「異彩を、 放て。」をミッションに掲げ、アートを通じて「障害」をめぐるイメージの変容を目指す岩手発のヘラルボニー。同社とGoogleが共創した、Google Pixelの新機種「10a」のコラボレーションモデル「Isai Blue(イサイブルー)」が、5月20日から販売されている。
初の日本限定モデルである本作は、最新のAI機能やアクセシビリティ機能を搭載。テクノロジーとアートがスマートフォン上でいかに融合したのか。その舞台裏を追った。

ヘラルボニーとGoogleが共創した、Google Pixelの新機種「10a」のコラボレーションモデル「Isai Blue(イサイブルー)」
テクノロジーが人間に歩み寄るGoogle Pixel
Google Pixel 10aの本体の大きな特徴は、背面カメラの出っ張りを排した、完全フラットなデザインだ。机に置いてもがたつかず、ポケットに入れてもおさまりが良く、すっきりした形が使いやすい。
5月11日、盛岡市にあるヘラルボニーの旗艦店「ISAI PARK(イサイ・パーク)」で、今回の共創を記念したトークイベントが開催された。Google Pixel 製品企画アジア太平洋事業統括 リージョナル ディレクターの阿部和子さんによると、日本では低価格帯の「A」シリーズが特に人気だという。シリーズ10周年という節目に、重要市場である日本での新たな試みとして、ヘラルボニーとの共創が実現した。
「スマートフォンは本来便利なはずですが、テクノロジーが進化しすぎて、人間味が失われていないか。Google Pixelはテクノロジーの側から人に歩み寄り、特定の人への配慮ではなく、あらゆる人をエンパワーメントすることを目指しています。これが、ヘラルボニーとGoogleの思想が合致した点です」(阿部さん)

Google Pixel 製品企画アジア太平洋事業統括 リージョナル ディレクターの阿部和子さん
ヘラルボニーは、障害のある作家とライセンス契約を結んで自社のIP(知的財産)として管理し、原画や製品が購入された際や、企業との共創で起用された際に正当なロイヤリティを支払うビジネスを行っている。
同社の執行役員兼アカウント事業本部統括の國分さとみさんは「作家を『支援』の対象とするのではなく、アートとして社会に届けることで障害のイメージを変えたい」と強調する。
青は、世界自閉症啓発デー(4月2日)のシンボルカラーで、ヘラルボニーのブランドカラーでもある。日本語の「異彩(Isai)」をカラーネームに採用するにあたり、当初はグローバルでの承認に高いハードルがあると予想されたというが、Google側も唯一無二の個性を表す「異彩」が持つ意味に賛同。すぐに許可が降り、Google Pixel初の日本語を冠した「Isai Blue」が誕生した。
作風や色合い、スマホでどう再現したか
「Isai Blue」には、ヘラルボニー契約作家のアートを活かしたオリジナル壁紙とカスタムアイコンが搭載されている。Google Pixelプロダクトマネージャーのパブロ・オカンポさんは、「作家たちの複雑かつパワフルな色使いを再現しつつ、UIとしての操作性や視認性を維持するため試行錯誤を繰り返し、カラーパレットはゼロから作り上げました」と明かした。

Google Pixelプロダクトマネージャーのパブロ・オカンポさん
オリジナル壁紙は3種類ある。
水上詩楽(しがく)さんの作品は、扇形と規則正しい点の組み合わせが特徴。2022年に描き初めてから絵のスタイルが変化しているといい、オカンポさんは、「初期から最近までの作品を採用し、アーティストとしての成長も感じてもらいたかった」とこだわりを明かした。
ボックスデザインにも起用されている工藤みどりさんの作品は、点や短い線が不規則に並ぶ、鮮やかな作風。作品は青のイメージも強いが、壁紙では工藤さん本人が特に好むピンクやパープルの部分を基調とした。
伊賀敢男留(かおる)さんの作品について、オカンポさんは「他2人に対し、深い色合いで、シリアスかつエレガント。作風の異なる作家を起用することで、作家たちの多様な表現を取り入れた」と語った。
こうしたアートを最大限いかすため、本体に加えて、側面のみを保護するシンプルなバンパーケースを同梱。藤田望人さんが描き下ろしたステッカーも付属し、ユーザーが自由にカスタマイズを楽しめるようにした。
壁紙に合わせて変わるカスタムアイコンの開発には、生成AIを活用した。と言っても、作品を直接AIに読み込ませたわけではない。作家それぞれの作風を言葉にして、プロンプトに置き換えてAIに入力するプロセスを繰り返すことで、作品とマッチする色合いを実現できたという。
開発過程で、オカンポさんは銀座のヘラルボニーのギャラリーにも足を運び、作家の創作意図を知り、作品を観察した。ヘラルボニーの國分さんも「社員より作家に詳しいのでは」と笑顔を見せるほどで、作家と作品への深い理解と敬意が、プロダクトの細部に宿っている。

ヘラルボニー執行役員兼アカウント事業本部統括の國分さとみさん
利便性と心に訴えかけるアートの融合
テクノロジーの面でも、障害の有無に関わらず、日常を便利にするAIが活用されている。
Googleフォトの「話して編集」では、専門的な知識がなくとも、「全体を明るくして」「人を消して」など直接話しかけたり入力したりするだけで写真編集を可能にした。
ガイド付き自撮り機能では、被写体を読み上げ、それを撮影するための動作も案内されるため、視覚に障害のある人や弱視の人が自分自身で撮影できる。
音声文字変換機能では、相手が話をリアルタイムでテキスト化し、聴覚に障害のある人や、聴こえづらい人のコミュニケーションをサポートする。

Isai Blueを実際に触ってみた
また、Google Pixelのレコーダーアプリでもリアルタイムで文字起こしがされるため、学びやビジネスシーンでも活用できそうだ。筆者も今回の取材でこのレコーダーアプリを使用したが、精度が高くスピーディに変換されるため、非常に役立った。
Googleの最先端のテクノロジーがもたらす利便性に、ヘラルボニーの契約作家たちによる、心に訴えかけるアートが加わった「Isai Blue」。個々の作家への敬意をもとに、アートがテクノロジーやAIとどうコラボし、新たな表現やプロダクトが生まれていくのか。2社の共創は、その可能性にも期待を感じさせるものだった。
(取材・文=若田悠希)
※ハフポストは招待を受け、現地の取材ツアーに参加しました。執筆・編集は独自に行っています。

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