直射日光が体を襲う、夏の信号待ちの時間。熱中症の発生場所として「道路」は「住居」に次いで2番目に多く、全体の約2割を占める。
東京都千代田区は都市の暑熱対策として御茶ノ水駅前の交差点で今年から「日よけ」の運用を始めた。都内では初という。
韓国では10年ほど前から導入されており、兵庫県神戸市もこの7月から本格的な設置を進めている。
SNSでも「思い遣りがあって素晴らしい」「羨ましい」「日本でも広く導入してほしい」などと注目を集めてきた取り組みだ。
日陰がほぼない交差点。10人が入る巨大パラソル
御茶ノ水駅で降り、お茶の水橋口改札から出ると、すぐに特注で作った大型の白いパラソルが目に入ってきた。その下の日陰では、ビジネスパーソンや学生らが赤信号を待っていた。
幅5メートルほどの屋根のパラソルを2機並べることで、10人ほどが入る。区の職員が手動で開閉を行っており、朝8時から夕方6時頃まで開いているが、強風や雨の予想の日は、風で煽られると危険なため、閉じたままの場合もある。今季は10月末まで設置する予定だ。
区の担当者によると、御茶ノ水駅前の交差点は、区が管理する「区道」にあたる。大勢の人々が一時的に滞留する場所で、日陰がほとんどなく、1日中直射日光があたることから、日よけの設置を決めた。
2年前の夏には、神保町交差点近くにパラソルを設置した。今回は実証実験として、日よけ内外の温度や湿度・人流なども測定して、今後の取り組みにつなげる。6月の設置以降、利用者からは「短い待ち時間でも日よけがあって助かる」と歓迎の声が上がっているという。区の職員は、天候と連動して自動で開閉する日よけ「スマートシェード」を置く神戸市の視察も行った。
設置にあたっては、安全な運用を優先させた。ドライバーや歩行者の支障にならないかは、交通管理者の警視庁と協議。さらに、御茶ノ水駅前の交差点には点字ブロックがあるため、視覚障害のある人の歩行の妨げになったり、日よけの柱にぶつかったりするのではないかという懸念もあった。そこで東京都盲人福祉協会にヒアリングを行い、点字ブロックから一定の距離をとるなど、細かい位置も調整したという。
千代田区は、交差点のほか「淡路公園」「芳林公園」「神田児童公園」などの区立の公園や保育園でも、子どもが安全に遊べるよう配慮した日よけを設置している。
都内初の事例に踏み出したことで、他の自治体からの問い合わせもあるといい、区の担当者は「関心の高さを実感しています。今回効果を測り、どういった仕様、場所、数がより適切なのかを検討していく」と話している。
韓国では3万個以上。低予算と即効性で全国へ

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海外に目を向けると、街頭での日よけパラソルは、韓国ではおよそ10年前から定着している。「クヌルマッ(그늘막/日よけ幕)」と呼ばれ、今では夏の見慣れた風景になっている。
現地報道によると、住民のために交差点に日陰を作ろうと、ソウル市瑞草区が2015年に固定式の大型パラソルを試験的に導入した。斬新なアイデアは好評で、その後全国へと拡大し、国内に設置された日よけの数は3万個を超える。近年では、ミスト機能付きや、気温や風速を感知して自動開閉する「スマートパラソル」など、テクノロジーを搭載して進化している。
韓国では一般的なパラソルは1機200万ウォン(およそ23万円)ほどで、低予算で即効性のある街中の暑熱対策として広がった。しかし、最近は自治体によって設置場所や数に偏りがあることも明らかになっており、地域格差の問題が指摘され始めている。
人工の日よけだけではなく「緑の日傘」も
温暖化の影響で地球全体の気温が上がっているが、中でも東京は気温上昇が顕著であることが様々な調査で明らかになっている。
背景には、都市部の気温が周囲より高くなる「ヒートアイランド現象」がある。
この現象を緩和するのに、大きな効果をもたらすのが樹木だ。樹木は木陰を作るだけではなく、葉の表面から水分が蒸発する時に熱を奪う「蒸散効果」によって、周囲の空気そのものを冷やす働きを持つ。世界では、樹木の枝葉で覆われた土地の面積割合を示す「樹冠被覆率(じゅかんひふくりつ)」30%以上を目指す都市が多いが、東京23区では2013年に9.2%だったのが、2022年には7.3%に下がる(東京大学研究チームの2024年の調査より)という逆の動きを見せており、過度な樹木伐採には反対する声も広がっている。
日よけパラソルは、大がかりな工事を伴わずに、必要な場所にすぐに日陰を作れるというメリットがある。一方で、都市全体の暑熱対策としては、人工の日よけに頼るだけでなく、街に「緑の日傘」と呼ばれる樹木を増やしていく視点も欠かせない。

1 ヶ月前
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