昆虫なのに「自分で熱を作って」マイナス6度の雪原で生きるハエがいると判明

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体液の中に「不凍液」を持っている【1つ目の防御策】

スノーフライは寒さに強く南極などの極寒の地でも生息できるスノーフライは寒さに強く南極などの極寒の地でも生息できる / Credit: Capek et al., Current Biology (2026) / CC BY 4.0

ひとつ目の武器は、体の中に内蔵された不凍液です。

寒い地方で車に乗る人ならご存じのように、冬のエンジン冷却水には不凍液を混ぜます。 水がそのまま凍ればエンジンが割れて壊れてしまうからです。

スノーフライは、それとそっくりなことを自分の体の中でやっていました。

彼らのゲノムを解読したチームは、体液の中に「不凍タンパク質」と呼ばれる特殊なタンパク質を作る遺伝子を発見しました。

このタンパク質の役目は、氷の粒にぺたりと貼りついて、氷が大きく育つのをブロックすることです。

ここで大切なのは、生き物が凍えて死ぬ本当の原因は「冷たさ」そのものではないということです。

本当の原因は、細胞の中で氷の結晶が育ち、その尖った刃先が細胞の膜をザクザクと切り裂いてしまうことにあります。

不凍タンパク質は、その針が伸びないように一本ずつ押さえつける、細胞の用心棒のような存在なのです。

面白いことに、このタンパク質は南極の魚が持っているものとよく似た構造をしていることが知られています。

魚と虫というまったく別々に進化してきた生き物が、同じ「凍結を防ぐ」という難問に対して、そっくりな答えにたどり着いているわけです。

研究チームはこの仕組みが本物かどうかを確かめるため、スノーフライの不凍タンパク質の遺伝子を普通のショウジョウバエの幼虫に組み込む実験を行いました。

結果、本来なら凍結で死んでしまうはずの条件でも、改造されたショウジョウバエの幼虫はしぶとく生き残ったのです。

遺伝子一つを持ち込むだけで、寒さに弱い虫が寒さに強くなる──それは、この不凍タンパク質が単なる飾りではなく、本当に命を守る実力を持っている証拠でした。

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