日経平均株価は2026年に入って年初来で3割超上昇してきたが、8月18日には中東情勢の緊迫化や長期金利の上昇を背景に一時1700円超下落するなど、値動きの荒い展開が続いている。こうした相場変動のニュースを見て、新NISAで積み立てている資産が気になった人もいるだろう。
「新NISAは非課税でお得」と言われがちだが、「つみたて投資枠」と「成長投資枠」の仕組みを熟知している人は少ない。この2つの組み合わせ方次第で、非課税の恩恵をどこまで受けられるかが変わってくる。
判断の分かれ目となるのが「月々の投資額が10万円以内かどうか」だ。まず制度の基本を押さえたうえで、この数字を紐解いていく。
生涯の非課税保有限度額は1800万円
NISA(少額投資非課税制度)は、株式や投資信託の売却益・配当・分配金にかかる約20%の税金が非課税になる制度で、2024年1月から現行の新NISAに変わった。
新NISAでは、つみたて投資枠(年間120万円)と成長投資枠(年間240万円)を併用でき、合計で年間360万円まで非課税投資が可能になったほか、非課税で保有できる期間も無期限化された。
さらに生涯の非課税保有限度額として1800万円が新設されたが、このうち成長投資枠として使えるのは最大1200万円までだ。つみたて投資枠だけなら1800万円を使い切れるが、成長投資枠だけでは1200万円が上限となり、残り600万円は使い切れない。1800万円をフルで使用するには、つみたて投資枠との併用が必要となる。
月10万円以内の人は「つみたて」優先
毎月の投資額が10万円以内なら、つみたて投資枠(年間120万円)だけで上限内に収まるため、成長投資枠を使う必要はない。
その理由は、つみたて投資枠の対象商品にある。つみたて投資枠で買える投資信託・ETFは、信託期間20年以上、販売手数料ゼロ、信託報酬の低水準、頻繁な分配を行わないことなど、金融庁が定めた基準をクリアしたものに限られている。国内には約6000本の投資信託があるとされるが、この基準をクリアしているのは4〜5%程度にすぎないという調査もある。
一方、成長投資枠は、整理・監理銘柄や信託期間20年未満の商品など一部が除外されるが、つみたて投資枠のような厳格な基準はなく、個別株や幅広い投資信託が対象が対象になる。
基準による選別がない分、コストの高い商品や値動きの大きい商品も含まれる。月10万円以内で収まる人であれば、無理に成長投資枠へ範囲を広げなくても、低コストな「つみたて」商品だけで完結する。
月10万円を超える人は、「同じ商品を成長枠でも積立」が基本
毎月の投資額が10万円を超える人は、つみたて投資枠を上限まで使ったうえで、超過分を成長投資枠に振り分けることができる。例えば月15万円なら「つみたて10万円+成長5万円」、月30万円なら「つみたて10万円+成長20万円」といった具合だ。
この場合、成長投資枠だからといって個別株を選ぶ必要はなく、つみたて投資枠と同じ投資信託を成長投資枠でも積立設定すればよいと複数の金融機関が勧めている。まずはつみたて投資枠から使い始め、必要に応じて成長投資枠を積み増すのがスタンダードとされている。
成長投資枠でも「毎月分配型」は買えない
成長投資枠は自由度が高いとされるが、「毎月分配型」の投資信託は、成長投資枠であっても対象外とされている。金融庁がつみたてNISA導入時にまとめた資料では、毎月分配金を受け取る仕組みそのものが「長期の運用には向かない」との考え方が示されている。
分配金として利益を都度払い出してしまうと、その分は運用に回らず複利効果が働きにくくなるためだ。新NISAでも同様の考え方が引き継がれ、つみたて投資枠だけでなく、より自由度の高いはずの成長投資枠からも毎月分配型は除外されている。
なお、分配金は必ずしも運用益から出ているとは限らず、預けた元本を取り崩して支払われているケースもある。この場合、額面上は受け取っていても実質的には資産が目減りしているだけ、という状態になり得る。
まとまった資金を一括で投じたい人は、成長投資枠を活用
退職金や相続などでまとまった資金があり、一括で非課税枠に投じたいという人には、成長投資枠が向いている。つみたて投資枠は積立専用で一括購入ができないのに対し、成長投資枠は年240万円まで一括での購入が可能だからだ。
ただし、非課税枠を急いで埋めようと年始に一気に投じると、直後に相場が下がったとき慌てて売ってしまい、損をしやすい。生活防衛資金を確保し、時期を分けて投資するのも一つの手だ。
50代・60代は「非課税配当」を年金の補完に使う手も
資産形成の終盤にあたる50代・60代では、判断軸がやや変わる。資産を増やす段階から、生活費として取り崩す段階が近づくためだ。この世代では、成長投資枠で高配当株や高配当ETFを保有し、非課税で受け取る配当金を年金に上乗せするキャッシュフローとして活用する手法も選択肢になる。
通常、株式の配当金には約20%の税金がかかるが、成長投資枠内で受け取る配当は非課税になる。例えば60代のうちに高配当株や高配当ETFに投資し、70代で資産500万円・配当利回り4%になっていれば、年間20万円の配当が非課税で受け取れる計算だ。ただし高配当株は投資信託に比べて値動きが大きくなりやすく、リスクが高まる点には注意が必要だ。
年代・資金別で自分に最適な使い分けを
判断基準は2つだ。もうひとつは、金融庁の基準をクリアした商品しか買えないつみたて投資枠と、つみたて枠より厳格な基準がない商品性の違いだ。
月10万円以内なら「つみたて優先」、超えるなら「同じ商品を成長枠でも積立」、まとまった資金がある人や50代以降は「成長枠を目的に応じて活用」といった具合に、自分に合ったケースで枠を使い分けたい。
※本記事は、事例として取り上げた金融商品の売買を勧めるものではありません。本記事に記載した情報によって読者に発生した損害や損失に関しては、発行媒体は一切責任を負いません。投資における最終決定はご自身の判断で行ってください。

2 ヶ月前
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