(CNN) 約7万5000年前に木製の槍(やり)で胸を刺され、命を落としたとみられるネアンデルタール人の遺骨が発掘された。殺人とみられる事例としては、最古級のものの一つとなる可能性がある。
このネアンデルタール人の肩甲骨には、くっきりとした円形の穴が開いていた。このことから、武器が胸を貫き、肺や太い動脈を通過した後、骨に穴を開けたと考えられる。15日に学術誌「サイエンティフィック・リポーツ」に掲載された研究によると、即死したか、間もなく死亡した可能性が高い。
イラクのクルディスタン地域にあるシャニダール洞窟で、このネアンデルタール人の遺骨を発掘した考古学者らは、これらの化石から、意図的な暴力行為とみられる出来事だけでなく、ネアンデルタール人の生と死を巡る複雑な物語が浮かび上がるという。
研究チームは、この洞窟で2019年と22年に行った発掘調査で、厚さ約7.5メートルの岩石や土砂の中から、肩甲骨のほか、ほぼ完全な右手の骨、肋骨(ろっこつ)、歯などを発見した。「シャニダールA」と呼ばれるこのネアンデルタール人は、死亡時に45歳前後だったと考えられるが、性別は特定できなかった。

肩甲骨の前面(左)は肋骨、背面(右)は背中に面していたと考えられる/Dr Emma Pomeroy
この個体が負った傷は、致命傷となった胸部の傷だけではなかった。
現場で発見された歯の1本には亀裂が入っており、顔面に鈍い衝撃を受けたことが示唆された。しかし、歯の根管部分を覆うように歯石が蓄積していたことから、この負傷は生涯のもっと早い時期に起きたとみられる。また、この個体は集団のほかの仲間から、食べやすいように柔らかくすりつぶした食事を用意してもらうなどの介護を受けていた可能性がある。同じ遺跡を対象とした過去の研究では、ネアンデルタール人が植物や豆類を水に浸し、一緒に調理していた可能性も示されている。
研究の筆頭著者で、英ケンブリッジ大学のエマ・ポメロイ准教授は、報道発表で「このように歯が割れるほどの打撃を受けながら生き延び、その後も少なくとも1年間、場合によってはそれ以上にわたって生き続けた。その間、食事を取るには、ほかのネアンデルタール人による介護や支援が必要だったはずだ」と述べた。
「シャニダールAの遺骨は、私たちが人間らしさとして認識しているものの二面性を映し出している。一方では、極めて暴力的な最期を迎えた証拠がある。他方で、この個体は生前、明らかに周囲から世話を受けていた」(ポメロイ准教授)
今回の発見は、ネアンデルタール人の間に社会的な支援や介護が存在したことを示す、新たな証拠となった。例えば、同じ洞窟で見つかった化石を調べた17年の研究では、聴覚を失い、片腕がまひし、頭部の外傷によって視力も一部失っていたとみられる男性のネアンデルタール人が、約50~60歳まで生きていたことが明らかになった。これは、ほかの仲間が男性の世話をしていた可能性を示している。
また、24年にはスペインの遺跡で見つかった耳の骨の化石から、ネアンデルタール人がダウン症の子どもを世話していた可能性を示す証拠が得られた。さらに、今年5月に発表されたシベリアでの発見では、絶滅したこの人類が互いに原始的な歯科治療を施していた可能性が示された。
木製の武器
ポメロイ氏らは、肩甲骨に開いた直径15ミリの円形の穴は、突き刺すための武器か、先端を鋭く削った木製の投射物によって生じた可能性が高いと判断した。研究チームは論文で、石の穂先を付けた槍であれば、角張った穴やひし形の穴が残るはずだと説明している。
狩猟中の事故だった可能性もある。しかしポメロイ氏は、傷の位置や、武器を体の奥まで貫通させるのに必要な力は、「心臓を狙った、殺害を意図する一撃の特徴が見て取れる」という。

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