失業を「起業のチャンス」と考えた人たちはどうなった?

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失業後、「試しに起業」した人たち

これまで起業研究では、「ビジネスチャンスを見つけた」「収入を得る必要があった」といった理由が重視されてきました。

しかし研究チームは、コロナ禍で仕事やキャリアの道筋を失った人々の中に、少し異なる動きがあることに注目しました。

それは、「人生の方向感覚を失った人々」が、起業を“新しい自分を試す場”として使っていたことです。

「人生の方向感覚を失う」とは、“職業的な迷子状態”のことです。

失業すると、「自分は今後どんな仕事をするのか分からない」「これまで積み上げてきたキャリアが突然意味を失った」「将来の人生設計が白紙になった」といった気持ちになってしまうかもしれません。

この研究では、そうした人々と起業を結び付けて考えたのです。

研究チームは2020年から2021年にかけて、コロナ禍で仕事やキャリアを失った47人へ詳細なインタビューを行いました。

ここで重要なのは、研究対象が「今すぐ生活費を稼がないといけない人」ばかりではなかった点です。

多くの参加者には、貯金や政府給付、家族の支援など、ある程度の安全網がありました。

そのため彼らは、「生き延びるための起業」というより、「今後どう生きるかを考えるための起業」を行う余地があったのです。

研究者たちはインタビューを分析する中で、多くの参加者が最初から本格的な起業家を目指していたわけではないことを発見しました。

むしろ参加者たちは、要するに「少し試してみよう」「今だけやってみよう」と自分を納得させるような形で、起業家としての自分や事業アイデアを試していたのです。

研究チームはこの行動を、「entrepreneurial play(起業家的な試行・遊び)」と表現しています。

つまり人々は、“起業家になる”というより、“起業家という役割を試着していた”のです。

そして分析の結果、研究者たちは、こうした「試しの起業」が、単なる暇つぶしではなく、危機によって崩れた人生を立て直すための心理的な役割を持っていたことを見出しました。

いったいどういうことでしょうか。次項からより詳しくみていきましょう。

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