50代で「ロスジェネ支援プログラム」と言われても〜20年遅い国の対応

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政府が「就職氷河期世代(=ロスジェネ)支援プログラム」を新たに策定――。

今月11日以降、そんな報道が日本列島を駆け抜けた。

SNSなどでの反応は「今さら遅い」「もう何もかも手遅れ」といったものばかり。

私自身も一報を耳にした時の感想は「またか……」というものだった。

これまで幾度、「ロスジェネ対策」という言葉を耳にしてきただろう。そして何度、肩透かしをくらってきただろう。

2019年、この世代が「人生再設計第一世代」となんだか失礼な名前をつけられ、今後3年間で30万人を正社員化という目標を政府がブチあげた時は、「国がとうとう本気になってくれた」と喜んだ。この時点でロスジェネの多くは40代だったので相当な「手遅れ感」はあったのだが、ないよりずっとマシと自分に言い聞かせた。

が、数値目標まで掲げたこの一大プロジェクトが始まった翌年、コロナ禍が世界を襲う。

結果、3年後の達成率は「30万人」という目標の10分の1ほどだったそうである。

最近では、昨年(25年)4月、石破総理(当時)が「ロスジェネ」支援のため、関係閣僚会議を設置すると発表。

内容はと言えば、これまでの就労支援一辺倒から打って変わって「公営住宅の提供」や「老後に向けた資産形成」など、これまでとは明らかに一線を画すものが盛り込まれており私の期待は高まった。

そう、もう50歳にもなったら就労支援だけやったってダメなのだ。あらゆる方向からの支援が必要なのだ。そこで公営住宅なんて、願ってもないことではないか。石破さん、これは、これは期待できるぞ!

そんなロスジェネ対策は物価高や米不足と並んで昨年6月はじめ頃までは参院選の大きな争点と見られており、私もいろんな媒体から取材を受けるなどした。が、参政党の「日本人ファースト」という言葉が、すべてを蹴散らした感がある。

そうしてロスジェネ対策は遥か後方に追いやられたまま石破氏は辞任。10月、高市政権が始まったわけだが、「ロスジェネ」問題はそのまま消えたと思っていた。

が、このたび、しぶとく復活したわけである。

ここでロスジェネについておさらいしておくと、私も含むこの世代はすでに50代に突入しつつあり、現在の40代なかばから50代なかばを指す。「初老」と言っていい世代なのに30年以上、高卒・大卒時の名前のまま呼ばれているという不遇な世代だ。

ちなみにロスジェネは1700万人いるが、難しいのは、「勝ち組」も一定の割合いるということだ。厳しい就職戦線をくぐり抜けて正社員となった層の中には結婚し、家庭を持った者も多く、アラフィフの現在、子どもが大学を卒業したなんて人も少なくない。その一方で、50歳の現在まで一度も正社員になったことがなく、未婚・子なしという層もいるわけである。

あまりの落差だが、そのような世代内格差が当事者を苦しめ、さらに自己責任意識を強化する。

そんなロスジェネの投票行動は独特で、小泉郵政選挙の際は「既得権益打破」という言葉から、「正社員より非正規優遇」という言説を勝手に導き出して自民党を支持した者が多く、また10年くらい前だと維新支持者が多かった(あくまでも私調べ)。弱者を顧みないようなあり方が自己責任論を内面化した層に刺さったのか、障害者や高齢者など「わかりやすい弱者」が「ズルして楽して得して」て自分たちは税金を取られるだけで国は何もしてくれないという鬱憤が維新支持となったのか、そのあたりはわからない。

昨年の参院選では「日本人ファースト」という言葉に雷に打たれたような衝撃を受け、参政党を支持した者も多い。その動機として「移民」「外国人」への不安を語る者も少なくないのだが、心境を聞くと「なるほど」と思わされることもある。

いわく、自分たちのことは30年以上にわたり見捨てて何ひとつ助けてくれずマトモな職につけさせず人生を破壊したというのに、人手不足で困ったら外国人を受け入れて手厚く支援してしかも正社員化ってどういうこと? というようなものだ。

もちろん、それが排外主義的を正当化する理由には絶対なってはいけない。が、不遇な立場に置かれたロスジェネはこの30年で若さを失い、仕事で得られるはずの収入やスキル、立場、チャンス、そして社会的信用を失い(周りからの視線だけでなく、ローンを組めるかどうかなど)、それは結婚や家族形成という人生の大きな選択肢の喪失にもつながった。

それを「なかったこと」かのようにして、今になって「人手不足」だなんて何事だ、というのはその通りだと思う。

「ならばロスジェネが外国人が就くような仕事に就けばいい」と言われても、雇用する方はすでにアラフィフの、職歴が非正規だけの日本人より、若い外国人の方がいいのだろう。国もそれをよくわかっているのだろう。

このようなことから思うのは、ロスジェネ対策、20年前からなされていたらこの国の光景はまったく違ったということだ。

ということで、まずは「手遅れ感」を共有したところで今回発表されたロスジェネ支援の内容を見ると、石破路線を引き継ぐものであるっぽい。

従来の就労支援は当然あるとして、私が重要視していた「公営住宅」についての記述もある。具体的には公営住宅の年齢要件撤廃や、UR住宅の家賃減免など。

「老後に向けた資産形成」も残っている。が、そのひとつが「従業員が70歳まで働けるよう取り組んでいる企業への助成金」というところに、「今度は死ぬまで低賃金労働力として使い倒そうとしてる?」という不安が湧いてきたのも事実だ。いったいこれのどの辺が「資産形成」だというのか。そんな「ロスジェネ資産形成」の一環として先週、別ルートからやはり「これのどの辺が?」というものが報道された。

それはiDeCo(個人型確定拠出年金)などで50歳以上に追加拠出枠を設ける提言案があるとのこと。自民党の資産運用立国議員連盟(会長は岸田文雄元首相)などがまとめる提言案に盛り込まれており、そのものずばり「就職氷河期世代の資産形成を支援するため次の年金制度改革までの検討を政府に求める」ということらしい。

が、この報道を知ったロスジェネからは、「この世代にはもう年金とか払えないんで自己責任でやってくださいってこと?」「っていうか投資する金なんてどこにあるんだよ?」「そんなことより現金給付しろ」と怒りの声が上がっている。

ちなみにロスジェネ世代の国民年金の未納・免除率は5割超。厚労省の試算では、将来受け取れる年金が月10万円未満というロスジェネは約4割に及ぶという。またこの世代の「生活保護予備軍」はロスジェネ1700万人のうちの1割に及ぶ約170万人という試算もある。

常々、私は自分たちの世代は将来的に「65歳くらいになったら社会保障制度のお荷物とされ、その“始末”のために安楽死法案なんかが作られてそちらに誘導されるのではないか」という懸念を訴え続けてきた。今、その筋書き通りに道が整備されつつある気がして仕方ない。

この数年、「若者」の間で狭い物件や風呂なしアパートが人気など、貧しさゆえのことが「新たなトレンド」として語られる風潮がある。

が、十数年後、そんなトレンドの一貫として「ロスジェネの尊厳死」が取り上げられるのかもしれない。しかも「自ら安楽死・尊厳死をするのが大人の責任」みたいな語られ方とともに。

考えるほどに不安しかないが、まずはこの支援が身のあるものになるのか、しっかり見守っていきたい。 

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