結党70年という自民党節目の年に初の女性総裁となり、日本憲政史上でついに「ガラスの天井」を破ることがほぼ確実視される高市早苗氏。しかしこれまで「男尊女卑の打破」を掲げていた勢力は、女性首相の誕生にむしろ嫌悪感をあらわにするような反応を見せています。そこにはどのような「思惑」があるのでしょうか。今回のメルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』では、フェミニズム勢の「理念と現実のねじれ」を指摘。さらにジェンダーギャップ指数の「恣意的な使われ方」を白日の下に晒しています。
※本記事のタイトルはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:【日本】日本初の女性総理誕生で露呈するフェミニストの欺瞞
日本初の女性総理誕生で露呈するフェミニストの欺瞞
● ガラスの天井を破った高市氏 「ジェンダー平等が後退」の懸念も
10月4日、自民党の総裁選挙で高市早苗氏が選ばれ、日本初の女性総理誕生の可能性が高まってきました。これに対して、予想されたことではありますが、リベラルメディアやフェミニズムの論客からは、高市氏が日本初の女性総理なることへの批判や怒りが噴出しています。
フェミニズム論客のシンボル的存在である上野千鶴子氏などは、X上で以下のように述べました。
初の女性首相が誕生するかもしれない、と聞いてもうれしくない。来年は世界経済フォーラムのジェンダーギャップ指数で日本のランキングが上がるだろう。だからといって女性に優しい政治になるわけではない。
初の女性首相が誕生するかもしれない、と聞いてもうれしくない。来年は世界経済フォーラムのジェンダーギャップ指数で日本のランキングが上がるだろう。だからといって女性に優しい政治になるわけではない。
— 上野千鶴子 (@ueno_wan) October 5, 2025
● https://x.com/ueno_wan/status/1974822690893742402
これまでフェミニズム論客の多くが、日本のジェンダーギャップ指数の低さを問題にしてきましたが、高市氏が総理になってジェンダーギャップ指数が上がることを喜ぶどころか、「女性に優しい政治になるわけではない」と、むしろ否定的です。
世界経済フォーラムが発表した2025年版「男女格差(ジェンダーギャップ報告)」によれば、日本は調査対象の146カ国中118位でした。この順位の低さを、リベラルやフェミニズムの方々は「日本では男女平等が実現していないことの証」としてきたわけですが、女性総理が誕生して順位が上がったところで、意味がないと言っているのです。
それなら最初から、ジェンダーギャップ指数など重視すべきではなかったですし、自分たちの主義と異なる女性が社会で活躍することを認めないという偏狭さは、「多様性」とは逆行する考え方です。
「女性たるもの、こういう考え方でなくてはならない」というのであれば女性の多様性を認めないことであり、非常に差別的だと言わざるをえません。「主義主張はまったく異なるが、初の女性総理への道が開かれたことは喜ばしい」くらい言えば、フェミニズムの懐の広さや多様性を示せたのに、かえって偏狭さが際立つことになってしまいました。
以前のメルマガでも紹介しましたが、この「ジェンダー格差指数」については、さまざまな指標があり、たとえば国連開発計画(UNDP)が発表した2025年のジェンダー不平等指数(GII)では、日本は172カ国中22位であり、不平等の少ない先頭グループに位置づけられているのです。
ところが、マスコミもフェミニストも、このことをほとんど報じず、118位という低い順位のことばかりを問題視してきました。順位が低いほうが、「こんなに女性は差別されている」という自分の主張に都合がいいからでしょう。
今回、高市総理の誕生で、このジェンダーギャップ指数が上昇してしまえば、リベラルやフェミニストが振り回してきた「伝家の宝刀」が、利用価値のないものになってしまいます。だからこそ、いまのうちにジェンダーギャップ指数が上昇しても、「喜ぶべき事態ではない」と先回りして否定しているのでしょう。
ジェンダー格差については、前述のように、さまざまな指標があり、上位のものもあれば、下位のものもあるというのが実情です。
その一方で、以前のメルマガでも述べましたが、幸福度の男女差に関する調査においては、日本の場合はほとんど同様の結果が出ています。それは、女性の幸福度が男性の幸福度を大きく上回っているということです。しかもその差の大きさは、世界で1位、2位になるほどの大きさです。
つまり、日本では男性の幸福度と女性の幸福度の差は、世界で1、2位を争うほど大きいということです。言い換えれば、日本では男性の幸福度に比べて、女性の幸福度が世界でもっとも大きい国の一つであるということです。
● 世界120位「女性がひどく差別される国・日本」で男より女の幸福感が高いというアイロニー
日本は世界で118位という、「世界でも顕著な男尊女卑の国」であるにもかかわらず、女性の幸福度が男性に比べて世界で最も高い国だということになります。となると、「男尊女卑」という現状を望んでいるのは一体誰なのか、という話になります。
● 男女格差ランキング120位は本当? 「女性が差別される国」日本で男より女の幸福感が高い皮肉
これだけ女性の幸福度が男性より高い国は、「女性に優しい政治」をしていないというのでしょうか?むしろ「女性に優しい政治」をすると、かえって幸福度は下がるのかもしれません。
ちなみに、日本が118位であることを理由として、「選択的夫婦別姓を進展させるべきだ」と主張するメディアやフェミニズム論客もいますが、そもそもランキングの要素に入っていないため、夫婦別姓にしたところで、ランキングが上がることはありません。見当違いか、あるいはわざとミスリードするための言説です。
前回の総裁選挙で高市氏が石破氏に敗れた歳、法政大学の前総長・田中優子氏は、「日本の歴史に残る最初の女性の首相がこの人だったら恥ずかしい」「安倍(晋三)さんが女装して現れた」「中は男でしょ。安倍さんでしょ」などと、かなり差別的な言葉で罵っていました。
● 法政大前総長の「女装」炎上発言、それでも問題視しない新聞の奇怪なダブルスタンダード
やはりフェミニストの方々は、みんな同じ考えを持っているようです。もちろん、高市氏の政策を批判するのは別に構いませんし、言論の自由として当然のことですが、これをジェンダー問題と絡めると、かなり問題です。
繰り返しになりますが、リベラル勢からすると、保守的な思想を持つ女性は「女性とはいえない」ということになるからです。
しかも田中氏の発言を批判するフェミ勢を聞いたことがありませんし、今回の上野千鶴子氏の件についても同様でしょう。
ここ数年、若い女性の「フェミニズム離れ」が言われていますが、こうした偏狭さに違和感を感じている人が少なくないのでしょう。
● 「フェミニズム離れ」する若い女子が抱いている違和感の正体
とはあれ、今回フェミニストの方々が、ジェンダーギャップ指数を「意味のないもの」と考え直してくれたのは、日本のためにも良かったことだと思います。恣意的な印象操作はもうできないはずです。
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