葬儀のDX化などに取り組む企業が5月から、葬儀会場で香典をキャッシュレス決済で支払えるサービスの提供を開始した。
参列者にとっては香典袋や現金の準備などが不要になり、葬儀社側としても現金管理業務の削減など、メリットが多い新しい取り組みに注目が集まっている。
冠婚葬祭でのキャッシュレス決済、少しずつ広がる
冠婚葬祭をめぐっては近年、結婚式のお祝儀などでオンライン決済が少しずつ広がるなど、キャッシュレスを取り入れる人たちも出てきている。
葬儀においての香典のキャッシュレス決済はまだ業界としても新しく、サービスの提供を開始したアスカネット(広島県広島市)の調べによると、日本国内では初の事例という。
このサービスでは、葬儀会場の受付に端末を設置し、参列者がキャッシュレス決済で弔意を示すことができる。

アスカネット
利用者・葬儀社・喪家それぞれのメリット
アスカネットは、新サービスは「従来の慣習を尊重しながらも、関係各所のルールに配慮した形で設計」しており、参列者・葬儀社・喪家それぞれにメリットがあるとする。
まず、参列者としては急な葬儀参列でも、香典袋の準備や記入、現金の準備などをしなくて済み、受付端末で決済ができる。
葬儀社としても、現金管理業務や未回収リスクの削減、喪家も受付対応の負担削減、葬儀費用との調整が可能になるなど、それぞれに便利な取り組みとなっている。

アスカネット
アスカネットが3月に実施したオンライン調査によると、日常生活では84%がキャッシュレス決済を利用している一方で、葬儀での香典は89%が現金で支払っていることがわかった。(調査期間:2026年3月31日、有効回答数:300人)
キャッシュレスでの弔意表現については、約半数が「選択肢としてあってもよい」「条件によっては受け入れられる」と回答。
「遺族の意向が明示されていること」や「葬儀社からの正式な案内があること」などの条件が整えば、利用を検討したいという意向を示していた。
喪主・遺族の立場においても約7割が導入に対して一定の許容姿勢を示している。一方で、葬儀という場でキャッシュレス決済を利用することに抵抗感を持つ層もいるため、「現金と併用できる形での導入が鍵となる」としている。
SNSでは香典のキャッシュレス決済に対し、「便利でいい」「大賛成」という声が多く上がっているが、決済をした際の音が気になるという意見や、失礼に当たらないか心配する声も見受けられた。
「気持ちを伝える手段や受付方法は、時代とともに多様化」
アスカネットのフューネラル事業部企画開発室課長・青砥剛さんはサービスについて、以下のようにコメントしている。
「故人への弔意の気持ちは、いつの時代も変わることのない大切なものです。一方で、その気持ちを伝える手段や受付方法は、時代とともに多様化していくべきだと考えています。
手続きがより簡便になることで、ご遺族の負担が軽減され、大切な方を偲ぶ時間をより多く確保できるようになります。また、葬儀社の業務負担を軽減することで、ご遺族へのサポートにより多くの時間を充てることが可能となります」
サービスは、静岡県伊豆市の「葬儀・家族葬のミックホールみずぐち」で導入されており、「大きな反響」があるという。
「ミックホールみずぐち」の専務取締役・岩田さんは「相互の理解と情報共有は必要不可欠」とし、こう語っている。
「宗教的な観点からも、各寺院様との情報共有を積極的に行っています。宗教者様に対しても、現代的な供養や想いの伝え方として、現金ではなくクレジットカードなどのキャッシュレス決済といった形で、スマートフォン一つで手軽にご対応いただけることをご説明しています」
実際に導入されている現場では、現金の香典とキャッシュレス決済の送付の選択肢が生まれ、それぞれに合った方を選べるようになっている。

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