【分析】オバマ氏とトランプ氏が繰り広げる最後の争い 緊迫度を増す勝負の行方は

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(CNN) 20年前の米中間選挙で激戦州に乗り込んだバラク・オバマ氏は、当時ひどく不評だった戦争や労働者層を打ちのめしていた経済をめぐり、共和党のジョージ・W・ブッシュ大統領を非難した。

オバマ氏は今また、同じ活動に精を出している。ただし今回の批判はブッシュ政権時代よりさらに痛烈で軽蔑の色が濃く、切迫感が強い。民主党候補を後押しし、その力で今度こそ宿敵ドナルド・トランプ大統領の政治的勢いを封じることをめざす。

同氏は24日、オハイオ州とミシガン州を遊説して回った。どちらもオバマ、トランプ両氏が2度の大統領選で制した州だ。同じ日、トランプ氏はジョージア州に入っていた。オバマ氏も来週、同州での遊説を予定している。

オバマ氏とトランプ氏の政治運動は、米政治の過去20年間を特徴づけてきた。両氏はいまだに、それぞれの党で最も注目される表看板だ。24日は、そんな二人の指導者が大統領の座を勝ち取った手腕を誇示する場面を同時に見られる希少な機会となった。

オバマ氏は今回も希望の使者としての姿を前面に出している。有権者に向け、自分たちには「不安な時代」に変化を起こす力があることを分かってほしいと訴えかけている。ただ、同氏の代名詞となっているその前提は、2期に及ぶトランプ政権によって揺るがされた。

元大統領の同氏は、ミシガン州デトロイトでの演説で「この10年続いた混乱と残虐行為、腐敗、無能ぶり、愚行、たわごとは、少なくとも現代のわが国に類を見ない。皆さんには『もうたくさんだ』と言うチャンスがある」と訴えた。

一方、トランプ氏は支持率の低下と、対イランの戦闘や生活費高騰への反発を抱えながらも、米国はかつてないほど繁栄しているという独自のイメージを打ち出した。24日の演説でも「我々は米国の黄金時代を生きている」と宣言している。

オバマ氏に対する執念は相変わらずだ。ミシガン州で開く集会に向かおうとしていた25日朝、自身のSNS「トゥルース・ソーシャル」に「オバマはひどく無能な大統領だった」と書き込んだ。

切っても切れない両氏の関係

24日の遊説での対立から浮き彫りになるのは、互いを徹底的に見下し合う正反対の二人が、米国史上の激動期にある今、政治的にどれほど切っても切れない関係にあるかということだ。

オバマ氏が築いた運動の基礎には、民主党支持の州も共和党支持の州も統一された大志を共有し、より人種的多様性に富んだ、前向きで分け隔てのない国のあり方を受け入れるとする主張がある。このビジョンは大卒者や少数派、都市部と郊外のリベラルな有権者からなる支持層の共感を呼んだ。

これに対してトランプ氏は、米国の伝統文化が社会変革や多様性の広がりによって脅かされていると懸念する人々の間で、独自の連携体制を構築。オバマ氏が象徴するとされる経済グローバリズムに不満を持つ農村部の非大卒者や労働者層から支持を得た。

両氏の立場はそれぞれ、純粋に米国的な起源を持つ。第44代大統領を務めたオバマ氏は、理性と科学、政治制度と多元主義によって社会が発展するという啓蒙思想を体現している。第45代と47代大統領のトランプ氏は、ナショナリズムとエリート科学界への懐疑論を掲げ、政治的制約を課すために設けられる制度より自らの権力を優先する。

オバマ氏とトランプ氏の間にあるのは、希望か恐れか、変革か関与後退かの対比を超えた、より深い次元にまで切り込む対立だ。それは正統な米国主義のなかで競合する二つの潮流を際立たせているが、どちらの潮流も21世紀初頭のうちに優位を確立するには至らなかった。

オバマ氏の痛烈なトランプ批判は見出しを賑わすが、トランプ氏が2期にわたって大統領職に就くのを阻止することはできなかった。

オバマ氏は10年近く前に大統領の座を去り、自身のすべてを否定したトランプ氏にホワイトハウスを明け渡した。そのオバマ氏がなぜ、今なお党内で最も優秀かつ人気の高い代弁者であり続けているのか。民主党員はそう自問してみるべきだ。オバマ氏が「10年後の」今こそ変化の時だと口にするのを見ると、本人の副大統領だったジョー・バイデン氏が大統領だった時期などまるで存在しなかったかのように思える。

中間選挙では、少なくとも何人かの若手民主党指導者にスポットが当たっている。ジョージア州のジョン・オソフ上院議員や、テキサス州から連邦上院選に出馬するジェームズ・タラリコ氏のように、民主党の呼びかけをアップデートするような発言力と信念を持つ指導者だ。

共和党もまた、支持率が低迷し、任期切れを控えるトランプ氏に代わる新たな人材を必要としている。だが民主党がすでに示した通り、周囲を巻き込むカリスマ性を備えた指導者を一度の運動で交代させるのは至難の業だ。そのような指導者に特有のオーラを、見劣りする後進がすんなり引き継げるとは限らない。

2028年大統領選に向けた共和、民主両党の正副大統領候補の人選によっては、新たな時代の幕開けが訪れるかもしれない。実現すれば米国は前進し、オバマ主義とトランプ主義の果てしない争いから抜け出す可能性がある。

オバマ氏自身も、ミシガン州でそれをほのめかしたようだ。「私もずいぶん長いことやってきた」「長くやりすぎていると言う人もいるだろう」と語り、ミシェル夫人に「年なんだから、もう座ってなさい!」と言われたことを明かした。

