進次郎構文「力をパワーに!」の破壊力。有権者どころか全哺乳類に寄り添う“名言”を繰り出せる進次郎の天才的な魅力

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数々の迷言、もとい名言で、ネット上でも大人気を誇る小泉進次郎氏。しばしば「中身の無さ」を指摘される進次郎氏が自民党総裁の座に就くことに不安を感じる声も少なくありませんが、心理学者の富田隆さんは異なる視点を提示します。今回のメルマガ『富田隆のお気楽心理学』では富田さんが、「からっぽ」だからこそ現代政治において求められるリーダーとなり得る理由を解説。また、進次郎氏が首相としてトランプ大統領と対峙した際に起こり得る、「日本にとって好ましい流れ」についても言及しています。
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:裏切りの時代の『からっぽ』キャラ

誰もがみんなハッピーに?裏切りの時代の「からっぽ」キャラ

一度聞いたら癖になる。進次郎の「言葉の魔力」

あなたは、このスローガン?を叫んだ人をご存知ですか?

「力をパワーに!」

聴いた途端に、噴き出してしまいます。どう考えても馬鹿々々しいのですが、妙な「迫力」があって、何となく力が湧いて来るから不思議です。

それなら、これはどうでしょう?

「夜景を見るなら、断然夜をオススメしますよ」

ロマンチックな「夜景」で盛り上がるはずの二人のデートを、インバウンドの観光バス軍団でブチ壊しにしてしまうような破壊力が何ともセクシーです。

さらに、心底自信をもって「オススメ」しているところが、また嬉しくなりますね。

これでも、発言の主がどなたか分からない方のために、もうひとつ。

「誕生日なんですね。私も誕生日に生まれたんです」

政治家は民衆に共感し連帯することが必要です。そこで、出生地が同じであるとか同世代であるとか、何か共通点を探して、それを糸口に「あなたも私も同じ〇〇」というような「仲間意識」を強めようと必死になるのです。

確かに、私たち人間は、いや、ネコもイヌもウサギも「誕生日に生まれ」ます。これは、哺乳類最強の「連帯ツール」かもしれません。

こうした数々の「名言」を残したのは、現在、自由民主党の総裁選挙を闘っている小泉進次郎農水大臣です。

氏は政治家である以上にギャグの天才です。別に、笑わせようという意図はなく、自然体で息を吐くようにギャグを繰り出すのが魅力です。

今日このコーナーで使わせていただいた「名言」は、「こばちゃん」というインフルエンサーがネットに掲載した「【トートロジー】進次郎構文 まとめ(50選)」(「note」2024.6.19)という記事からの引用です。

「トートロジー(tautology)」とは、「同語反復」や「同義語反復」を用いたレトリック(修辞法)のことです。

確かに、進次郎さんの名言の中には、「このプレゼント、頂き物なんです」というように、同義語を反復するものが多く、しばしば、「A=Aと言っているのだから間違ってはいないが、何も言っていないのと同じだ」と指摘されます。

最近では彼独特の言い回しは「進次郎構文」などと呼ばれるようになりました。

何も言っていないのに、「何かを言っているように感じさせる力」というのは、魔力というかちょっとオカルトめいていて、すごい力だと思いませんか?

「からっぽ」で「軽い」という最強の「進次郎神輿」

私自身は「進次郎ファン」でも「アンチ進次郎」でもありません。そもそも、現在のような名前だけの「自由民主党」がどうなろうと知ったことではないのです。

滅びるものは滅びれば良い。いわゆる「55年体制」などという戦後の遺物には、さっさとご退場いただきたい。

親父の小泉信一郎氏が「自民党をぶっ壊す!」と宣言して総理大臣になったのですから、息子の進次郎さんが本当に自民党をぶっ壊してくれれば、それは本望でしょう。

親の夢を息子がかなえる。

ロマン溢れる浪花節。

進次郎さんは、世にも希なる「親孝行息子」です。

政治向きの話を棚上げにすれば、キャラクターとしての進次郎さんは大変に「興味深い」のです。とにかく笑えます。とにかく楽しめます。

彼が「トートロジー」を駆使することから、中身が無い「からっぽ」な人と評する人が少なくありません。

私は彼が「からっぽ」な人だとは思っていませんが、かくも「からっぽ」であるかのように見える人が、政治的なアイコンとして珍重される現象そのものが、いかにも日本的でもあり、現代風でもあると感心しているのです。

