「給付金から国債まで」オンチェーン化の検討拡大、金融庁が議事録を公表

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この記事の要点

  • 金融庁が初のオンチェーン金融フォーラムの議事録を公表
  • 給付金・国債・日銀当預へステーブルコイン等の検討が拡大

給付金にステーブルコイン、金融庁が議事録公表

金融庁は2026年10月19日、「AI時代を見据えたオンチェーン金融フォーラム」の第1回会合(9月30日開催)について、議事録を公表しました。

議事録によると、デジタル庁は子育てや食料品など使い道を限定した給付金に、ステーブルコインやトークン化預金を利用できるか、技術面から検討する方針を示しています。

財務省も国債のブロックチェーン対応に向けた有識者研究会を10月に始めると報告しており、政府内で給付金や国債を対象とするオンチェーン金融の検討が具体化しつつあります。

会合にはデジタル庁・財務省・日本銀行・全国銀行協会(全銀協)が参加し、座長を務める片山さつき内閣府特命担当大臣(金融)は、2027年初めに中間整理と官民連携のロードマップをまとめる考えを示しました。

給付金・国債・日銀当預、オンチェーン化が具体化

24時間決済と取消機能を両立へ

各省庁の報告に先立ち、金融庁の堀本資産運用・保険監督局長は、フォーラムで重視する観点として、「実取引と一体になったオンチェーン金融の発展」「既存決済との最適な組み合わせ」「決済基盤の安定性・安全性の確保」という3点を挙げました。

堀本局長は、RWA(現実資産)のトークン化や物流・商流と決済の連携を推進するとともに、24時間の即時決済が可能なオンチェーン決済と、取引の取消しや資金回収に強みを持つ既存のオフチェーン決済を組み合わせる「ベストミックス」を追求する姿勢を示しています。

その前提として、オンチェーン金融の発展が金融システム全体に及ぼす影響を見極める必要があると説明し、世界のステーブルコイン発行残高が約3,100億ドル(約49兆円)に達し、その約83%をドル建てステーブルコインが占める市場の現状にも言及しました。

国内では、金融庁の決済高度化プロジェクト(PIP)による支援案件が4件に達しており、9月29日には貿易取引の資金決済にステーブルコインを利用する実証実験への支援決定が発表されています。

給付金の使途、プログラムで制限へ

各機関の取組に関する報告では、デジタル庁の蓮井戦略・組織グループ統括官が、ブロックチェーンのプログラマビリティを利用して給付金の使途を制限する構想を説明し、デジタル本人確認やウォレットに関する知見を生かして給付行政の信頼性向上と効率化を図る考えを示しました。

デジタル庁は制度面でも、ステーブルコインを金銭に準じて扱う可能性などを「AIデジタル改革推進会議」で議論する方針を示しており、財務省の阿久澤理財局長は、国債市場への影響や参加者のニーズを見極めながら、国債のオンチェーン対応を検討すると述べています。

公的資金を扱う決済基盤については、日本銀行の神山理事が、日銀当座預金をブロックチェーン上の決済に利用するための技術検証「DLT連携サンドボックス」を紹介するとともに、商業銀行預金と中央銀行預金を共通の分散型台帳基盤で扱う国際プロジェクト「アゴラ」への参加にも言及しました。

民間銀行側では、全銀協の黒澤企画委員長が、幅広い金融機関の参加方法や次世代の銀行間決済基盤を議論する検討会の設置を報告しており、金融庁の飯塚審議官はアジアの官民による政策対話の場として、2027年2月に「アジアデー2027」を開催する意向を示しています。

機関 報告した主な取組
デジタル庁 給付金へのステーブルコイン・トークン化預金の利用可能性を技術検討
財務省 国債のオンチェーン対応を議論する有識者研究会を10月に開始する方針
日本銀行 日銀当座預金の決済利用に向けた「DLT連携サンドボックス」を推進
全国銀行協会 次世代の銀行間決済基盤を議論する検討会を立ち上げ
金融庁 国際連携に向けて「アジアデー2027」を2027年2月に開催する意向

「鶏と卵」と海外依存、専門家が指摘

各機関の構想に対し、元日銀でブランズウィック・グループの宇井理人氏は、インフラが整わないためユースケースが生まれず、ユースケースが見えないためインフラの構築も進まない「鶏と卵」の問題を指摘し、個別の施策を小規模に始めて検証を重ねる進め方を提言しました。

東京大学の神田秀樹名誉教授は、オンチェーンとオフチェーンの最適な組み合わせが変化し続ける「ムービングターゲット」だと強調し、PwC Japan有限責任監査法人の鈴木智佳子氏も、プログラムによる統治のブラックボックス化が「信頼の空白」を生むとして、本人確認から決済まで追跡できる証跡の確保を求めています。

技術面では、東洋大学の野崎浩成教授が、完成度の高い既存システムほど置き換えが難しいと指摘し、日銀当座預金のトークン化を有力な選択肢と評価したほか、早稲田大学大学院の根本直子教授は、国内銀行が出遅れれば日本やアジア企業の決済業務が海外に移るおそれがあると懸念を表明しました。

上智大学の森下哲朗教授はAIやブロックチェーンの中核技術を海外に依存するリスクを問題提起し、欠席した日本総合研究所の翁百合シニアフェローも意見書で、AIエージェント同士が決済する時代を見据え、決済主体を正しく認証する仕組みの必要性を訴えています。

2027年初めに中間整理、官民連携へ道筋

今回のフォーラムの土台となるのは、政府が2026年7月21日に策定した「成長投資を促進するための金融戦略」で、AI時代を見据えたオンチェーン金融の推進を金融インフラへの投資施策に位置づけています。

金融庁はフォーラムと並行して、オンチェーン金融の環境整備とAI等の健全な利活用に関する研究会でも議論を進める方針で、有識者から指摘された決済基盤の安全性や利用者の信頼確保なども、社会実装に向けた課題となっています。

片山大臣は、2027年初めに関係省庁の検討結果を踏まえた中間整理と官民連携のロードマップを作成する考えを表明しており、給付金や国債などの構想が実際の制度設計や実証計画にどう反映されるかが、今後の議論で問われることになります。

※価格は執筆時点でのレート換算(1ドル=158.55 円)

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Source:金融庁オンチェーン金融フォーラム(第1回)議事録
サムネイル:AIによる生成画像

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