参院選の大敗を受け7月28日に行われた自民党の両院議員懇談会でも、多くの議員から退陣要求を突きつけられた石破首相。「石破おろし」の嵐は日に日に強まるばかりの様相を呈しています。かような状況の中で「石破首相退陣には反対の立場を取りたい」とするのは、メルマガ『8人ばなし』著者の山崎勝義さん。山崎さんは今回の記事中、自身が強くそう思う2つの理由を上げるとともに、「内々の都合」に走る自民党に批判的な視線を向けていますす。
※本記事のタイトルはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:比較第一党のこと
比較第一党のこと
参院選が終わった。
総理においては「比較第一党」という、あまり聞き慣れない憲政用語を以て自民党を呼ばざるを得ない選挙結果となってしまった。
こうなると政局が始まる。
一国民としては少々煩わしさすら感じるが、それは自民党内々のことである。まあ好きにすればよろしかろう。ただ一言加えると、選挙のたびに勝てて(過半数を取れて)当たり前と思うことこそ55年体制の驕りであろう。時代は令和である。アナクロも甚だしい限りだ。
畢竟、民主主義における議会運営の本質は調整である。もっと有体に言えば、多数派工作である。これは単独で過半数の議席を持つ政党でも同じである。
石破政権が何一つ成果らしい成果を出せなかった原因は実にここにある。同じ自民党内でも右と左とでは随分と政治信条が違う。ここを変えれば保守派が黙っていないというところもあれば、そのまま護持すればリベラル派が世論を煽り始めるというところもあった筈である。その舵取りは誰が当たっても困難であったろう。
という訳で、私としては珍しく(天地開闢以来レベルで珍しく)石破総理退陣には反対の立場を取りたいのである。
理由の一つは、政治の場に議論が戻って来るということである。
どういうことかと言うと、圧倒的多数に支えられた政権は野党やその先にいる筈の有権者の言うことを完全に無視できてしまうからだ。そうなると立法は官僚とのすり合わせ作業になってしまう。また官僚は官僚で政権の意向だけをうかがうようになる。あまりいいあり方とは言えない。
ところが少数多党状態になると、まず野党の意見に耳を傾けるところから始めざるを得なくなる。すり合わせは政党間つまりは国会議員間で行われることになるのである。これこそが本来の間接民主主義の姿である。是と言い、非と言う人たちを相手にどう上手く立ち回るか、政治的手腕の見せどころではないか。
もう一つの理由は、政治的な安定という観点からである。
少数多党状態においては容易に内閣不信任案が通る。これはどの政党の誰が組閣しても同じである。そういう状況下で倒閣、組閣を両三度繰り返せば、政治はたちまち混乱状態に陥る。危惧するのはここである。
実は日本国憲法は少数多党制を想定してデザインされてはいない。例えば政治混乱の挙句にナチスの台頭を許してしまったドイツは過去の反省から「建設的不信任」ということが憲法で定められている。これは内閣不信任案と次の首班指名がセットで可決されなければならないというものである。
それとは異なり、現行の日本の憲法下では法理論上
- 内閣不信任→解散か総辞職→総選挙か新内閣発足→内閣不信任
を無限にループできてしまう。さすがにこれでは困る。
少数多党も民主主義の一つのあり方として当たり前とするためにも先例(できれば好例)が欲しいというのは身勝手な物言いだろうか。
いずれにしろ衆参両院とも「自民比較第一党」で勝負はついた。
内々の都合もあろうが、まずはお手並み拝見というのが筋ではないだろうか。
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