(CNN) 食品を配達する自律走行ロボットの前に立ちはだかって、通行を妨害した女性が逮捕された。
米ペンシルベニア州フィラデルフィア在住のペンシルベニア大学元教授、キャロリン・マービン氏(78)は先月14日、歩道上で昼食用の料理を運んでいたロボットに出くわし、進路をふさいで配達を数分遅らせた。マービン氏が配達ロボットを妨害したのはこれが初めてではなく、この地域で運用が始まって以来の習慣になっていた。
ただし逮捕されたのは今回が初めて。「私にはロボットより大きな権利があると思いこんでいた」と笑う。
料理宅配サービス大手の米ウーバーイーツは今年3月、配達ロボットを導入する4番目の都市として、フィラデルフィアでの運用を開始した。だれもがこれを歓迎したわけではない。フィラデルフィアや他の都市で、人々がロボットの上に座ったりいたずらをしたり、蹴りつけたりする場面をカメラがとらえた。
マービン氏は、単独の抗議行動が及ぼせる影響は限られていると指摘。「私にも生活がある。ロボットの前にいつまでも立っていられるわけではない」と語った。ロボットに出くわして、それがちょうどいいタイミングなら、10~15分ほど進路をふさいで遅らせることもあると話す。
この行動がもたらす唯一の被害は、オフィスで働く人々の昼食が「せいぜい15分ほど遅れる可能性もある」ことだと、同氏は言う。
マービン氏は自身の行動を、配達ロボットが引き起こす問題に対する象徴的な抗議活動と位置づける。低所得層の配達員が職を失う心配や、ロボットが歩道上で物理的な危害を及ぼす恐れ、内蔵カメラによるプライバシー上の懸念といった問題だ。
さらに「私には公共スペースでの企業の権利乱用に抗議するという、合衆国憲法で保障された権利がある。ロボットが占領している公共スペースのことだ」と述べた。同氏はこれまでに公民権や人工妊娠中絶、黒人の権利を擁護し、湾岸戦争やベトナム戦争の終結を求める抗議活動を展開してきた。ロボットへの抗議もその延長線上に位置づけ、「政府が国民の意思に耳を傾けるよう、私たちが取るべき行動だ」と主張する。
ロボットの前に立っていると通行人から何をしているのかと尋ねられ、そこから生産的な対話が生まれたという。逮捕されるとは考えたこともなかった。「人を妨害していたわけではなく、機械を妨害した」だけだからだと話していた。
先月14日も、インフルエンザの予防接種を受けた後の買い物帰りにロボットを見かけ、その前に立った。人通りの多い地区で、周りにいつもより多くの人が集まり始めた。このうち一人が警察に通報したのではないかと、マービン氏は振り返る。警察は同氏に手錠をかけてパトカーの後部座席に乗せ、秩序を乱した疑いで裁判所への出頭命令を出した。
友人の一人は、同氏が「資本主義を妨害したために、秩序を乱した容疑をかけられた」と表現した。
フィラデルフィア警察は、「配達ロボットに関する器物損壊罪の通報を受けて出動した」と述べた。警官らが現場に駆けつけると、「女性が配達ロボットの通行を妨害していた」「道をあけるよう繰り返し指示したが、女性は従おうとしなかった」という。
マービン氏は逮捕された後になって、ロボットを保護する法律の基盤を詳しく知った。ペンシルベニア州議会は20年、自律走行の配達ロボットを「パーソナル配送デバイス(PDD)」と呼び、乗り物でなく歩行者と見なす法案を可決していた。民主党や労働組合、障害者支援の活動家らは、雇用を奪い、子どもや歩行者を危険にさらす恐れがあるとして反対したが、共和党は技術的進歩の一つだとして期待感を示した。
フィラデルフィアで人身傷害を扱う弁護士、ジョン・マッティアッチ氏によると、この法律ではロボットが横断歩道を渡る時、歩行者が渡る場合と同じように車は停止する義務がある。とはいえ、理論上は人間が最優先だ。「PDDは歩行者や歩行者ゾーンの自転車に道を譲らなければならない」と、同氏は指摘した。CNNはウーバーイーツにコメントを求めたが、返答は得られていない。
マービン氏は配達ロボットの普及や法的保護について、機械や技術が日常に忍びこんでくる例の一つだと語った。「私たちはその昔、道路を車に譲った。同じように歩道を機械に譲るべきではないと考える」
同氏はさらに「機械は往々にして私たちの生活を侵食する。公共スペースは侵食が一番目立つ場所だ。それがエスカレートするのを、多くの人が後押ししたがっている」
私たちが日常で遭遇するテクノロジーの大半は目に見えにくい。その例として、猛烈な勢いで進むAI(人工知能)の導入や、SNSに表示される画像やストーリーを決める不透明なアルゴリズムなどがある。一方、ロボットはテクノロジーの支配がはっきりと目に見える象徴で、反テクノロジーを叫ぶ勢力の標的になりやすい。マービン氏は自身の抗議活動について、「通常なら見えにくいものを見せて、問題を提起する」行為だと説明した。逮捕を経験してもまだロボットの妨害を繰り返すかという質問にはひとこと「もちろん」と答えたが、今後は警察に気をつけるという。

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