
『子供たち怒る怒る怒る』(新潮社)著者:佐藤 友哉
新しい才能の異彩放つ傑作
傑作である。世間の評価がどうなるのかわからないが、今年の上半期に出版された小説の中で、異彩を放ち、圧倒的な才能を感じさせる。佐藤は「メフィスト」という雑誌から出てきた。いわゆるライトノヴェル系の作家と思われてきた。だが、この小説は、彼の培ってきた手法やテーマが惜しげもなく使われていて、感銘を受けた。
端的に言って、佐藤友哉の描く子供たちは、内面を欠いた行動原理に則(のっと)っている。あれこれ考えた結果の行動など、ない。高速で動く。だが、それに対してわけ知り顔に「心の闇」なんて言葉を貼ったりしない。明るい憎悪に支配された子供たちは、世界をぶっ壊そうとしている。
短篇集の中で、唸(うな)ったのは「死体と、」という二十頁足らずの掌篇。うまい。それに、小説の底流を流れるテーマである近親相姦(そうかん)もしっかり組み込まれている。
タブーを侵すこと。佐藤の小説には、絶えず触れてはいけないものに触れている感覚がある。顰蹙は買うかもしれない。
だが、本当に新しい作家には、それが勲章である。気になる才能がまたひとり、現れた。このことだけは間違いない。
【初出メディア】
日本経済新聞 2005年6月30日
http://www.nikkei.com/

2 時間前
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