ホルマリンで固めたブタの腎臓の標本です(FMVZ USP の獣医解剖学博物館で展示)。今回の研究では、こうしたブタの腎臓を使って、凍らせて保存し温め直す方法を試しました。Credit: Wagner Souza e Silva / Wikimedia Commons(CC BY-SA 4.0)臓器の「冷凍保存」を阻んできた大きさの壁
臓器を長く保存できないことは、移植医療の大きな足かせになっています。
研究チームは、保存時間の短さが、臓器の廃棄や、移植を待つ間に亡くなる患者を生む一因だと指摘しています。
さらに移植を受けた人は、拒絶反応を防ぐため、免疫を弱める薬を一生飲み続けなければなりません。
この薬には副作用があり、感染症やがんのリスクも高めます。
もし臓器を長く貯めておけるなら、臓器と患者を組み合わせる時間に余裕が生まれます。
移植の前に患者の免疫を整えておき、拒絶反応のリスクを抑えられる可能性も出てきます。
研究を共同で率いた移植外科医のエリック・フィンガー氏は、その未来をこう語ります。
「患者が臓器を待つのではなく、臓器が患者を待つことになるのです」
その切り札と期待されてきたのが、氷を作らずにガラスのような状態で固める「ガラス化」という方法です。
卵子や精子、受精卵の保存には、すでに使われている技術です。
液体窒素の中で幹細胞を冷凍保存しているところです(アレッサンドリアの病院の輸血センター。今回の研究とは別の施設です)。細胞の段階では、卵子や精子、受精卵の保存に、氷を作らずに固めるガラス化がすでに使われています。Credit: Ufficio Comunicazione, Azienda Ospedaliera SS. Antonio e Biagio e Cesare Arrigo, Alessandria, Biblioteca Biomedica Centr / Wikimedia Commons(CC BY-SA 4.0)しかし臓器まるごととなると、氷を防ぐ不凍液のような薬剤(凍結保護剤)が、細胞に強い毒にもなります。
しかも大きな臓器ほど、芯まで素早くむらなく冷やすことも、むらなく温め直すことも難しくなります。
研究チームは2023年に、最長100日保存したラットの腎臓を温め直し、ラットに移植することに成功していました。
ただしラットの腎臓は約1gにすぎません。
人の腎臓と大きさも見た目も近いブタの腎臓は約100gで、およそ100倍の重さです。
腎臓の重さと保存期間を、棒の長さで比べた図です。ブタの腎臓はラットの約100倍、今回いちばん長い保存はいまの限界の約240倍で、短い棒はほとんど見えません。Credit: ナゾロジー編集部(編集部が作成した図)ガラス化と、ナノ粒子で温め直す「ナノ加温」の組み合わせは、げっ歯類の腎臓では長期保存と移植を可能にしてきたものの、臨床で使う臓器ほどの大きさではまだ示されていなかったのです。






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