ヘッドホンで長時間音楽を聴く習慣、潜むリスクは 専門家が警鐘

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2026.10.21 Wed posted at 12:50 JST

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絶えずヘッドフォンを着けていると社会的交流の機会を失うと専門家は指摘する/Seenari/iStockphoto/Getty Images

絶えずヘッドフォンを着けていると社会的交流の機会を失うと専門家は指摘する/Seenari/iStockphoto/Getty Images

(CNN) 音楽配信サービス「スポティファイ」のアカウントに表示された年間利用状況によると、ニューヨーク在住のアティラ・ガリさん(24)は昨年11月中旬の時点ですでに558時間以上、音楽を聴いていた。

「ヘッドホンなしでは皿洗いすらできない。退屈しちゃうから」

ガリさんは出版社に通勤する朝から、ほぼずっと音楽やポッドキャストを聴いているという。勤務中も会議や同僚と話すとき以外はヘッドホンを着けたままだ。会社からの帰り道も、夜に家事をするときも、寝る支度をするときも、ヘッドホンを外すことはない。

ガリさんのようにヘッドホンを着けたり、夢中になっている音声コンテンツをスマホのスピーカーで聴いたりしている若者は多い。調査会社エジソン・リサーチが5月に発表した世論調査によると、13~34歳の人々はポッドキャストや音楽など何らかの音声コンテンツを1日平均4.5時間聴いている。スポティファイによると、2025年1月1日から11月25日までで楽曲の約56%はZ世代が視聴していた。

日常生活で頻繁にヘッドホンを使うことは無害に思えるかもしれない。しかし研究者らは、過度な使用によって人との有意義なつながりを持つ機会や、本人の心をコントロールする能力に悪影響が及びうると懸念を示す。

ヘッドホンが人とのつながりを妨げている?

大半の人にとって、ヘッドホンの使用は慣れ親しんだ習慣であって、意図して他人に何かを伝えるためのものではない。だが、たとえ無意識であっても「人々は他人から自分を守るためにヘッドホンを使っている」と、米カリフォルニア大学アーバイン校のグロリア・マーク特別教授(情報学)は指摘する。

米ウィスコンシン大学マディソン校のリチャード・デービッドソン氏によると、学生たちは常にヘッドホンを着けることで交流の機会を無数に逃しているという。デービッドソン氏はマディソン校内の学生の90%がヘッドホンを着けているとみており、「10年前はそうではなかった」と話す。

デービッドソン氏によると、コーヒーショップでさえ人々は「すぐにスマートフォンを取り出し、ただ立って待つことはほぼしない。待っている他の人にほほえみかけたり、見知らぬ人とおしゃべりしたりすることもほとんどない」という。

最近、2000年代初頭のテレビ番組を見たというアナベル・フランクリンさん(24)が印象に残ったのは、人と待ち合わせをしている主人公がベンチに座って「音楽を聴くこともスマホを見ることもなく、ただまわりを眺めている」場面だったという。

「今では誰もそんなことをしない」と、ニューヨーク在住のフランクリンさんは話す。「自ら進んでぼんやり宙を眺め、物思いにふけって座っているだけの人を最後に見たのがいつだったか思い出せない」

フランクリンさんは目覚めるとすぐに音楽を聴き始め、1日のうち12時間くらい音楽かポッドキャストを再生しているという。「ヘッドホンに依存しているわけではない。ただ着けている方が好きなだけ」と話し、「私の場合は習慣的なもの。毎日の生活の一部になっている」と説明した。

しかし、マーク氏やデービッドソン氏のような専門家らは、取るに足りないことのように思えるヘッドホンの使用が悪影響を及ぼしかねないのではないかと感じている。

日々の社会的交流は不可欠

専門家によると、ヘッドホンの使用は孤独感を助長する可能性もある。米国人では5人に1人が孤独を感じている。

デービッドソン氏によれば、見知らぬ人とほんの一瞬を共有するだけでも幸福感は高まる可能性がある。ヘッドホンを着けていればこうした重要な交流が妨げられかねない。

静寂の価値

ヘッドホンを常に使用することは、澄み切った意識で出来事を十分に味わう能力を損なう可能性もある。

「人々は、静寂の中でただ座って、心を自由にさまよわせたり、退屈することを自分に許したりする能力を失ってしまったのだと思う」とマーク氏は話す。「その問題を解決し、空白を埋めるためのものがいつでも指先だけで手に入る」

しかし、空虚だと感じられるものが、実際には非常に豊かな経験になり得るという。

ヘッドホンやその他の気を散らすものを使わないことで、瞬間に意識を向けたり、周囲の状況に気を配ったりする能力を高められる。

ヘッドホンや同様の気をそらすものを手放せるようになれば、自分自身の思考によって「日常生活で取り組んでいる活動から意識を奪われずに済む」ようになるとデービッドソン氏は話す。

2010年の研究によると、成人は起きている時間の約47%を、実際に目の前で起きていることとは別のことを考えて過ごしている。デービッドソン氏はこの割合がさらに悪化していると確信している。「平均的な成人は自分がしていることに注意を向けていない」

「ヘッドホンなし」の実験

ガリさんは、何かを聴くことは「今やっている作業から意識をそらし、その作業の体験を改善してくれる」と話す。「職場までの退屈な徒歩移動や、嫌いな家事をするとき、まさに仕事をしているときでさえ」そうだという。

「でも、音楽なしではそうしたことができなくなっているのではないかと不安にもなっている」(ガリさん)

数週間前、ガリさんは通勤中に音楽を聴かないことにした。「世界の中に自分が存在しているという実感が強まり、結果的に日々の生活にももっと意識を向けられるようになるか」を確かめたかったのだという。

実験を始めて2日目には、近所に新しく開店する店の看板を四つも見つけた。

「文字通り毎日同じ道を歩いているのに、今まで気付かなかった」とガリさんは話す。「ヘッドホンを着けているときは、ただうつむいて歩いていたんだと思う」

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