「ブーイングでなく投票を」

とはいえ、相変わらずのオバマ節は健在だ。「ブーイングだけでなく投票を」「こちらこそ愛しているよ」といった名セリフを投げかければ、かつて同氏の集会がいかに支持者の間から共通の目的意識を引き出していたか、その記憶がよみがえる。ちょうどトランプ氏のMAGA(米国を再び偉大に)の集会が、本人の政治キャリアを通して同じ役割を果たしていたように。

オバマ氏はミシガン州で、民主党の上院議員候補、アブドゥル・エルサイード氏に対するトランプ氏の中傷に言及。かつて自身の米市民権に疑いを投げかけた、同氏の人種差別的な選挙戦と結びつけた。

共和党はエルサイード氏がエジプトで設立されたイスラム主義組織「ムスリム同胞団」を支持していると非難するが、本人はそれを否定している。皮肉なことにオバマ氏は大統領時代、イスラム世界と米国との和解を促す演説を行うためエジプトを訪れているが、この点についてはだれも触れていない。

オバマ氏は24日、かねて選挙戦で発揮してきた、シンプルな争点を打ち出すという強みが今も健在であることを示した。トランプ氏がホワイトハウスを金ぴかに改装しようとしているのを揶揄(やゆ)し、「サダム・フセインがチーズケーキファクトリー(派手な内装で知られる米国の外食チェーン店)を開店したようだ」と皮肉った。その上で、 有権者は米国が必要とする変化を実現できると訴えた。

オバマ氏は「現大統領は愚かな決断を重ねてきた」と述べ、ガソリンおよびディーゼルの価格や住宅ローン金利に言及。「そしてだれにも頼まれず、だれも賛成票を投じていない不要な戦争を始めるという判断を下した」と続けた。

「以前は何もかも値段が高すぎると思っていたが、今はどうか? あらゆる物がもっと値上がりしている」(オバマ氏)

こうして戦争と経済のメッセージを組み合わせる論法は、08年大統領選での主張を思い起こさせる。オバマ氏は当時、イラク戦争のような「愚かな」戦争と、国民に「買えない車、払えないクレジットカードの請求書、手の届かない授業料」ばかりが残る経済を厳しく批判した。

オバマ氏は「ワシントンの破綻(はたん)した政治」と、共和党のブッシュ大統領による「失策」を非難した。今やそれよりさらに極限化した時代に合わせる形で、同氏のメッセージは厳しさを増している。

一方で、より深い部分での事象も見られる。トランプ氏を批判する人々は、同氏の大統領就任を初の黒人大統領の誕生に対する文化的な反動と捉える。そしてイラン問題、医療保険、その他の分野におけるトランプ氏の政策の多くは、前任者に抱く軽蔑から生まれているように見える。

オバマ氏が支持者らに「どこへ行っても変化の空気が漂っている」と語りかけた時、同氏はただ中間選挙の話をしていただけではない。自身の政治的アイデンティティーと功績が拠って立つ信念、一般の国民が力を合わせれば、凝り固まった権力に対してボトムアップで政治的変革を起こすことができるという信念を、改めて述べていたのだ。

トランプ氏はオバマ氏の弱点を突くが

トランプ氏がジョージア州で苦戦する連邦上院選の共和党候補、マイク・コリンズ氏の応援集会を開いている間、同氏の念頭にはいつものようにオバマ氏の存在があったようだ。

トランプ氏は集会の規模に関する見解から、自身とオバマ氏との政治的な求心力を比較。「バラク・フセイン・オバマがミシガン州にいたようだが、会場は空っぽだった」と、集会の参加者数を主観的に見積もってみせた。

両氏は互いに離れた場所から、イランをめぐって議論を戦わせた。オバマ氏は自身がかつてイランと核開発凍結の合意を結んだ結果、戦争をしなくて済んだと述べた。一方トランプ氏は、この合意がイランの核兵器獲得につながったと主張した。

トランプ氏はまたジョージア州での集会で、独フォルクスワーゲン(VW)傘下のアウディが同州メーコンに新工場を建設する計画だと発表。新たな工場では年間20万台の自動車を生産し、地域に3万人の雇用を創出すると述べた。これを聞いた聴衆からは「トランプコール」が沸き起こった。

世論調査では、米国人の過半数がトランプ氏の経済運営を支持していないことが示されているにもかかわらず、同氏は米国をより豊かな国にしたと主張。貧困を減らし、製造業を活性化させ、数兆ドル規模の対米投資を呼び込んだとの認識を示している。その上で支持者らに「バラク・フセイン・オバマが、製造業はなくなってしまうだろうと言っていたのを覚えているか」と問いかけた。これはオバマ氏が16年、雇用を取り戻すには「魔法のつえ」がいると発言したことを指していたようだ。

トランプ氏が突いたのは、オバマ氏が残した弱点にほかならない。16年の時点で、伝統的に民主党を支持していたラストベルト(さびついた工業地帯)のブルーカラー労働者の間には、自分たちがもはや尊重されていないという確信が広がっていた。この弱点が、トランプ氏の政治的台頭のきっかけとなった。

オバマ氏が政界に躍り出てから20年が過ぎた。トランプ氏が大統領選で思いがけない勝利を収め、オバマ氏の掲げたあらゆる理念を脅かしてからは10年。政治的に激しく対立する二人は、今もそれぞれの党で最有力の政治家であり続ける。

だが、今回の中間選挙が両氏の最後の戦いの一つになるかもしれない。そしてこの選挙を通じて、政治の新時代へ向けた問いかけに対する答えも見えてくる可能性がある。つまり「果たしてどちらかの政党から、一定の後継者は生まれてくるのか?」という問題だ。21世紀の第2四半期において、時代の精神を的確にとらえることのできる後継者が。

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本稿はCNNのスティーブン・コリンソン記者による分析記事です。

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