ワシントン像取り囲む「その他のワシントン」、見直される記念碑のあり方 米シカゴ

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シカゴ(CNN) 米シカゴでは今、1体のジョージ・ワシントン像を、「その他のワシントンたち」が取り囲んでいる。「その他」の方は、同じ姓を持つアフリカ系米国人の顔をあしらった青い旗という形をとっている。そこには、発明家ジョージ・ワシントン・カーバー、アカデミー賞俳優デンゼル・ワシントン、建築家ロバータ・ワシントン、そしてサウスサイドの学校で楽団を率いるベンジャミン・ワシントンなど、著名人から地域のヒーローまで幅広い人物が名を連ねる。

記念碑に値するのは誰なのか? そんな問いが全米を駆け巡ったのは6年前。黒人男性ジョージ・フロイドさんの死亡事件を受けて、米国が人種的不公正と向き合うことになったのがきっかけだった。我々の公共の象徴として誰が表現され、あるいは誰が排除されているのかという問題もそこに含まれていた。物議を醸す人物の像が破壊もしくは撤去される中、2020年に公共空間から姿を消した南部連合に関連する作品の数は160点以上に上った。

こうした動きに対してシカゴは独自の答えを示している。具体的には市が行った内部調査でジェンダーや人種の表現に偏りや不足があることが判明したのを踏まえ、新たな記念碑を委嘱したり、既存の記念碑に相対する作品を制作したりするというものだ。今年、市の文化・特別行事局(DCASE)は、新たにアーティストに委嘱した作品群を公開。一連の作品は「シカゴ記念碑プロジェクト」と銘打たれている。

「その他のワシントンたち」は6日、市のサウスサイドにあるワシントン・パークで公開された。アーティストで建築家のアマンダ・ウィリアムズ氏が構想したもので、これまでに完成した作品としては2作目となる。この作品は、地域の人々にとって大切な「ワシントン」姓の人々について考えるよう促すもので、旗とそれに付随するバナーが彼らの物語を伝える。旗の人物は3年間にわたり毎年入れ替えられる。

旗に描かれた「ワシントン」たちは気象の影響も考慮して1年ごとに入れ替えられる/Jon Song/Courtesy the artist/Amanda Williams via CNN Newsource
旗に描かれた「ワシントン」たちは気象の影響も考慮して1年ごとに入れ替えられる/Jon Song/Courtesy the artist/Amanda Williams via CNN Newsource

このプロジェクトは「生きたアーカイブ」を表現することを意図していると、DCASEのコミッショナー、ケニア・K・メリット氏は声明で述べた。アーカイブは「成長を続けながら地域社会の記憶を映し出すとともに、あまり広くは知られていない物語を伝える機会を創出する」という。

このデザインは、米国の首都にあるワシントン記念塔を取り囲む旗をモデルにしている。ウィリアムズ氏が選んだ色は青、クリーム色、チョコレート色、サーモン色の4色。これは前出のジョージ・ワシントン・カーバーが考案したカラーパレットを参照している。ウィリアムズ氏は、この科学者をテーマにしたより大きな作品群の一環として、当該のカラーパレットを探究してきた。

「その他のワシントンたち」の構想を手掛けたアーティストで建築家のアマンダ・ウィリアムズ氏/Walter Mitchell/City of Chicago via CNN Newsource
「その他のワシントンたち」の構想を手掛けたアーティストで建築家のアマンダ・ウィリアムズ氏/Walter Mitchell/City of Chicago via CNN Newsource

独立戦争中のワシントンを表したオリジナルの騎馬像は1904年からそこにある。実際にはフランスに贈られた像の複製だ。2020年6月に破壊行為を受けた後、この像は長い間フェンスで囲われていた。ワシントンをはじめとする建国の父たちの記念像は、反人種差別の抗議者たちの標的となった。ワシントン自身、バージニア州の自宅とプランテーションで何百人もの奴隷を所有していた。シカゴのこの像は、住民の大半を黒人が構成する地域に位置する。そのためウィリアムズ氏は、像が周辺のコミュニティーを十分に代表していないと考えている。

「どうすれば、この場所を再び意味のあるものにできるのか?」。制作依頼を受けたとき頭に浮かんだのはその問いかけだったと、オープニングイベントでのインタビューでウィリアムズ氏は説明した。「像に直接触れることなく、それでもその意味を何か曖昧(あいまい)なものにできるとしたら、具体的に何をすればいいのか?」

