45歳でFIRE、年間配当582万円、資産2.8億円超。
個人投資家の「長期株式投資」さんがそこに至るまで貫いてきたのは、派手さとは無縁の投資法だ。日本株を中心とした長期・高配当投資を続け、暴落局面でも淡々と買い続けながら資産を積み上げてきた。
近著『マンガでわかる! 超はじめての株式投資』(永岡書店)は11万部超のベストセラー。兼業投資家でも実践しやすい投資法として支持を集める長期株式投資さんに、日経平均が史上最高値圏にある今の相場観や、上昇相場で陥りやすい心理、暴落との向き合い方、初心者が最初に身につけるべき投資の考え方を聞いた。
数百円だった配当金は、20年で582万円になった
―投資を始めて20年余り、年間配当金は数百円から582万円まで増えています。この増加を支えた一番の要因は何でしょうか。

ハフポスト
最大の要因は、ここ2〜3年の企業による積極的な増配です。配当金の再投資も効いていましたが、それはサラリーマン時代まで。FIREしてからは生活費に充てています。
ただ、この増配がいつまでも続くとは考えていません。企業が配当に回せる原資には限りがあり、配当性向(株主への利益還元比率)の引き上げも限界に近づいてきているように感じています。今後は、企業の利益水準そのものが伸びていかなければ、これまでのペースで増配を続けるのは難しいでしょう。
日経平均は最高値圏。でも、割安な銘柄に投資しやすい環境
―日経平均は史上最高値圏ですが、「今さら買うのは割高では」と不安に感じる人も少なくありません。現在の相場をどう見ていますか。
今上がっているのは、AIや半導体関連の銘柄です。投資家が「AI関連」と認識している銘柄に資金が集まっているのだと思います。
具体的には、キオクシアホールディングスが代表的ですし、イビデンや太陽誘電はPER(株価収益率)が100倍を超えています。村田製作所も60〜70倍台で推移しています。これらは歴史的なPERの推移から見ても、異常なほど高い水準です。こうした銘柄が日経平均を押し上げているんです。
半導体関連も利益は伸びると思いますが、どこまで伸びるのか、2〜3年後もその利益を維持できるのかはわかりません。多くの投資家が「今後も大丈夫」と考えているからこそ、高いPERが許容されていて、資金も集中しているのだと思います。
一方で、メガバンクは政策金利が上がれば利益水準も上がりますので、年初来高値を更新していることには納得感があります。PERも10倍台ですから、利益が伸びればPERは低下していきます。現在の株価だけを見ると高く感じても、利益の成長が伴えば割高感は薄れていくと考えています。
逆に、トヨタ自動車やNTTのような、日本を代表する企業の株価は低迷しています。AI、半導体、銀行以外の、いわゆるディフェンシブ銘柄には割安なものも多いので、それらには投資しやすい環境だと思っています。
バフェットの教えが、含み損の時代を支えた
―現在のスタイルに至るまでには、紆余曲折があったと聞いています。投資を始めたきっかけと、その後の変遷を教えてください。
会社勤めを続けて貯金もできてきた27歳の頃、銀行に預けているだけではなく、何かしら運用できないかと考えたのがきっかけです。当時は銀行預金の金利も低かったので、新興株で短期的なキャピタルゲインが得られたらいいなという気持ちで投資を始めました。
最初の2年間は成績としてはトントンぐらい。当時は新興株をメインに取引していたのですが、2006年1月にライブドアショックで新興市場が崩壊し、保有銘柄も急激に下落したんです。
その後、投資先を大型優良株にシフトしました。しかし、2007年9月頃からは大型株も下がり始め、リーマンショックの影響もあって、日本の株式市場はアベノミクスが始まるまでずっと低迷していました。
2006年に含み損を抱え始めて、それが解消されたのは2013年頃。7年間は含み損を抱えていたことになります。良い方向に向かい始めたのは、投資を始めてから9年後のことです。
―7年間も含み損を抱えながら、それでも投資をやめようと思わなかったのはなぜですか。
当時は金利が低かったので、銀行預金に預けていてもお金が増えないという現実がありました。それに、私が学生時代から経済紙などで国債の発行残高を懸念する記事が広く書かれていて、「いずれはインフレが起こる。しかも、それはハイパーインフレになるだろう」という論調がずっと続いていたんです。そういう記事を読んでいたので、円の価値が毀損していくことへの危機感を持っていました。
