
リトアニアのケストゥティス・ブドリス外相は、2025年4月3日木曜日、ブリュッセルのNATO本部で開催されたNATO外相会議に出席するため到着した際、報道陣の取材に応じた。(AP通信/バージニア・メイヨー撮影)
By Jacob Wirtschafter – Special to The Washington Times – Friday, July 17, 2026
バルト3国と欧州を結ぶ重要インフラに対する破壊工作をロシアが計画していたことを情報機関が突き止めたとリトアニア政府が明らかにしたことを受けて、ケストゥティス・ブドリス外相はその数日後、ロシアに対し明確な警告を発した。
ブドリス氏はワシントン・タイムズとのインタビューで、「もし被害や犠牲者が出れば、それは事故ではなく侵略行為として扱う」と述べた。その場合、「自国の防衛だけでなく、同盟全体による集団的自衛の対象となる」と強調した。
この警告は、ギタナス・ナウセダ大統領が今週明らかにした情報に基づくものだ。ブドリス氏によると、ロシアの計画は「モスクワ最高指導部の承認」を受けたもので、ウクライナ戦争とも密接に関係しているという。
同氏は、ロシアはウクライナ軍が侵攻を食い止めただけでなく、戦争遂行を支える製油所やパイプラインへの攻撃でも主導権を握ったと認識しており、その圧力の下で、より低コストの報復手段を検討していると指摘した。
情報によれば、「この地域の重要インフラを巡る検討」が進められており、「偽旗作戦(相手になりすました工作)の可能性も排除されていない」という。
一方、リトアニアが最大の抑止力と位置付ける米軍の常駐体制には不透明感が漂っている。
約1000人の米軍ローテーション部隊が先月、リトアニアから撤収したが、米国防総省は後続部隊の派遣時期や規模を明らかにしていない。
ブドリス氏は、米側に継続駐留を強く働き掛けており、実現を確信していると語った。
「われわれは米軍がリトアニアに引き続き展開することを望んでいる。軍事計画に必要な時期や規模、兵力について正式な通知を待っているが、結果については楽観している」
リトアニアは、この10年間、米国が欧州各国に求め続けてきた理想的な同盟国といえる。今年は国内総生産(GDP)の5.4%を防衛費に充て、北大西洋条約機構(NATO)加盟国中で最高水準となった。米軍を受け入れ、西側製兵器を購入し、ウクライナ支援を全面的に実施する一方、中国に対する強硬姿勢で経済的代償も払ってきた。東部戦線で最も忠実に米国を支えてきた同盟国でさえ米軍駐留の継続を確信できないのであれば、政府が「他にどの同盟国なら保証されるのか」と懸念を抱くのも当然だ。
こうした懸念は政党間でも共有されている。2024年総選挙で勝利した社会民主党は税制や社会保障の見直しを掲げたが、国防政策の転換は打ち出していない。
ロシア問題や対米関係を巡って主要政党の立場に大きな違いはなく、いずれもウクライナ支援、防衛費増額、米国との緊密な関係維持を支持している。
ブドリス氏は、脅威は差し迫っているというより、着実に拡大していると分析する。ロシアは、西部・北西部方面ではバルト3国に対峙する部隊を増強し、「旅団ではなく師団」を新設する一方で、ロシアはウクライナで攻勢を続けているという。「ロシアに地域で数的優位を許してはならない。短期間、あるいは全く予兆のない攻撃を受ける事態も避けなければならない」
そのためにはロシアと兵士の数を競うのではなく、「同盟軍がより迅速にこの地域へ展開できる体制」を整えることが重要だとし、「だからこそ米軍がここに残ることが極めて重要だ」と述べた。
より差し迫った危機はウクライナにある。ロシアは今冬、電力網を狙った大規模な無人機・弾道ミサイル攻撃を準備しているという。
ウクライナは無人機迎撃では成果を上げているが、弾道ミサイルを迎撃するミサイルが不足し、防ぎ切れない攻撃が増えている。リトアニアは不足分を補うため、発電機では世界最大級の供与国となり、変圧器も大量に供給している。さらに国内の発電所1基を解体してウクライナへ送った。
また、米国がウクライナ国内で迎撃ミサイル、パトリオットPAC3の生産を認めたことについて、「極めて大きな成果だ。完全に実現すれば、われわれにとっても重要な意味を持つ」と評価した。
