
日本の小泉進次郎防衛大臣が、2026年5月31日(日)、シンガポールで開催されたアジアの年次防衛・安全保障フォーラム「シャングリラ対話」で演説を行った。(AP通信/アハマド・イブラヒム撮影)
By Andrew Salmon – The Washington Times – Tuesday, July 21, 2026
【ソウル】小泉進次郎防衛相は、日本の防衛における核兵器の役割について国民が率直に議論すべきだと呼び掛けた。数年前まで平和主義志向の強かった日本では考えられなかった発言だ。
小泉氏は、高市早苗首相率いる保守色の強い内閣の有力閣僚の一人として、中国の軍事的強硬姿勢や米国の信頼性への懸念が高まる中、インド太平洋地域で防衛協力の拡大を進めている。
小泉氏は週末のインターネット番組で、「日本にとっては議論するのが難しい課題だが、触れざるを得ない一つは核だ」と述べた。
中国は21日、小泉氏の「核論議」の提起を批判した。一方、その週末には中国海軍艦艇が日本の200カイリ排他的経済水域(EEZ)内で射撃訓練を実施した。
しかし、こうした動きが日本の進路を変える可能性は低いとみられる。
第2次世界大戦後、日本は長年にわたり防衛問題について積極的な議論や行動を避けてきた。だが、2014~15年の憲法解釈変更以降は、防衛力の強化を進め、護衛艦で運用可能な戦闘機F35やトマホーク巡航ミサイルの導入など、反撃能力を拡充してきた。
さらに現在は、従来の同盟国である米国以外にも、防衛や防衛産業での協力関係を広げている。
■有力政治家が問題提起
核兵器に関する発言で小泉氏は、フランスとフィンランドを例に挙げた。フランスは核戦力の拡充・分散配備を進め、北大西洋条約機構(NATO)加盟国に抑止力を提供しているほか、フィンランドは先月、自国内への核兵器配備禁止を撤廃し、防衛目的で同盟国の核兵器受け入れを可能にしたと説明した。
核保有国である中国は21日、小泉氏の発言に強く反発した。
中国外務省報道官は「日本側が核問題で誤った判断に固執し、非核三原則の見直しや同盟国の核兵器配備を推し進めれば、平和への約束に反し、日本国民の意思にも背くことになり、最終的には大きな代償を払うことになる」と警告した。
日本の非核三原則は、「作らず、持たず、持ち込ませず」を柱としている。
45歳の小泉氏は、2001~06年に首相を務めた小泉純一郎氏(84)の長男。日本政界では若手に属し、端正な容姿と流暢な英語でも知られる有力政治家だ。将来の首相候補と目される一方、日本の保守派の一部とは異なり、国粋主義者とはみられていない。
明治学院大のポール・ミッドフォード教授(政治科学)は「彼はかなり穏健な人物であり、それだけにこの問題について発言しやすいのだろう」と語る。
また、小泉氏の若さも影響している可能性がある。第2次大戦の惨禍を知らない若い世代は、祖父母世代ほど平和主義的ではない。
ミッドフォード氏は「20年前なら政治家や防衛相がこのような発言をすれば許容されなかっただろう」と話した。
高市政権で核問題を取り上げたのは小泉氏が初めてではない。昨年12月には、防衛分野の専門家が「日本は核兵器を保有すべきだ」と主張し、大きく報じられた。
日本は世界で唯一、核兵器による攻撃を受けた国であり、核問題は極めて敏感なテーマだ。
1945年8月、広島と長崎に原子爆弾が投下された。米軍は、これによって日本本土に侵攻することなく早期に戦争を終わらせたかったとされている。
日本国内では小泉氏の問題提起を慎重に支持する声が広がっている。
大阪大学大学院国際公共政策研究科の佐藤治子特任教授は「核へのタブー意識が強過ぎて、米国の核戦略についてさえ真剣な議論がなされてこなかった。それが問題だ」と指摘する。
政府顧問も務める日本人研究者は匿名で、「日本は長年、核アレルギーを抱えてきたが、小泉氏は新しい世代の考え方を体現している。彼は核武装そのものを求めているわけではない」と語った。
この研究者と佐藤氏はいずれも、今後の議論は日本独自の核保有ではなく、米国の核兵器を日本に持ち込ませるかどうかが中心になるとの見方を示した。
日本政府は今年中に国家安全保障戦略など安全保障関連3文書を改定するとみられている。ただ、それは高市首相が憲法9条改正に直ちに着手することを意味するわけではない。
