『祝福』(河出書房新社) - 著者: 長嶋 有 - 陣野 俊史による書評

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祝福
『祝福』(河出書房新社)著者:長嶋 有

選び抜いた「いいそうなこと」

帯の惹句(じゃっく)がいい。「女ごころを書いたら、女子以上 男(ダメ)を書いたら、日本一!」

長嶋有ほど登場人物の心理の機微に敏感な作家はいない。登場人物のいいそうなことを書く。

ここで注意したいのは「いいそうなこと」である。小学生・男子・10歳であろうと、会社員・女性・35歳であろうと、その人がいいそうなことや考えていそうなことを正確に再現してみせる。言ったことや考えていることではない。その人物が言う可能性の高い言葉を選ぶ、そのチョイスのセンスが抜群だ。

10の短篇を収める。表題作。すべての人物たちはアルファベットで示される。友人の結婚式に行く。SやQや後輩のBと再会する。「新郎バンド」でベースを演奏する。帰宅後、恋人のLに「食事はどうだったか」と訊(き)かれ、ミシュランひとつ星のレストランだったのに「ほとんど食べなかった」と答える……。

エピソードがキレのある会話に挟まれて、次々と湧いてくる。畳み込むような文体で読ませる。

10の諸篇は語り手が男5人に女5人。どちらの性別が語り手でもじつに自然に小説は進む。このあたり、長嶋の真骨頂だろう。
【初出メディア】
日本経済新聞 2011年1月12日

http://www.nikkei.com/
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