「担ぐ神輿は軽い方が良い」などという言葉があるように、総理大臣に限らず、日本では上に立つものは「軽い」方が良いのです。

部下の言うことは何でも「オウ、オウ」とうなずいて聞き、部下が上げて来た書類には片端から「めくら判(編註:今日の人権意識に照らして不適切と思われる表現がありますが、取り扱っているテーマや文脈から差別意図はないものと判断し原文を尊重しました)」を押す、そんな大臣が、省内の評判も良く、しばしば「名大臣」と称えられたりします。

ですから、「からっぽ」で「軽い」(と思われている)進次郎さんは、日本の伝統から言えば、まさに理想的な上司、あるいは君主ということになるのです。

進次郎が兼ね備えている「からっぽさ」ゆえの強み

また、「からっぽ」つまり「空(くう)」であることは、どのような理想も陰謀もペロリと飲み込むことができる、という便利さ?をも兼ね備えています。

進次郎氏が「空」であるのに呼応して、彼に政策や答弁などを手渡す官僚やブレーンたちもまた、同じように心の裡に「空」を抱えているはずです。

と言うのも、前回もお話したように、現在、ヨーロッパやアメリカなどの先進諸国、それもエリート層の間には病的な「ニヒリズム」が蔓延しているからです。

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人間を含むあらゆる物事に「価値」を認めず、従って人生にも「意味」を求めることなく、夢や理想とは無縁に刹那的に生きるのが「ニヒリズム」です。

価値を否定すれば、信ずることができるのは快不快の感覚や反射的に生じる感情だけです。現代社会において、暴力と「金(経済力)」は、刹那的な快楽をもたらす最高位の「力」ですから、彼らが「今だけ、金だけ、自分だけ」という信仰告白に至るのは当然の帰結なのです。

G7の末席に連なる日本の学歴エリートたちも、少なからず、西欧流「ニヒリズム」の洗礼を受けているはずです。そうしたエリート官僚やエリート財界人たちにとって、内面に巨大な「空」を抱えた(ように見える)進次郎氏は、理想的なリーダーなのかもしれません。

しかも、進次郎さんは、自分が「からっぽ」であることを否定せず、柔軟に周囲の意見や提案を受け入れます。もっと言えば、他人からバカにされても平気なのです。

たとえば、「調査では増えているから、増えたかどうか調査する」とか、今時「プラスチックの原料って石油なんですよね。意外にこれ知られてないんですけど」なんてドヤ顔で言ったら、普通、バカにされますよね。

さらに、「毎日寒いですよね。寒いってことは冬だからです」とか「ハローワークに午後から行く予定、ということは無職なんですね」なんて、しみじみ言われたら、「この人だいじょうぶかな?」と心配になってしまうはずです。

それでいて、突然、妙に熱くなって、「日本で1分が過ぎている間にもアフリカでは60秒が経過しているんですよ」なんて切羽詰まった顔でアジ演説を始めるわけです。

そうかと思えば、「未成年飲酒なんて子供のすることですよ」と鼻で笑う。

ですから、お勉強に青春を捧げて来た受験エリートの官僚たちが、進次郎氏に対してなら、内心で優越感を抱きながら安心して仕えることができるのです。

周囲にあまり矛盾を感じさせない進次郎の「優秀」さ

ニヒリズムが蔓延し、世界が理想よりも「力」で動く時代の政治は、「裏切り」と「手の平がえし」が日常茶飯事となるでしょう。「一貫性」などというものは価値を失うのです。

「君子は豹変す」と言えば聞こえが良いですが、「手の平がえし」が上手で、周囲にあまり矛盾を感じさせないという点でも、進次郎氏は優れています。

彼が得意とするレトリックは「トートロジー」だけではありません。たとえば、「辞任するとは言ったが、辞任するとは言ってない」などと、不思議なことを堂々と言ってのけるのです。

また、何を言っているかよく分からなくても、独特な「説得力(というより雰囲気?)」で、聴衆を納得させてしまいます。たとえば、

「政治には非常に多くの問題があり、時には退屈です。気候変動のような大規模な問題に取り組むとき、それは楽しくなければならず、クールでなければなりません。それもセクシーでなければなりません。それをどういう意味かって説明すること自体がセクシーじゃないよね」

