この研究の概要
発表
2026年10月に、米国科学アカデミー紀要(PNAS)に掲載されました。
研究チーム
米カリフォルニア大学サンタバーバラ校と南アフリカ国立公園局などの研究者です。
調べた対象
南アフリカのクルーガー国立公園にある、おとなのゾウの死骸の跡40か所です。ゾウの死因は、老いや病気、けが、なわばり争いなどさまざまでした。
調べ方
死骸の中心から0.5mと2.5mの所を「死骸の影響を受けた場所」、15m離れた所を「ふだんの状態」として、土と草の葉を集めて比べました。あわせて、土の細菌やカビの種類の豊かさを遺伝子から調べ、生えている植物の種類や、草食動物がどれだけ草を食べたかも記録しました。
分かったこと
ゾウの死骸から土に大量の栄養がしみ出し、細菌や植物の種類は減っていました。その一方で、土の微生物の呼吸や草食動物が草を食べる量は、かえって増えていました。
まだ分かっていないこと
今回よりさらに古い跡で、植物の種類がこの先どう移り変わるのかは、これからの調査を待つ必要があります。死肉を食べる動物が跡地の栄養の変化にどうかかわるのかも、まだ詳しく調べられていません。
クルーガー国立公園(南アフリカ)で水を飲むアフリカゾウです。今回の調査は、すべてこの公園の中で行われました。Credit: Charles J. Sharp / Wikimedia Commons(CC BY-SA 4.0)クジラの死骸のように、ゾウの死骸も「恵み」になるのか
クジラの死骸が海底に沈んだものは「ホエールフォール」と呼ばれます。
栄養の乏しい深海では、これが食べ物の島となり、死後最長100年ほど生き物に栄養を届けるといいます。
陸でも、体重1トンを超える大型動物は、生きている間に周りの自然を大きく作り変えます。
しかし、そうした動物が死んだあとに何を残すのかは、ほとんど分かっていませんでした。
きっかけは2009年、南アフリカのクルーガー国立公園で起きた1頭の雄ゾウの死です。
この公園には約3万頭のゾウがすみ、毎年およそ600頭分の死骸が生まれています。
単独でいた「アレクサンダー」というゾウが、自然死したのです。
研究者のデイブ・トンプソン氏は、その死骸のそばをたびたび通ることになりました。
数か月で分解されていく死骸を見るうちに、トンプソン氏は興味をかき立てられたといいます。
おとなのアフリカゾウの死骸です(2023年11月撮影)。Credit: Geraldshields11 / Wikimedia Commons(CC BY-SA 4.0)そこで同僚のデロン・バークパイル氏と、死骸が土や微生物、周りの動物にどう響くのかを話し合いました。
やがて二人は、10年以上かけてこの問いを追うための研究費を求めました。
共著者で南アフリカ国立公園局のイザック・スミット氏は、当初その影響を小さく見ていました。
「死骸がそこにあるのは比較的短い間なので、影響もおとなしく一時的だろうと直感していた」というのです。
チームが調べたのは、ゾウの死骸の跡40か所です。
跡地は、死んでから8日しかたっていない所から、7.7年たった所までそろっていました。
それぞれ、死骸のあった地点と死骸の外の地点を組にして、土と植物を集めて比べています。
ゾウの死骸の跡で、土と草をどこから集めたかを示した図です。中心から0.5mと2.5mの所を「跡」、15m離れた所を比べるための「外」としています。Credit: ナゾロジー編集部(編集部が作成した図)ところが分析の結果が届くと、「まったく違う姿が見えてきた」とスミット氏は語っています。







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