『郊外少年マリク』(集英社) - 著者: マブルーク・ラシュディ - 陣野 俊史による書評

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郊外少年マリク
『郊外少年マリク』(集英社)著者:マブルーク・ラシュディ

人間の成長の哀歓を優しく

短く畳み掛ける文章の中に、フランスの郊外に生まれ、育ち、大人になった人間の哀歓が描かれる。『郊外少年マリク』はそんな小説だ。

主人公マリクの5歳から26歳までの半生を、マリクの視点から描く。マリクが住むのはフランスのパリ郊外。バカでかい団地が立ち並ぶ地区。

2005年の秋に起こった「暴動」以後、フランスの郊外問題は世界的に知られるようになった。格差は激しく、穴に落ち込んだような暮らしから抜け出せない人々はもがいている。

だが、人々は苦しんでばかりいるわけではない。サッカーが好きで、ボールを蹴る才能があって、女の子にはモテて、でも仕事を始めても、コネがないから突然解雇されたりするマリクには、不思議なくらい悲壮感がない。

作者のマブルーク・ラシュディ自身、郊外にいまも住み続けているという点が大きいのではないか。郊外を外から眺め、学問の対象として把握しようとする視線とはまったく違う。郊外の内側にいて、マリクの成長を書きとどめようとする筆致は、どこまでも優しい。とれたてのフランス文学。中島さおり訳。
【初出メディア】
日本経済新聞 2012年10月31日

http://www.nikkei.com/
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