体育館でよく聞く「キュッ」音は靴底を走る時速300㎞の波が生んでいた

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きしむバスケットボールシューズの秘密は誰も知らなかった

きしむバスケットボールシューズの秘密は誰も知らなかったきしむバスケットボールシューズの秘密は誰も知らなかった / Credit:Canva

バスケットボールの試合を見ていると、ボールをドリブルする音や観客の歓声よりも先に、靴が床にこすれる「キュッ」という音が耳に飛び込んできます。

静かな体育館にいると、そのきしみ音だけがまるで主役のように響き渡ります。

不思議なことに、その音はただ「うるさい」だけではなく、試合を盛り上げる独特の臨場感を与えています。

バスケットを題材にしたアニメや映画でも、シューズから発する「キュッ」という音は、場面の臨場感を支える音としてよく使われます。

けれども、よくよく考えると、この「キュッ」という音が、ただ靴底が床にこすれるだけで生じているという説明には、どこか納得がいかない部分があります。

なぜなら、単なる摩擦音にしては、楽器のように鮮明な音程(高さ)を持っているからです。

というのも一般的に、楽器のように鮮明な音程のある「きしみ音」は、とくに硬いもの同士では、表面が引っかかっては突然動き出す「引っかかり滑り(スティック・スリップ)」という現象で説明されてきました。

たとえば黒板を爪でひっかくときや、車のブレーキがキキュッと鳴るのも、この引っかかり滑りが起こしている典型的な音です。

これらの音はしばしば鋭く、ある意味で明確な高さの音を持っています。

一方で、柔らかいものと硬いものの間の摩擦は、明確な音の高さが目立ちにくいことが多くなります。

たとえば硬い黒板を軟らかな黒板消しで消すときや、机の上の落書きを消しゴムで消すときは「ザザー」という感じのザラついたノイズに近い音がします。

柔らかい素材は変形しやすく、そのためある場所が硬いものに接しているのに、1mm横では浮いている、さらにその1mm横では接している…というように硬い部分との接触が複雑になり、その個々が音を発するため雑音的になりやすいのです。

つまり摩擦音の世界では、硬いもの同士は「明確な音」柔らかいものと硬いものでは「ザラザラ音」という傾向にあるわけです。

しかしバスケシューズの底という軟らかなものと床という硬いものの間では、この分類に従わず、まるで硬いもの同士が擦れ合うように「キュッ」と明確な甲高い音をしばしば発しています。

そこで今回研究者たちは、「キュッという音」の謎を解き明かすため、靴底と床の間で実際に何が起こっているのかを音と映像で詳しく調べることにしました。

すると、一体あの音はどこから来るのでしょうか?

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