価値が毀損するかもしれない通貨に全振りして預けておくのはまずいのではないかと。ですから、株式投資をやめるという選択肢はなかったですね。
著名投資家のウォーレン・バフェット氏の考え方をまとめた書籍を何冊も読んで、「株価が下がって、みんなが買いたがらない時に買わなければいけない」という発想にも影響を受けていました。そうした考え方があったので、やめるという発想にならなかったのだと思います。
暴落でも買える人は、「習慣」で動いている
―「暴落こそ買い場」とよく言われますが、実際に行動するのは難しいようにも感じます。本当にできるものなのでしょうか。
できるかどうかは、相場にどの程度慣れているかによると思います。私は、暴落時もできるだけいつも通りを心掛けつつ、いつもより少し多めに投資していました。特にリーマンショックの時には、就職以来ずっと積み立てていた財形貯蓄を全額解約し、株式の購入に充てました。
ただ、本来であれば、自分が投資できる金額を決め、その中で株式と現金、あるいは個人向け国債などに資産を配分して、その比率を調整していくのが一番よいと思います。これはアセットアロケーション(資産配分)という考え方です。
例えば、株式70%、現金30%という配分で投資していたとします。暴落が起きると株式の比率が下がり、相対的に現金の比率が上がりますよね。その上がった分だけ現金を株式に回して、株式70%、現金30%という元の比率に戻す。そういう運用が、本当は一番よいと思います。
―暴落時でも「いつも通り」に投資を続けるために、どんな工夫をしていますか。
ニュースは、自分が見ようと思わなくても勝手に入ってきますから、完全に遮断するのは難しいと思います。ですから、習慣化するのがよいのではないでしょうか。
今は手数料無料で1株ずつ(単元未満株)投資できるサービスもありますので、少しずつ積み立てていくとよいと思います。例えば、週に1回だけ買うと決めて習慣化してしまう。買うことを生活の一部として習慣化すると、感情に左右される部分が相対的に小さくなっていきます。
短期的には「〇〇ショック」と呼ばれるような暴落が起きるでしょうし、その後、数年かけて株価が下がり続けることもあります。そういう局面でも習慣的に買い続けていると、将来のリターンは逆に高くなります。
安く買えた分だけ、将来のリターンも高くなるわけです。株価が一本調子で上がるよりも、一度下がってその間も買い続けられたほうが、長期的には有利です。そういう仕組みを理解して投資ができれば、メンタルの負担も小さくできるのではないかと思います。
10年、15年先の老後資金のために投資をしているのであれば、暴落時は安く買える期間でもあるので、理屈としてはそこまで怖がる必要はないと思います。人間は株価が下がると心理的な負担を感じるものです。その特性を理解したうえで運用すると、長く続けやすくなると思います。
「勝つ」より「負けない」。長く続けるための投資哲学
―現在の長期・配当重視の投資スタイルは、どのように確立していったのですか。
リーマンショックの後、投資に関する本を片っ端から読んでいたんです。その中でたまたま手に取ったのが、ジェレミー・シーゲル教授の『株式投資の未来』(日経BP)でした。それを読んで、今の運用方針がほぼ固まりました。
この本では、高配当で、歴史的なリターンが高いセクターであるヘルスケアやトイレタリー(生活必需品・日用品)、エネルギーなどの株に投資し、配当を再投資していくという考え方が紹介されています。
そこで、この本で書かれている米国株のセクター論を、日本株に置き換えたらどうなるかを自分なりに考えました。例えば、医薬品であれば武田薬品工業やアステラス製薬、第一三共。トイレタリーであれば花王。エネルギーであれば、米国でいうエクソンモービルのような会社をイメージしますが、日本ではINPEXが有名です。
さらにエネルギー関連について、資源権益を多く持っている三菱商事や三井物産が当てはまるのではないかと考えました。そうやって日本株に当てはめながら、現在の運用を始めました。
―投資では「勝つこと」よりも「負けないこと」が大切だとおっしゃっています。その考え方はどこから生まれたのでしょうか。
負けを小さくすることが、長く投資を続けるうえで重要だと考えているからです。