多くの人々のための記念碑

ウィリアムズ氏のアイデアは国勢調査の結果を通じて形になり始めた。そこで同氏は、「ワシントン」という姓が長年にわたり、ほぼ全面的に黒人系米国人と結びつく姓の上位に位置してきたことを知った。2000年代には首位となり、ワシントン姓を持つ人々の約90%がアフリカ系米国人だと自認していた(20年の国勢調査では、「ピエール」姓に首位の座を明け渡すが、姓としてはワシントンの方がはるかに一般的だ)。

そこでウィリアムズ氏は、道行く人々にとってより意味のある存在かもしれない多くの「ワシントン」たちを記念碑として称(たた)えることができると気づいた。それらの人物はミュージシャンやアスリートから政治家、地域のヒーローまで多岐にわたる。このプロジェクトのキュレーションを担当する教育者で、近隣のイングルウッド地区に住むキャンディス・ワシントン氏と協力し、ウィリアムズ氏は広く意見を募るためのウェブサイトを立ち上げた。

バナーに記載されたQRコードから、それぞれのワシントン姓の人々にまつわる物語を閲覧できる/Jon Song/Courtesy the artist/Amanda Williams via CNN Newsource
バナーに記載されたQRコードから、それぞれのワシントン姓の人々にまつわる物語を閲覧できる/Jon Song/Courtesy the artist/Amanda Williams via CNN Newsource

「それによって、コミュニティーが真の意味での主体となれる」「人々は、これらが自分たちの物語なのだと知る必要がある」(ウィリアムズ氏)

「その他のワシントンたち」は、シカゴ記念碑プロジェクトの一環として市内各地で計画されている八つの委嘱作品のうちのひとつ。同プロジェクトはメロン財団から680万ドル(約10億8000万円)の助成を受けている。先月には、1919年のシカゴ人種暴動の犠牲者を追悼するため、市内各地に設置された標識が完成した。ほかの委嘱作品には、先住民の声を称える記念碑、ゴスペル歌手で公民権運動家のマヘリア・ジャクソンの彫刻、そして70~90年代にシカゴ警察から拷問を受けた生存者たちを顕彰する場所などが含まれている。

取り組みは成果を実らせつつあるが、現在の第2期トランプ政権は米国史において伝統的に称揚されてきた人物を顕彰する姿勢をさらに強め、そうした記念碑に猛烈な勢いで資金を投じている。ホワイトハウスは、長年計画されてきた「米国英雄国立庭園」の建設地を発表し、新たに舗装されたホワイトハウスのローズガーデンに建国の父たちの彫刻を加えた。彫刻家レオ・フリードランダーによる既存の神話上の彫像に再び金箔(きんぱく)を施したほか、リンカーン記念堂をはるかにしのぐ高さ約76メートルの凱旋(がいせん)門の建設も進めている。

「その他のワシントンたち」の開幕式でスピーチしたシカゴのジョンソン市長は、シカゴ記念碑プロジェクトを通じて、市が模範を示せることを期待している。

「この取り組みを通じて、シカゴは、都市が歴史を保存し、地域社会を強化し、真の対話を促すために、どのようにパブリックアートへ投資できるかについて、全国的なモデルを示している」とジョンソン氏。「『その他のワシントンたち』は、我々の歴史に対する理解を広げ、この街に貢献し、この街を形作ってきた多くのワシントン姓の人々を称えるものであり、これからも未来の世代に刺激を与え続けるだろう」

イベントには、顕彰された人々の一部とその家族も出席していた。地元のスクールバンドのリーダー、ベンジャミン・ワシントンさんもウィリアムズ氏と初の対面を果たし、握手を交わした。ウィリアムズ氏のスピーチの後、さまざまなワシントン姓の人々が笑顔で自分たちの旗の下に立って写真を撮った。彼らは「私はワシントン」と書かれたステッカーを身につけていた。

「ソニア・ワシントン」と自己紹介したある女性は、旗を指さしながら「あそこに私がいる」と口にした。

原文タイトル:As Chicago rethinks its monuments, an artist surrounds George Washington with ‘Other Washingtons’(抄訳)

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