【分析】ウクライナ巡る「取引」に躍起なトランプ氏、プーチン氏が見据えるのはロシアの勝利

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モスクワ(CNN) トランプ米大統領がロシアの大統領であれば間違いなく、ウクライナでの凄惨(せいさん)な戦争を終わらせる取引にすぐさま飛びつくだろう。わずか24時間で実現できるとすら示唆するかもしれない。

トランプ氏からすれば、考えるまでもない話だ。

5年目に入った消耗戦が解決すれば、トランプ氏が「若く美しい子どもたち」と呼ぶ何千人もの若者が毎月、前線で命を落とす事態を食い止められる。それだけでなく極めて重要なのは、莫大(ばくだい)な経済的利益が生まれることだ。

対ロシア制裁は一掃され、その後には実入りの大きな貿易協定が続くはずだ。言い換えれば、平和と繁栄が勝利を収める。

だがもちろん、トランプ氏はロシアの大統領ではない。その座にいるのはプーチン氏だ。そして現実にロシアを率いるこの強権的な指導者は、ウクライナ戦争を巡って掲げた目標について妥協する気はほとんどないように見える。ロシア人やウクライナ人の命を救う気も、国庫に数十億ドルの追加収入をもたらす気もなさそうだ。

こうした根本的な認識のずれが、戦争終結の仲介を試みるトランプ政権の努力を不毛なものにしてきた。このずれが改めて浮き彫りになったのが、ロシアのサンクトペテルブルクで行われた最近の重要会談だ。会談にはトランプ氏の仕事仲間から政権の交渉責任者となった米国のウィトコフ特使と、プーチン氏本人が出席した。

プーチン氏は会談の席上、前日にノルウェーで行われた協議の結果に「関心がある」とウィトコフ氏に伝達。ノルウェーでは米国や欧州、北大西洋条約機構(NATO)の当局者がウクライナのゼレンスキー大統領と膝(ひざ)を突き合わせ、ロシアへの経済的な優遇措置を含む新たな和平案の策定に向け協議した。

その後、ロシア大統領府の高官は、ウィトコフ氏がノルウェーでの協議内容をプーチン氏に説明したことを認めた。だが予想通りと言うべきか、「実際のところ、ウクライナ危機の解決に役立つ内容はほとんどなかった」と付け加えるのを忘れなかった。

かたくなに譲歩を拒むロシア大統領府のこれまでの姿勢を考えれば、この結果は完全に予想できた。ロシアはウクライナ東部ドンバス地方の全域を支配下に置く、ウクライナの将来の安全保障体制に発言権を持つ、などといった強硬な立場を頑として崩していない。

それでもホワイトハウスは、ロシア側がもっと歩み寄る姿勢を見せるのではないかと本気で期待していた節がある。特にトランプ氏は先日、ロシア産ディーゼル燃料(軽油)の輸出に対する制裁を解除したばかりだ。米中間選挙を控え、国内の燃料価格の引き下げを図る政治的な思惑があったが、ロシアにとっても大きな経済的恩恵となった。

その後、トランプ氏は(不発に終わったものの)「エネルギー停戦」を打ち出し、ウクライナに対してロシアの製油所への甚大なドローン(無人機)攻撃を停止するよう迫った。

非難の応酬となり、米国による情報共有にも影響が出る中、トランプ氏はウクライナ指導部の交代まで要求。いずれもロシア大統領府にとっては願ってもない展開だ。

だが、ロシア政府の目には、こうした取引や優遇措置、さらにはウクライナへの嫌悪感を米国と共有できたことさえも、歩み寄って譲歩すべき合図とは映っていない。むしろ、対米戦略が成果を上げている証しだとみられている。

しかも、ロシアの戦略は米国とは対照的に、冷静に現実を見据えたものだ。プーチン氏は何がトランプ氏を突き動かしているのかを理解しており、巨額の経済取引を約束することで、気まぐれなトランプ氏の関心をそらすことに難なく成功している。

サンクトペテルブルクでのウィトコフ氏との協議でも、ロシア側はさらなる経済取引を提案した。プーチン氏はまず、物議を醸しているディーゼル燃料関連の合意を称賛。そのうえで、ロシアは米国向けの必要不可欠な肥料の輸出を増やすことなども可能だと示唆した。

ロシア政府系ファンドのトップで、トランプ政権との交渉の窓口役を務めるキリル・ドミトリエフ氏は、3時間に及ぶ協議の終了後、「データセンターやエネルギー事業、エネルギー協力など、さまざまなプロジェクトについても話し合っている」と語った。

ロシア大統領府がホワイトハウスに甘言を弄(ろう)して機嫌を取ったり、味方につなぎ留めておいたりする目的で利用しているのは、こうした経済的な「お飾り」だけではない。

プーチン氏はサンクトペテルブルクでの会談に先立ち、米国人のスティーブン・ハバード氏(74)を解放した。ハバード氏はロシアによる全面侵攻が始まった2022年にウクライナで身柄を拘束され、ロシアで勾留されていた。ウィトコフ氏はプーチン氏を持ち上げ、「人道主義的な」行動だと称賛した。

米ミシガン州出身のハバード氏は、ロシアの流刑地で4年間にわたって拘束され、深刻な健康問題を抱えていたと報じられている。しかし最終的に身柄が解放されたことを受け、ホワイトハウスはトランプ氏の交渉手腕や、プーチン氏からの敬意の表れだと称賛した。

トランプ氏のSNSトゥルース・ソーシャルに投稿された声明には、「トランプ大統領への敬意から、米国は見返りとして何も求められなかった。ロシアにとって前代未聞のことだ」とある。

しかし、旧ソ連国家保安委員会(KGB)元将校のしたたかなプーチン氏が、同じように捉えているとは思えない。

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本稿はCNNの国際問題担当チーフ特派員、マシュー・チャンス記者による分析記事です。

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