「わがままな脳」説を、なぜアリで確かめたのか
舗装された小道の端にできた巣の盛り土の上にいる、今回の研究で調べられたのと同じ種のアリです(アメリカ・マサチューセッツ州ストウ)。アリも人間と同じように、社会をつくって暮らしています。Credit: Brighton Lee / iNaturalist(CC0)エネルギーが乏しくなると、脳はほかの臓器より先にエネルギーを確保し、大事な働きを守ろうとする。
こうした考えは「わがままな脳(セルフィッシュ・ブレイン)」説と呼ばれています。
人間やほかの哺乳類では、脳へ優先してエネルギーが回るようすが、これまでにも報告されてきました。
ただしその多くは、脳の大きさなどから推し量ったもので、脳そのもののエネルギー消費を直接測ってはいませんでした。
脳と体全体のエネルギー消費を、同時に考えに入れた研究もありませんでした。
筆頭著者のザカリー・コト氏も、脳と体全体の両方を直接測るのは難しかったと説明しています。
そこで研究チームが目をつけたのが、アリでした。
「アリなら、これらをすべて測ることができる」とコト氏は言います。
アリも人間も、社会をつくって暮らす生き物です。
そのうえアリの脳はとても小さいため、両者を比べるのは特に興味深いのだといいます。
調べたのは、シワアリの仲間(学名:テトラモリウム・イミグランス)の働きアリです。
今回の研究で調べられたのと同じ種の標本を、横から写したものです。人間とは似ても似つかないこの小さな体で、研究チームは脳のエネルギーの使い方を確かめました。Credit: April Nobile / Wikimedia Commons(CC BY 4.0)研究チームは、働きアリの体重と脳の重さ、そして体全体がエネルギーを使う量(代謝量)を測りました。
さらに脳を体から取り出し、脳そのものの代謝量も記録しました。
そのうえで、栄養の足りた働きアリと、栄養が足りない状態の働きアリを比べたのです。
ただしコト氏は、働きアリが飢えに合わせて体を調整するとは限らないとも述べています。
資源が乏しくなると、体を調整して乗り切るのではなく、ただ死んでしまうだけかもしれないというのです。
研究チームが確かめたかったのは、体のほかの働きが落ちる中でも、脳へのエネルギーが保たれるのかどうかでした。






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