ミッドフォード氏は「高市首相は3月にワシントンを訪れ、歴代首相と同様に、日本が米国の戦争に巻き込まれることを防ぐため憲法9条を活用した。イランとの戦争を念頭に置いた対応だった。9条は対米関係を管理する上で有用な条文だ」と述べた。
■厳しさ増す安全保障環境
中国の地域的な覇権志向、ロシアによるウクライナ侵攻、北朝鮮の核戦力によって、日本を取り巻く安全保障環境は一段と厳しさを増している。
日本の防衛は、米国との同盟と「核の傘」を基盤としている。
トランプ政権は同盟国に対し、防衛費の増額と安全保障上の役割拡大を求めてきた。一方で、トランプ大統領の予測困難な言動によって、一部の同盟国は米国の信頼性に不安を抱いている。
こうした懸念はNATOで特に強く、日本の隣国、韓国でも、独自の核抑止力保有を支持する世論が多数を占めている。
日本政府は慎重な姿勢を崩していないが、同盟国である米国以外との防衛協力を着実に拡大している。
■米国以外との協力を拡大
小泉氏は今週、英ロンドンで開かれる次期戦闘機の共同開発計画「グローバル戦闘航空プログラム(GCAP)」の閣僚級会合に出席している。
GCAPは2022年に始まった日英伊3カ国による第6世代ステルス戦闘機の共同開発計画で、日本にとって過去最大規模の国際防衛共同事業だ。最近では好材料が相次いでいる。
英国の資金拠出に不透明感があったものの、英政府は6月下旬、今後4年間で約110億ドルを拠出すると表明し、イタリアと日本を安心させた。
ロンドン駐在の防衛駐在官3人に触れ、小泉氏はX(旧ツイッター)に「3人とも元気そうで安心した。GCAPも含めて」と投稿した。
21日にはロンドン近郊で開かれたファンボロー国際航空ショーで、カナダがGCAPにオブザーバー参加することが正式に発表された。英国防省は声明で、「カナダは意思決定には加わらないが、特別な情報へのアクセス権を得るほか、将来的な正式参加や貢献に向けた協議への道を開く」と説明した。
日本メディアは、GCAPについて「米国との同盟の枠組み外で先端技術を獲得する機会」と位置付けている。
ミッドフォード氏は「米国が技術移転に消極的なのは周知の事実であり、不思議ではない」と述べる一方、「計画の行方には疑問もある。GCAPに米国の持つ重要技術は盛り込まれず、中途半端で終わるのではないかという見方もある」と指摘した。
それでも、その価値は産業面だけにとどまらない。
同氏は「米国以外のパートナーと協力する新たな枠組みができた。180度の転換ではないが、選択肢は広がっている」と評価した。
地域協力も進展している。
日本は4月、2014年から段階的に進めてきた殺傷能力を持つ兵器の輸出規制緩和を完了し、豪州へのステルス・フリゲート艦11隻の輸出を発表した。
また、小泉氏が7月13日に東京でベトナム国防相と会談した後、両国は揚陸艇の共同開発に向けた協議を開始した。
さらに、日本は退役する護衛艦3~6隻をフィリピンへ供与する計画も進めている。
日本、フィリピン、ベトナムには共通の安全保障上の利害がある。
ベトナムとフィリピンは、南シナ海で中国海軍や海警局、さらには政府の統制下にある武装漁船団と対峙している。
ベトナムは1988年に中国と海空戦を戦っており、揚陸艇は失地奪還に適した装備だ。一方、フィリピン海軍には駆逐艦がなく、現在はコルベット艦やフリゲート艦を配備している。
東シナ海では、日本の海上保安庁が、中国が「釣魚島」と呼んで領有権を主張する尖閣諸島周辺で警戒を続けている。
小泉氏は昨年11月、与那国島で記者会見を開いた。与那国島では日米両軍の展開が拡大しており、尖閣諸島と台湾に最も近い。
中国海軍の機動部隊が活動範囲をさらに広げる中、小泉氏の戦略的視野も、より遠方の島へ向かう可能性がある。
ミッドフォード氏は、安全保障関連3文書の改定では、太平洋上の硫黄島(いおうとう)への言及も盛り込まれるとの見方を示した。
東京の南約750マイル(約1200キロ)の火山島は、中国海軍の動向を監視する上で戦略的に重要な要衝とされる。米国では旧称の「いおうじま」として知られている。

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