規約があって、さらにその上に現人神がいる

8月から9月にかけては台風シーズンである。これに地球温暖化などの影響も加わって、日本や韓国はもとより北朝鮮も甚大な水害に見舞われているはずだが、ひとり北朝鮮だけは水害報道が少ない。 北朝鮮は水害の報道管制を行っているのだろうが、北朝鮮の気象状況は日本や韓国でも把握されている。このようなさなかの2026年9月3日に韓国のシンクタンク、国家安保戦略研究院(戦略研)が、北朝鮮で2026年2月に開かれた朝鮮労働党大会後に入手したとする党規約の全文を公開した。

かつて北朝鮮オタクの集まりで、「独裁国家の北朝鮮に憲法はあるのか、ないのか」が話題になったとき、仲間の物知りが「独裁国家とは言え憲法はあるよ、しかし、北朝鮮はその上に朝鮮労働党の規約があるんだ」と言った。すかさずほかの仲間が「さらにその上にやんごとなき現人神がいるんだよな」と付け加えた。

私の事務所の書架にも何年版か分からないが「労働党規約集」だったか、書名は忘れたが間違いなく古びた「朝鮮労働党規約」があった。「憲法の上に労働党規約があるとはどういうことか」との質問に、物知りは「北朝鮮を統治するのは朝鮮労働党であり、その統治規範となる労働党規約は北朝鮮の憲法の上位にあり、朝鮮人民軍といえども朝鮮労働党の前衛に過ぎない」と説明した。これで仲間内は「憲法の上に朝鮮労働党規約があるということをうすうす理解した」様だった。

さて、今回公開された労働党規約だが、戦略研によると、北朝鮮が2023年末に韓国を敵対国と位置付けたことを反映し、党規約からも「統一」に関連する表現が削除されたことが判明したという。

さらに戦略研によると、2024年6月の党規約改正ですでに韓国との関係を「敵対的な二つの国家」とする路線が反映された。「平和統一」「南朝鮮」といった統一や民族に関する表現が削除されており、憲法からも「平和統一」や「民族大団結」などの文言が削除されたことが韓国側の研究で明らかになっている。

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朝鮮労働党規約は2026年2月の党大会でも改正されたとみられ、改正後の党規約は序文で「金日成・金正日主義」にふれつつも、先代の指導者である金日成主席と金正日総書記の業績に関する部分が削除された。その一方で金正恩が担う総書記の権限について具体的に挙げており、金正恩を中心とする体制を強固にする狙いがあるとみられる。

かつての朝鮮労働党規約には「朝鮮労働党規約は、朝鮮労働党の基本的な模範であり、同党が金日成によって創建された主体型マルクス・レーニン主義政党であることを規定し、金日成・金正日主義を唯一の指導思想とし、全社会の金日成・金正日主義化を実現することを最高綱領としている」との条文もあった。

しかし、「金日成・金正日主義」という名称は残されたようだが、二人の業績を具体的に称える記述や「偉大な領袖たちを永遠に高くいただく」と言った表現は削られた」とのことだ。金正恩総書記は目の上のたん瘤を取り除こうとしているのだろうか。

改訂規約では、朝鮮労働党総書記が政治局会議と政治局常務委員会を招集・主宰し、重要幹部を合議体を経ずに直接、任免できると定めた。政治思想的に準備された住民を直接入党させる一方、路線に反対した党員や重大な過ちを犯した党員を除名し、規律に反した党組織や内部部署を解散する権限も明記した。

水害被害の報告が無いのは地方の幹部が甚大な被害状況を報告すれば、罷免、果ては粛清の身になるので、報告を控えているからだろうか。いずれにせよ金正恩総書記の偶像化作業は進む一方、金日成・金正日主義は歴史の彼方に追いやられそうだ。

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image by: smith371 / Shutterstock.com

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