深海に眠る燃える石
深海に眠る燃える石 / Credit:ROV Jason/Woods Hole Oceanographic Instituteキャンプで焚き火のまわりを石で囲むのは、石が燃えないからです。
ところが鉱山の世界では、硫黄を含む鉱石が自然に発火する事故が古くから記録されてきました。
金属と硫黄が結びついた鉱物──金属硫化物は、条件がそろうと自分で熱を出し、火を噴くことがあるのです。
同じ鉱物が、いま深海で注目を集めています。
海底の熱水噴出口からは、地中で熱せられ、金属を溶かし込んだ水が噴き出しています。
その水が冷たい海水と出会うと、溶けていた金属は硫黄と結びついて沈みます。
それが長い年月をかけて積み上がり、海底に小山や煙突のような塊を作ったものが、海底の鉱床(海底塊状硫化物鉱床)です。
銅、亜鉛、鉛、金、銀を含むこの鉱床は、陸の鉱山で何十年も掘られてきた鉱石と、もとは同じものです。
陸の鉱床も、大昔の海の底で同じようにできたものが、のちに陸地になったものだからです。
だからこそ、まだ海の底に残っているほうの鉱床にも、手を伸ばそうという動きが始まっています。
深海の資源を管理する国際機関である国際海底機構(ISA)は、大西洋とインド洋の海嶺で探査契約を結んでいます。
パプアニューギニアの海域では、採掘免許も出されました。
海底の鉱床にある金属硫化物が熱を出す仕組みは、使い捨てカイロによく似ています。
カイロは、袋から出して空気に触れさせるだけで温かくなります。
中身は鉄の粉で、鉄が空気中の酸素と結びついて錆びるときに熱が出るからです。
錆びること自体は、放置した釘でもフライパンでも起きています。
ただそちらは何年もかけてじわじわ進むので、熱が出ていることに気づきません。
カイロが熱くなるのは、鉄を細かい粉にして、空気に触れる面を極端に増やしてあるからです。
塊のままならゆっくりとしか進まない反応が、粉にすれば半日から一日ほどで走りきります。
金属硫化物も、酸素と出会えば熱を出します。
出た熱がそのつど周りへ逃げていくうちは、何も起きません。
しかし熱が逃げ場を失って内側にたまると、石の温度が上がります。
温度が上がれば、反応は速くなり、さらに多くの熱を生みます。
いったんこの回転が始まると、止まる理由はどこにもありません。
行き着く先が、発火です。
ただしこの回転は、海の底ではまず始まりません。
今回の岩石が採られたエスカナバ・トラフは、北カリフォルニア沖の深海にあります。
周囲の海水はおよそ2℃と冷たく、溶けている酸素も、世界じゅうの熱水噴出域のなかでいちばん乏しい部類でした。
冷たくて酸素が乏しければ、酸化はゆっくりとしか進みません。
わずかに出た熱も、周りの海水が運び去ってしまいます。
海底の石は、カイロが袋に入ったまま置かれているようなものでした。
では、袋から出された石は、どれもいずれ熱を持つのでしょうか。







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