ビリニュス大学国際関係・政治学研究所のマルガリータ・シェシェルギュテ所長は、米軍駐留が不可欠な理由について、「プーチン大統領が抑止力として認識するのは米国だけだ。欧州だけでは十分ではない」と語る。
ブドリス氏自身は、今回の部隊交代終了を米軍撤退の兆候とは受け止めていない。今回の展開はNATOではなく米国とリトアニアの2国間の計画によるもので、「これまで駐留した米軍に深く感謝している」と述べた上で、リトアニアが受け入れ国として「世界最高水準」の支援を提供しているのはそのためだと強調した。
アンカラで開かれたNATO首脳会議では、米大統領の参加による同盟の結束確認や、バルト地域の航空警戒任務を強化し、脅威となる無人機を撃墜できる防空任務へ格上げする決定が実現した。「われわれはより安全になる」と同氏は述べた。
リトアニアがGDP比5.4%もの防衛費を計上した理由について、注目されたいからだという指摘を否定、「数字そのものが目的ではない。重要なのは資金を実際の防衛能力へ転換することだ」と説明した。
NATOに約束した即応可能な師団を整備するために必要な水準だったとし、「そうでなければ抑止力は弱まり、弱い抑止力は試される。それは誰も望まない戦争につながる」と警告した。
防衛費目標を達成していない同盟国に対しては、「特別な発想は必要ない。約束したことを実行すればよい」と厳しい姿勢を示した。
もっとも、防衛費増額について専門家の見方は異なる。シェシェルギュテ氏は、防衛上の必要性だけでなく、米国にメッセージを送ることも防衛費増額の理由の一つだったと指摘。「われわれが最初だというメッセージを米国へ送るための思い切った行動であり、トランプ大統領に評価されることも狙いの一つだった」と分析する。一方、ブドリス氏はあくまで抑止力強化が目的だと説明している。
外交以外では、ドイツ企業の協力を得て、可能なものは国内で製造することを目指している。
ラインメタルとKNDSが、国営エネルギー会社の出資を受けて設立した合弁事業は、装甲車両の整備事業から、カウナス近郊でのレオパルト戦車の組み立てへと事業を拡大している。また、ラインメタルはバイソガラに砲弾工場を建設中だ。さらに、リトアニア企業は米国の輸出規制の対象とならないドローン用レーザー照準装置を生産しており、同盟国は米国の輸出承認を待つことなく調達できる。
さらにドイツは、第2次世界大戦後初めてとなる海外常駐旅団をリトアニアへ配備する。ブドリス氏は「2027年末までに完全な即応態勢のドイツ旅団が展開する。それがロシアのシナリオを起こりにくくする保証の一つになる」と述べた。
ただ、国内には安全保障体制の構築に懐疑的な見方もある。レーザー機器メーカー、ブロリス・グループ共同創業者アウグスティナス・ビズバラス氏は、「リトアニアは小国であり、国際競争力のある兵器技術産業を維持するには規模が不足している」と指摘。
産業連盟のビドマンタス・ヤヌレビチウス会長も、ウクライナが自国生産を拡大したため、リトアニア製無人機への需要は低下していると述べている。
ブドリス氏はかつて、防衛産業は需要さえあれば自然に育つと考えていたが、実際にはそうならなかったことを認めた上で、防衛産業の育成には資金だけでは不十分であり、「政治の意思決定者と産業界との連携強化」が必要だと指摘。さらに、ウクライナ戦争を通じて防衛分野の中心的存在へと押し上げられたスタートアップ企業が活躍できる環境も欠かせないとの認識を示した。
米国の政治家でリトアニアが誰を最も頼りにしているのかと問われると、ブドリス氏はまず、リンゼー・グラム上院議員の名を挙げた。11日の死去後、今週に入って、同氏の対露制裁法案が再提出された。「リンゼー・グラム氏は、これからも私たちの心の中で生き続ける」と強調。リトアニアと米国との「心からの結び付き」は、米国がソ連によるバルト3国併合を承認しない立場を示した1940年の「ウェルズ宣言」にまでさかのぼると強調した。
しかし、ブドリス氏が真に強調したのは、小手先の対応ではなく米国の指導力だった。対露政策で重要な措置はいずれも、米国が先頭に立ち、対応の遅い欧州を引っ張ることで実現してきた、と同氏は述べた。
