トカゲが「しっぽ切り」をした瞬間が9900万年前の琥珀に残っていた――初の化石証拠

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トカゲのしっぽは「ミシン目」で外れるようにできている

トカゲが「しっぽ切り」をした瞬間が、9900万年前の琥珀に残っていたトカゲが「しっぽ切り」をした瞬間が、9900万年前の琥珀に残っていた / マイクロCTで見えた、しっぽの表面。うろこの一枚一枚まで形が残っています。右上(B)に見える途中の傷は、自切による切り口とは別のものです。Credit: Fabrikant et al. (2026), Palaeontologia Electronica, Fig. 2

トカゲを捕まえようとしたら、しっぽだけが手の中に残った。

子どものころ、そんな経験をした人もいるでしょう。

切れたしっぽはしばらくぴちぴちと跳ね回り、敵がそちらに気を取られているすきに、本体は逃げていきます。

この「しっぽ切り(自切)」は、いまのトカゲにとって最も広く使われている身の守り方です。

7000種を超えるトカゲのうち、数千種がこの技を持っていると見積もられています。

ただ、しっぽを捨てるのは、トカゲにとっても痛い出費です。

しっぽは、走ったり跳んだりするときに体のバランスを取る道具であり、多くのトカゲでは栄養をためておく倉庫でもあります。

失えば、走る速さや成長、仲間とのやりとり、子づくりにまで響き、次に襲われたときには逃げ切るのが難しくなります。

やがて生え直しても、新しいしっぽの芯は骨ではなく軟骨で、元どおりにはなりません。

だからトカゲのしっぽには、相反する二つの条件が求められます。

ふだんはちょっとやそっとでは取れないほどしっかりつながっていて、いざというときには一瞬で外れることです。

トカゲのしっぽは「ミシン目」で外れるようにできているトカゲのしっぽは「ミシン目」で外れるようにできている / Credit:川勝康弘

この両立を可能にしているのが、しっぽにあらかじめ入っている「ミシン目」です。

トカゲのしっぽの芯には、小さな骨(椎骨)が数十個、数珠つなぎに並んでいます。

しっぽを切れるトカゲでは、その骨の多くで、骨になりきっていないやわらかい帯が真ん中を横切っています。

この帯が、骨のミシン目にあたる「破断面」です。

まわりの筋肉も、同じ位置で区画に分かれています。

区画のつなぎ目では、しっぽの先に近い側の区画から8本ほどのとがった筋肉の束が伸び、体に近い側の区画のくぼみに差し込まれています。

電気のプラグが、コンセントの差し込み口にはまっているようなものです。

ふだんはこの差し込みががっちりかみ合っていて、まっすぐ引っぱる力にはとても強いのです。

紙のミシン目とちがい、外れやすくなるのは、しっぽを曲げたときです。

しっぽの化石だけでは「しっぽ切り」の直接的な証拠にはなりません。しっぽの化石だけでは「しっぽ切り」の直接的な証拠にはなりません。 / Credit:川勝康弘

危険が迫ると、トカゲはしっぽを曲げながら、ミシン目のまわりの筋肉を縮めます。

するとプラグが差し込み口から抜けるように、しっぽはミシン目のところで外れるのです。

外れたしっぽの、体につながっていた側の端には、抜けたプラグ、つまりとがった筋肉の束が輪になって並んでいます。

切り口を正面から見ると、花びらが開いたような形です。

この形ができるのは、トカゲが自分の筋肉を使ってしっぽを外したときだけです。

死んだあとにちぎれたしっぽや、敵にかじり取られたしっぽでは、切り口がささくれたり、ねじれたり、つぶれたりして、この輪はできません。

つまり、切り落とされたしっぽそのものが、「自分で切った」ことを示す証拠になるのです。

では、太古のトカゲが切り落としたしっぽは、化石として見つかっているのでしょうか。

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