米下院歳入委「仮想通貨税制8案」を一斉審議、課税ルールの空白解消へ

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この記事の要点

  • 米下院歳入委員会が仮想通貨税制8法案の公聴会を開催
  • 8法案で課税ルール整理へ、デジタル資産税制改革が前進

米議会、仮想通貨課税ルール整備に着手

米下院歳入委員会は2026年6月9日、デジタル資産課税をめぐる立法公聴会をワシントンD.C.の下院議員会館で開催しました。

公聴会では、ネットワーク手数料やステーブルコインの損益の扱い、マイニングステーキング報酬の課税区分などを含む計8本の法案・討議草案が審議されました。

これらの法案群について委員会は、仮想通貨(暗号資産)での少額決済のたびに発生する申告負担を軽減し、日常的な利用を後押しする狙いがあると説明しています。

ジェイソン・スミス委員長も発表に寄せた声明で「仮想通貨を保有する6,000万人超の米国人にとって、不明確な税ルールという現状は容認できない」と述べ、税制の近代化を急ぐ考えを示しました。

仮想通貨課税の8法案、与野党の全提案

8本の法案とその概要は公聴会に先立って歳入委員会が公表されており、共和党議員による6本の法案と、民主党側の討議草案・修正案で構成されています。

法案・草案(提出者) 主な内容
H.R. 9178(ヤキム議員) ネットワーク手数料とステーブルコインの損益を課税報告から除外、簡易会計制度を創設
H.R. 9175(ケアリー議員) マイニング・ステーキング報酬の課税区分を明確化
H.R. 9173(ケリー議員) 仮想通貨寄付の鑑定評価要件を免除
H.R. 9176(カストフ議員) 伝統的金融資産向けの免責ルールと時価会計を仮想通貨に拡大
H.R. 9172(アリントン議員) ウォッシュセール規制など租税回避防止規定を仮想通貨に適用
H.R. 9174(ビーン議員) 1回限りの自主開示プログラムの創設を財務省に指示
討議草案(民主党) プエルトリコ源泉所得ルールを利用した課税回避を禁止
修正案(ホースフォード議員) 課税繰延の選択を5年に制限、一部の寄付控除に上限

コーヒー1杯に2件の申告、H.R.9178が解消

このうちルディ・ヤキム議員の「H.R. 9178(デジタル資産保有者の税務書類削減法案)」は、ネットワーク手数料の支払いに伴う損益と、規制対象の米ドル建てステーブルコインの損益を課税対象から除外すると定めています。

同法案には、取引ごとの損益計算に代えて年1回の合算計算を選べる簡易な会計制度の創設も盛り込まれており、スミス委員長は冒頭声明で、これらの措置が納税者の報告負担を大幅に減らすと評価しました。

同氏はこの声明で「5ドル(約800円)のコーヒーを仮想通貨で買うたびに2件の税務書類が発生し、IRS(米内国歳入庁)には年間数億件の1099-DA様式が提出されている」とも述べています。

スミス委員長は、現行の税務負担が仮想通貨の日常利用をほぼ不可能にしていると指摘し、米国内の利用実態として、保有者の31%が店舗での決済利用を希望している調査結果にも言及しました。

マイニング・ステーキング報酬の課税区分

報酬の扱いでは、マイク・ケアリー議員の「H.R. 9175(マイニング・ステーキング税務明確化法案)」が、新規発行された仮想通貨の取得を通常所得と確認したうえで、自ら生み出した財産に近い取扱いを選べる制度を設けています。

同法案には、IRSの指針に沿う形で、デジタル資産を保有する信託が税務上の地位を保ったままステーキング報酬を受け取れる規定も盛り込まれました。

寄付の場面では、マイク・ケリー議員の「H.R. 9173(デジタル資産寄付の慈善控除法案)」が、信頼できる市場価格で価値を判定できる仮想通貨について、控除申請前に求められてきた鑑定評価の要件を免除する規定を置いています。

さらにデビッド・カストフ議員の「H.R. 9176(PAR法案)」は、外国人による米国市場への投資を容易にする措置と、資産の貸付時に課税を生じさせない措置の2つの免責ルールを仮想通貨にも広げると明記しました。

同法案ではこのほか、ディーラーやトレーダーが類似の金融資産と同様に時価会計(保有資産を市場価格で評価する会計処理)を使うことも認められています。

ウォッシュセール適用と1回限りの自主開示

こうした優遇措置と並行して、ジョディ・アリントン議員の「H.R. 9172(既存租税回避防止規定の適用法案)」は、損失計上を狙った売却と買い戻しを制限するウォッシュセール規制の適用対象を仮想通貨に広げると定めています。

同法案は、保有資産を実質的に売却したとみなして課税するみなし売却規制もあわせて適用し、類似の金融資産より有利な取扱いを許す抜け道を塞ぐと委員会は説明しました。

過去の申告漏れへの対応では、アーロン・ビーン議員の「H.R. 9174(自主開示プログラム法案)」が、申告を怠った納税者の罰則を軽減する1回限りの自主開示プログラムの創設を財務省に指示しています。

ただしスミス委員長は冒頭声明で「この制度を利用しても延滞利息や未納の税額そのものは免除されず、効果は罰則の軽減と簡素な是正手続きにとどまる」と強調しました。

野党側からは、プエルトリコ源泉所得ルールの不適切な解釈を利用した課税回避を明確に禁止する討議草案「デジタル資産タックスシェルター終結法案」が示され、長期居住者には影響を及ぼさない線引きが盛り込まれています。

またスティーブン・ホースフォード議員の修正案は、マイニング・ステーキング報酬の課税繰延(課税の先送り)の選択を5年間に制限し、広く取引されていない仮想通貨の寄付控除を慈善団体の売却受領額までに抑えるよう提案しています。

6,700万人の保有者、不明確な税制の代償

こうした与野党の提案が出そろった背景について、スミス委員長は冒頭声明で、最新の調査では米国人の4分の1にあたる6,700万人超が仮想通貨を保有し、2020年代初頭の3%から急増していると明らかにしました。

同氏は、仮想通貨の時価総額が2兆ドル(約320兆円)を超えている一方で、同じ規模を持つ他産業のほぼすべてが明確な税制の下で運営されているとも指摘しています。

そのうえで、シンガポールやスイスがすでに包括的な税制を導入済みである点に触れ、米国が「世界のデジタル資産の首都」であり続けるには議会の早期の立法が欠かせないと訴えました。

8法案の行方、次の関門はマークアップ

米議会では税制のほかにも、規制当局の管轄を定める市場構造法案「CLARITY(クラリティ)法案」をはじめ、仮想通貨関連の立法議論が複数のテーマで進められてきました。

こうした議論を背景に開かれた今回の公聴会は、招待された証人のみが口頭証言を行う形式で実施され、一般からの意見書は2026年6月23日まで受け付けられています。

各法案はいずれも委員会での審議段階にあり、今後はマークアップ(修正審議)や本会議採決に向けた手続きが進められます。

※価格は執筆時点でのレート換算(1ドル=2兆ドル)

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Source:米下院歳入委員会 公聴会告知 / 委員会発表 / スミス委員長冒頭声明
サムネイル:AIによる生成画像

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