ブドリス氏はEUの制裁について「対応が遅過ぎるし、手遅れになることも多い。制裁パッケージをまとめるたびに『過去最大で最も踏み込んだ内容になる』と言うが、交渉を重ねるたびに削られ、最後に残るのはロシアの意思決定に実質的な影響を与えられない内容になってしまう」と指摘、米議会で対露制裁を巡る議論が進めば、1年前にグラム上院議員の制裁法案がそうであったように、欧州もより踏み込んだ対応を取る後押しになるとの見方を示した。
今月初めのNATO首脳会議について、シェシェルギュテ氏は「最悪の事態への懸念は和らいだが、根本的な不安は解消されなかった」と語った。
「誰もが最悪の事態を恐れていたが、それは起きなかった」と同氏は述べた。ここでいう「最悪の事態」とは、欧州が代替できないNATOの指揮・統制体制や米国の「核の傘」、情報共有の仕組みから米国が後退することを指す。
一方、米軍駐留が今後も維持されるかとの問いには、同氏は短くこう答えた。「トランプ氏のことは誰にも分からない」
中国についての質問にブドリス氏は、リトアニアが米国の後ろ盾に不安を抱き、反中姿勢を後退させているとの見方を否定した。
同氏は「リトアニアは近年、中国から経済的威圧を受けた国の中でも特に深刻な被害を受けた」と指摘した。台湾に「台湾」の名称を冠した代表機関の設置を認めたことを受け、中国は2021年、リトアニアを税関システムから排除したが、同氏はこれを「貿易ルールへの明白な違反」と位置付けた。
その5年後の現在、貿易は回復し、EUも経済的威圧に共同で対処するための「反威圧措置」を整備したという。同氏は、今後は双方の首都に大使館を維持し、「欧州の他国や米国と同程度の関係」に戻すという通常の外交を進める段階だと説明した。
一方、専門家の見方は異なる。シェシェルギュテ氏は、当初の台湾への対応は中国よりも米国を意識したものだったと指摘した。
「なぜ私たちはあの決断をしたのか。それは米国を引き留めるためだった」と同氏は語る。対中強硬路線は、前保守政権と、欧州でも屈指の対中強硬派として知られたガブリエリュス・ランズベルギス前外相の看板政策だったという。
ブドリス氏は政策目標こそ維持しているものの、より抑制的な姿勢を取っている。
もっとも、批判的な見方をする人々は、その「時期」こそが問題だと指摘する。米国の後ろ盾が不透明になる中でリトアニアは対中姿勢を軟化させているというのである。シェシェルギュテ氏は「バナナ共和国のように大国の言いなりになり」台湾との約束を破ったと手厳しい。
リトアニアは来年1月から6カ月間、EU理事会議長国を務める。今まさに調整に当たっている案件を引き継ぐことになり、その中には今週も加盟国間で合意に至らなかった対露制裁第21弾も含まれる。
ブドリス氏は、中国の経済的威圧を乗り越えた経験を前向きに捉える。同氏は、この経験を通じて投資や技術、契約を審査する仕組みを整備し、そのノウハウを他国とも共有できるようになったと評価した。
また、議長国の立場を生かし、欧州の通常戦力を強化する「NATO3.0」構想を推進したい考えだ。欧州の資金で整備を進めながらも、米国との連携は維持すると強調した。
ペルシャ湾での戦争も、リトアニアにとって無関係ではない。欧州はイランに甘いとの米国の見方について問われると、ブドリス氏はイランがもたらす脅威を列挙した。
同氏は、イランの核開発は世界的な脅威であり、戦闘開始時にはイランのミサイルが既に同盟国の領域に到達していたことから、リトアニアも射程圏内に入ると指摘した。
さらに、イランが支援するイスラム組織ハマスやレバノンの親イラン民兵組織ヒズボラが招いている不安定化の影響はイスラエルにとどまらないと主張。イラン情報機関も、敵対勢力とみなす人物を標的に欧州域内で活動していると述べた。
米国による対イラン攻撃の再開は、エネルギー価格やインフレを押し上げる一方で、ウクライナやバルト3国が防空に必要とする迎撃ミサイルも消耗させていると指摘。そのため、欧州は戦争終結に向けた取り組みに関与すべきだと訴えた。
リトアニアは、米国、英国、フランスのいずれが主導する場合でも、将来実施されるホルムズ海峡の安全確保作戦に参加する方針だ。
「部隊が派遣されることになれば、リトアニアも参加する」とブドリス氏は述べた。その理由について、「この問題は私たちにも影響するため、解決の一翼を担いたい」と語った。

3 週間前
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