行動経済学の世界的ベストセラー、ダニエル・カーネマン著『ファスト&スロー あなたの意思はどのように決まるか?』(早川書房)にも書かれていますが、人は利益を得た時よりも、損失を被った時のほうが、心理的な振れ幅が約2倍大きいと言われています。1万円儲けた時よりも、1万円損した時のほうが、感情は大きく揺さぶられるのです。
こうした理論と私自身の経験則の両方から考えても、損失を小さくする運用を心掛けたほうが心理的な負担も軽減できます。その結果として、投資を長く続けやすくなるので、「勝つこと」よりも「負けないこと」を重視しています。
「人気株ほど避けるべき」と考える理由
―最近は話題株やテーマ株への関心が高まっています。こうした銘柄への投資はどのように考えていますか。
話題になって人気がある銘柄は、PERが高くなりがちです。PERは、企業の利益に対して株価が何倍まで買われているかを示す指標で、投資家の将来への期待が高いほどPERも高くなる傾向があります。利益水準に対して、「何倍までならその株価を受け入れて買うか」という期待値を表しているんですね。
人気がある銘柄ほど、「多少高くても買いたい」という人が増えるので、PERは高くなります。その分、期待が外れた時の反動も大きくなりやすい。もちろん、利益がものすごい勢いで成長し続ければ、高いPERも許容されることはあります。ただ、それを事前に予測するのは難しい。私は難しいことはなるべくしないほうが、結果として損失を避けられると考えていますので、高PER銘柄は原則として避けるようにしています。
相場が盛り上がるほど、冷静さが必要
―日経平均株価の上昇で“いつの間にか富裕層”といったニュースも目立つようになっています。そうした話題を見て焦ったり、「自分だけ乗り遅れた」と感じたりする人も少なくありません。こうした風潮をどのようにご覧になっていますか。
歴史を振り返ると、今の状況はライブドアショック前とそれほど変わらないように感じています。一部の人が特定の銘柄で短期間に大きな利益を上げ、それを公開することで、「自分にもできるんじゃないか」と周りの人が煽られていく。
当時も、個人投資家が話題株でデイトレードをして大きく稼ぐ様子がメディアで取り上げられていました。でも、その後に相場が崩れて流れは一変しました。
かつて話題になった銘柄が、その後どのような株価の推移をたどったのかは、少し調べればわかります。多くは急騰後、富士山のような形を描いて下落しています。PERが100倍を超えるような水準は、やはり異常値です。そういう銘柄を買って、天井付近でうまく売り抜けるというのは、実際にはかなり難しいことです。
ただ、もっと難しいのは、人は経験しないと学べないということです。結局、失敗を経験するしかない面もあります。だからこそ、失敗したとしても投資をやめずに続けることが大切です。続けてきた人は、次に同じような局面が訪れた時、少し俯瞰して相場を見られるようになります。
「短期で大きく儲けたい」と考えている方に、警鐘を鳴らすことの難しさも感じています。もし思うような結果にならなかったとしても、長く続けるという投資方法もあることを頭の片隅に置きながら運用していただけたらいいですね。
―これから投資を始める初心者に、「最初にやっておいたほうがいい」と思うことはありますか。
投資関連の書籍を数十冊程度読むことをおすすめします。私の場合は、『オニールの成長株発掘法』(パンローリング)や、『資産を作るための株式投資 資産を遺すための株式投資』(パンローリング)などが勉強になりました。
読むのに時間はかかるかもしれませんが、長い目で見れば、なるべく早い段階で知識を身につけておいたほうがいいと考えています。本を読むだけでなく、少額から実際に投資をしてみることも大切です。理論と実践の両輪で、投資を続けていくのがよいと思います。
※本記事は、事例として取り上げた金融商品の売買を勧めるものではありません。本記事に記載した情報によって読者に発生した損害や損失に関しては、発行媒体は一切責任を負いません。投資における最終決定はご自身の判断で行ってください。
※本インタビューは2026年6月24日に実施しました。株価データはインタビュー時点のものです。

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