原子核の磁石は、電子越しにしか見えなかった
原子1個の電子スピン共鳴(電子のスピンが電波に共鳴する現象)を測れるようになった、世界で最初期の走査トンネル顕微鏡の一つです。別の研究室の装置で、今回の実験のものではありませんが、今回の研究をしたオッテ氏のグループも走査トンネル顕微鏡を改造した装置を使っています。Credit: Rickinasia / Wikimedia Commons(CC BY-SA 4.0)オランダ・デルフト工科大学のサンダー・オッテ氏のグループは、原子1個のスピンを調べてきました。
使うのは、走査トンネル顕微鏡(とがった針で表面をなぞり、流れる電流で原子を見る顕微鏡)を改造した装置で、針の先から原子1個をねらって電気信号を送れます。
今回の相手は、銀の上に敷いた薄い酸化マグネシウムの膜に、1個ずつのったチタン原子です。
純度99.95%を超える銀の結晶で、電気分解で作られ、木の枝のように伸びた形が見えます。実験の試料そのものではありませんが、今回のチタン原子も、銀の上に敷いた膜の上にのっていました。Credit: Alchemist-hp (talk) (www.pse-mendelejew.de) / Wikimedia Commons(CC BY-SA 3.0 de)表面に垂直な磁場をかけると、電子のスピンが電波に共鳴したときに、針に流れる電流がわずかに変わります。
原子核もスピンを持つチタン47(原子核の重さが少し違うチタンの一種)では、この共鳴の山が6本に分かれました。
原子核のスピンの向きに応じて、電子が共鳴する周波数が少しずつずれるためです。
比べる相手として、原子核のスピンを持たないチタン原子も並べて測られました。
純度99.995%のチタンの結晶の棒で、ソ連時代にヨウ化物法という作り方で作られたものです(重さ約283グラム)。実験では、このチタンの原子のうち、原子核のスピンを持つものと持たないものが並べて測られました。Credit: Alchemist-hp (pse-mendelejew.de) / Wikimedia Commons(CC BY-SA 3.0)つまり原子核のスピンは、電子との結びつき(超微細相互作用)を通して、間接的に姿を見せていたのです。
弱い磁場で見えていた原子核らしい信号も、実は電子のスピンの変化を含んでいました。
しかもその信号は磁場を強めると薄れ、ある強さで完全に消えてしまいます。
磁場が強いほど電子と核の混ざり合いが小さくなるので、信号はこの混ざり合いに頼っていたと考えられます。
一方、混ざり合いが小さい状態では、原子核はスピンの向きを数秒保つと報告されています。
その長持ちする状態で核を直接操れるのかは、これまで確かめようがなかったのです。







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