親子の間で起こる「ガスライティング」とは
親子の間で起こる「ガスライティング」とは / ※画像はイメージです。Credit: Generated by Codex (gpt-image), ナゾロジー編集部ガスライティングとは、ある人が相手に、自分の現実のとらえ方や記憶、感情を疑わせるように仕向ける、心理的な虐待や操作のことです。
心理学者たちは、ガスライティングは力の差がある関係で起こりやすく、たいていは力の強い側が弱い側に仕掛けると指摘してきました。
そこで注目されるのが、親と子の関係です。
親は誰にとっても大切な相手であり、子どものうちは、親と子の力の差がとても大きい関係でもあります。
ところが、親子の間のガスライティングは調べるのが特に難しく、研究はまだほとんど進んでいませんでした。
研究チームは、中国の文化では親子関係が「道徳的な秩序や親孝行、親の権威を重んじる仕組み」に深く組み込まれているため、親によるガスライティングが社会の中で受け入れられやすいかもしれないと考えています。
さらにチームは、ガスライティングには、相手の記憶や感情を揺さぶるだけでなく、関係のこじれを相手自身のせいだと思い込ませる面もあると指摘しています。
この「自分のせいだと思い込む」面は、1996年に出たセオドア・ドーパット氏のガスライティングの本でも、くわしく取り上げられていました。
これまでの研究でも、ガスライティングを受けた経験とうつの症状とのつながりが報告されています。
そこでチームは、ガスライティングがうつにつながる理由の一つは、関係がぎくしゃくした原因を相手ではなく自分のふるまいに求めてしまう「自責」にあるのではないかと考えました。
親からの心理操作は、本当に子どもを自責へ、そしてうつへと向かわせているのでしょうか。
親に心を揺さぶられた若者は、うつになっていたのか?
親に心を揺さぶられた若者は、うつになっていたのか? / ※画像はイメージです。Credit: Generated by Codex (gpt-image), ナゾロジー編集部チームはまず、ターガー=シャフリル氏らが作った、ガスライティングを受けた経験を測る質問票(GREI)を中国語に訳しました。
そして、訳した質問票が測りたいものをきちんと測れているかをテストで確かめ、使える水準だと確認しています。
そのうえで、中国の若者606人を対象に、同じ人たちを時間をおいて調べる縦断研究(時間の流れに沿って変化を追う調査)を行いました。
若者たちには、親からのガスライティングの経験に加えて、親子関係のこじれを自分のせいだと考える度合いと、うつの症状についても答えてもらいました。
その結果、親からガスライティングを受けていた若者ほど、親子関係がうまくいかないのは自分のせいだと考える傾向が強いことが分かりました。
ガスライティングと、関係のこじれを自分のせいにする考え方とのつながりを示したのは、この研究が初めてです。
一方で、意外な結果も出ています。
親からのガスライティングとうつの症状とのつながりは、統計的にはっきりした差とまでは言えませんでした。
「ガスライティングが自責を通じてうつにつながる」という道すじも、偶然では片づけられないほどはっきりとは確かめられませんでした。
論文の著者たちは、自責が親のガスライティングと子どものうつの間をつなぐ「控えめな仲立ち役」としてはたらいていたと述べています。
しかし、この研究を紹介した海外の心理学の解説記事は、この書き方は分かりにくく、多くの心理学者は「仮説は確かめられなかった」と判断するだろうと指摘しています。
心理学では、本当はつながりが無いのに偶然その結果が出る確率が5%未満かどうかを、はっきりした差かどうかの目安にするのが一般的だからです。
それでも解説記事は、この研究には多くの長所があると評価しています。
親子の間のガスライティングを調べた最初期の研究の一つであり、質問票を中国の若者向けに整える手間もかけているからです。
また、一つの研究だけで結論が決まることはなく、今回はっきりしたつながりが出なかったからといって、ガスライティングが決してうつにつながらないという意味ではありません。
少なくとも、親からの心理操作が、子どもの「自分が悪い」という思い込みと結びついていたことは、見過ごせない手がかりと言えるでしょう。
今夜「言った・言わない」でもめたら、自分を責める前に、まずはスマホのメモ帳を開いてみるのが平和への近道かもしれません。







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