量子電池は「時間の逆行」で充電できる可能性がある――「観測」を打ち消すと起きること

21 時間前 2

時間の向きは小さな世界では決まっていない

時間の向きは小さな世界では決まっていない時間の向きは小さな世界では決まっていない / Credit:Canva

そもそも、時間の向きはどうして決まっているのでしょうか。

この問いは古くから物理学者や哲学者を悩ませてきた、とても根深いテーマです。

ここで、ひとつ簡単なことを試してみてください。

熱いコーヒーをテーブルに置いて、放っておく。

しばらくすれば冷めます。

「そんなの当たり前じゃないか」と思うかもしれません。

けれど物理学者は、その「当たり前」をただ受け流さない人たちです。

ニュートンがリンゴの落下を「当たり前」で済まさず万有引力を見出したように、物理学者はコーヒーが冷めるという現象の中にも、深い法則を読み取りました。

コップの中という一カ所にまとまっていた熱が、周りの空気にバラバラに散っていく。

世の中は秩序ある状態から、乱雑な状態へと進んでいきやすい——物理学者はこの傾向を「熱力学の第二法則」と名付けました。

そしてこの「バラバラになっていく向き」こそが、物理学でいう「時間の矢」の正体と考えました。

熱いコーヒーが冷める、つまり一カ所にまとまっていたものが散らばっていくこと、それ自体が時間が流れた証だというわけです。

ところが、ここで不思議な話が出てきます。

コーヒーの熱が散らばっていく——それが時間の矢の正体だという話をしました。

ならば当然、「散らばっていく仕組み」の中にも、時間の向きが刻まれているはずです。

コーヒーの中身を拡大していくと、最後にたどり着くのは分子と分子がぶつかり合う世界です。

このぶつかり合いの一つひとつが積み重なって、全体として「熱が散らばる」という現象を作り出しています。

ということは、この「ぶつかり合い」のルールの中に、「熱は散らばるべし」「時間はこっちに進むべし」という指示が書かれていてもよさそうなものです。

ところが、ここで物理学者たちは困ったことに気づきました。

分子が二つぶつかって跳ね返る。

片方が右へ飛び、もう片方が左へ飛ぶ。

この小さな世界の動きを支配している法則は、ただ「ぶつかったらこう跳ね返る」としか言っていません。

「右の分子が先に動いた」とも「左が先だった」とも言わない。

つまり、ぶつかり方を決めている法則そのものには、「こっちが未来」「こっちが過去」という区別がどこにも存在しない。

これは本当に不思議なことです。

部品の一つひとつには時間の向きがないのに、それが何兆個も集まってコーヒーになった途端、「熱は散らばる一方で、絶対に元には戻らない」という一方通行が現れる。

時間の矢は、部品のルールの中にはどこにも書かれていないのに、全体になると突然姿を現す。

いったいどこから来たのか——この謎は、今も完全には解かれていません。

そして量子の世界に目を向けると、この謎はさらに奇妙な姿を見せます。

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