これ以上話すとセクシーじゃなくなる、と強弁して、話を打ち切るところは見事です。後になって、「何でセクシーでなきゃいけないの?」「何の話だったっけ?」と疑問が頭をもたげる人は10人に1人か2人でしょう。

そして、「手の平がえし」をした後は、良心が痛むものですが、そんな時には、これまた進次郎氏の独特な「説得力」で、「真摯な反省」をして見せれば良いのです。

「反省しているんです。ただ、これは私の問題だと思うが、反省していると言いながら、反省している色が見えないというご指摘は、私自身の問題だと反省しています」

実際、こういう反省の弁を聴いて、彼を正直で真面目な人だと感じる人もけっこういるのです。

「裏切り」が日常化し、政策がコロコロと変わる「日和見政治」で肝心なのは、「説得力」なのです。

しかも、大衆は「論理的な整合性」や「一貫性」、「客観的なデータ」などで説得されるわけではありません。大切なのは「印象」や「雰囲気」、つまり「非言語的」なメッセージに潜む「心地良さ」なのです。

だから、彼のような人に初めて声をかけられれば、多くの人たちは嬉しくなってしまいます。

「初対面の時思ったんだ。まるで初めて会ったみたいだって」

進次郎が相手ならトランプが引っ込める攻撃的な要求

仮に、彼が総理大臣になれば、トランプ大統領のような「ディールの達人」と相対することになるわけです。

彼のように「からっぽ」な人間が、トランプ氏と交渉をすることができるのだろうかと、今から本気で心配する人も少なくありません。

確かに、一対一になった時には、官僚やブレーンが渡す「カンペ」も役に立ちません。通訳は残すにしても、基本トランプ氏対進次郎氏、個人と個人の話し合いや交渉になるわけで、これを心配するのももっともです。

ただ、私は、意外と面白い展開になるのではないかと、むしろ楽しみにしているのです。トランプ氏の自信たっぷりで強引な提案に対して、進次郎氏は意味不明で素っ頓狂な想定外の「返し」をするのではないでしょうか。たとえば、

「ステーキやっぱり食べたいですね。毎日でも食べたいね。毎日でも食べたいということは、毎日でも食べているということではないです」

「できっこないことに挑むのは、チャレンジングでいいじゃないですか」

「水と油も混ぜればドレッシングになる」

「何事も一回やってみてください。次にやる時は二回目になりますから」

こんな「迷言」を何回も聞かされている内に、トランプ氏の頭には「?」がいっぱいになり、「これは、東洋で言う『禅問答』に違いない」と誤解するかもしれません。

進次郎氏が、何か意味深く哲学的で難解な「謎かけ」でもしてきたのではないかと、勝手に誤解する可能性は充分あります。

そうなれば、「うかつなことを言えば軽蔑される。こちらの未熟さを暴露されてしまう」と疑心暗鬼になり、攻撃的な要求は引っ込めて、具体策をめぐる交渉は部下にまかせることにするでしょう。

そうなれば、結局、進次郎氏相手に予定されていた政治的なディールは棚上げとなり、社交辞令や、個人的な親睦に終始するはずです。

いくら何でも、こんな「瓢箪から駒」のような上手い話は無い?

まあ、そんなわけで、マスメディアを使った「世論誘導型政治」の終焉が近付いている現在、「55年体制」の幕引き役を演じる政治家として、進次郎さんはまさに「はまり役」ではないかと愚考する次第です。

とは言え、昨今、「それにしても酷過ぎる」という声があちらこちらから聞こえて来ますし、珍しく「文春砲」までも発射されていますから、「小泉進次郎総理大臣」は幻に終わるのかもしれません。

最初にも書きましたように、そんなことはどうでも良いのです。

興味深いから書いているだけ、あくまでも心理学的な「好奇心」がこれを書かせています。

(メルマガ『富田隆のお気楽心理学』『富田隆のお気楽心理学』9月28日配信号より抜粋。同号の「ガラスの向こうに幻が見える」「月は神秘への扉」はご登録のうえお楽しみください。初月無料です)

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