片山財務相、「やっていく時」と明言。 金利復活と野党法案が後押し
片山さつき財務相は7月14日午前、財務省内で開かれた閣議後の記者会見において、国債のNISA対象化や相続税優遇について「やっぱりやっていく時じゃないか。金利のある世界にもなったし、ポートフォリオ(投資の組み合わせ)の多様化は国民にとってプラスだという声は多い」と述べ、制度変更に向け意欲を示した。
かつての超低金利下では、国債の利子自体がゼロに近かったため、非課税にしても個人のメリットはほとんどなかった。しかし、2024年3月に日銀がマイナス金利の解除に踏み切って以降、国内の金利環境は大きく変化している。
指標となる長期金利(新発10年物国債利回り)は、7月10日に一時2.9%台まで達して約30年ぶりの高水準を記録している。金利が上昇した今、利子にかかる約20%の税金が引かれないメリットが以前よりも大きくなっている。この市場環境の変化により「国債のNISA対象化」という議論が浮上した。
政治的な動きについては、7月10日に国民民主党が「国債のNISA対象化と相続税減免」を盛り込んだ法案を参議院に提出。この野党主導の動きが、政府・与党側の議論を一気に加速させる呼び水となった。
片山財務相は会見で、国債の商品性の見直しや魅力向上を「早急に具体化し、検討を加速したい」と発言。同日午後には「資産運用立国」を提唱してきた岸田文雄元首相とも首相官邸内で会談し、今後の進め方について合意した。
今後は自民党の小野寺五典税制調査会長らと、来年度の税制改正に向けた実務的な調整に着手するとしている。
税制度改正が市場にもたらす影響は?
今回の制度改正が実現した場合、個人投資家や金融市場にはどのような影響が及ぶのだろうか。
これまで「価格変動リスクが不安だ」として、株式や投資信託が主体の現行NISAを敬遠していた保守的な投資層(主に高齢層)に対し、元本割れリスクの極めて低い国債が非課税の選択肢に加わることは、新たな投資の「入り口」として期待されている。
金利上昇局面において、利子所得への課税が免除される実質的な恩恵は以前より高まっている。さらに、あわせて検討されている「相続税の軽減措置」が導入されれば、銀行の預貯金に留まっている巨額の個人資金を国債へとシフトさせる動機付けとなり得る。
NISAの理念や投資効率をめぐる議論
一方で、NISAの本来の目的である「貯蓄から成長投資へ」との整合性を懸念する声もある。NISAは個人の資産を企業の成長資金(株式など)に回し、経済の活性化を促すための制度である。資金が「国債(国の借金)」に還流するだけでは、民間への成長資金の供給やリスクマネーの循環には繋がりにくいとの見方もある。
また、NISAの生涯投資枠が「1800万円」と上限が決まっている点も注目されている。 国債は安全な反面、株式などに比べると期待できるリターンは低い。そのため、限られた非課税枠を国債で埋めてしまうことは、長期で積極的にお金を増やしたい人にとっては資金の運用効率を下げることにもつながりかねず、投資家の間でも戦略が分かれるところだ。
財務省が公表する「国債等の保有者別内訳(令和8年3月末速報値、日銀・資金循環統計ベース)」によると、日本の個人(家計)が保有する割合は、国債単体で2.0%、短期の証券を合わせた全体でも1.7%にすぎない。
政府には、一部の金融機関に偏っている国債を国民に広く持ってもらうことで財政を安定させたい狙いがある。一方、国民側にも「安全に運用したい」という強いニーズがあり、両者の思惑は一致する。しかし、個人資金が企業ではなく国に流れる仕組みが、日本経済全体の成長につながるかは議論が分かれる。
年末の税制改正大綱に向け、非課税枠の設計や相続税の優遇をどう着地させるのか。具体的なルール作りの行方が注目される。
※本記事は、事例として取り上げた金融商品の売買を勧めるものではありません。本記事に記載した情報によって読者に発生した損害や損失に関しては、発行媒体は一切責任を負いません。投資における最終決定はご自身の判断で行ってください。

4 時間前
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