【分析】米同時多発テロから25年――9・11映像を初めて見るSNS世代、薄れる陰謀論との境界

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ANALYSIS

2026.09.11 Fri posted at 15:25 JST

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9日、NYのマンハッタン南端部で夜空に伸びる同時テロ追悼のライトアップ「追悼の光」を眺める人物/Adam Gray/AP

9日、NYのマンハッタン南端部で夜空に伸びる同時テロ追悼のライトアップ「追悼の光」を眺める人物/Adam Gray/AP

(CNN) あれから25年。2001年9月11日のことを覚えている世代の人々は、超高層ビルに旅客機が突っ込んで崩壊する映像を改めて見返しながら、あの惨状を振り返っている。使っているのはほとんどが、当時存在していなかった端末やサービスだ。

だがそれ以上に印象的な現象として、それよりも若い世代が初めてあの映像を目にしている。

元ニューヨーク市長のマイケル・ブルームバーグ氏は、「1億人以上の米国人は、若すぎてあの日を覚えていない」と語った。

そうした若者の中には、YouTubeやTikTokといった動画サイトに投稿された断片的な映像を通してあの時の恐怖を知る人もいる。

そうすることで、VHSビデオや固定電話の時代に逆戻りしたような感覚になることもある。だがそれは、惑わされるような、だまされているような感覚でもある。前後関係がほとんどない状況で、この悲惨な歴史の記録と空虚な陰謀論とを区別するのは難しい。

きっかけはさまざまだ。信頼性が高い(そして被害者に配慮した)ものもあれば、そうでないものもある。個人的にはドキュメンタリーから入ることを勧めたい。ワールド・トレード・センター(WTC)の英雄となった消防士たちの貴重な映像を盛り込んだ映画「9・11」はCNNで配信している。

大手放送局各社も、25年目となる9月11日に合わせて新しい映像を公開している。

視聴者の関心も高い。新しいドキュメンタリー番組「ターニング・ポイント: 9・11が生んだ世代」は先週、ネットフリックスで視聴数が2番目に多かった。

グーグルでは「消防士は階段を何段上ったの」「ハイジャック犯は誰」などの検索が増えている。これは報道機関が資料映像を再公開するきっかけにもなるだろう。

既にそうしているメディアもある。CBSのニュース番組「60ミニッツ」はこの1週間ずっと、過去の9・11関連番組の映像をSNSに投稿している。ヒストリーチャンネルは、生き延びた人たちのインタビューを再放送している。この出来事はもう、歴史なのだ。

だが同時にあの映像は、事実と虚偽の境界がどんどん薄れているSNSの混沌の中でも配信されている。

Xやインスタグラムの正体不明アカウントや匿名アカウントはこの節目の日に乗じて(付け込んでいると言えるものもある)古いテレビ映像や追悼の言葉を投稿しているが、中にはあり得ないような嘘(うそ)や臆測が入り混じるものもある。

たとえ9・11関連の事実を淡々と伝える投稿であっても、コメント欄はおぞましい陰謀論であふれ返っていることも多い。

真実はそこにもある。しかし大抵は検索して見つける必要がある。

陰謀論に悪用される9・11の映像

大抵の人は、あの日の同時多発テロを伝えた当日朝のテレビ映像から入る。ユーチューブでは、9・11に関連して「9・11当日のニュース報道」や「飛行機が突っ込んだ映像」といった検索が多い。

9・11関連の報道を無断録画したと思われる映像のプレイリストをまとめたユーチューバーや、ニューヨークのテロ発生からの18分を8チャンネルがどう伝えたかを「マルチビュー」にまとめたユーチューバーもいる。

地元のテレビ局の中で最初に速報を流したのはFOX系列のWNYWだった。全米ネットワークの中ではCNNが最初だった。

「ご覧いただいているのは、見ての通り非常に衝撃的なライブ映像です」。CNNキャスターのキャロル・リン氏はそう伝えた。カメラはマンハッタン南部にあるWTCノースタワー側面の大きな亀裂を映し出していた。

ナショナル・レビュー誌のジム・ジェラティ氏は、若い世代が初めて9・11関連のコンテンツに触れている現状を踏まえ、10日のコラムを次のような言葉で始めた。「子どもたちへ。どのドキュメンタリーにも映っていないのは、あの朝、一報が伝えられた後も、誰も何も分からなかったということだ」

あの時に感じた不安や恐怖を伝えるのはあまりに難しい。だがその感覚は、刻々と伝えられるニュースを通じて迫ってくる。

ニューヨーク市の人々は衝撃を受け、信じられない思いで見上げていた。ほかの場所にいた人たちは誰もが、昔ながらのテレビでいつも見ているキャスターを見つめ、まだ原始的だったニュースサイトで新しい情報を探そうとした。

ライブ配信も、ツイートも、人工知能(AI)生成のディープフェイクも存在していなかった。

「確かに、フェイスブックやX(旧ツイッター)などがまだ発明されていなかった時代にも、有害な噂(うわさ)や陰謀論はあった」。タイム誌のナンシー・ギブス元編集長はそう記した。「ただ、あれ以来起きたことと比べれば、情報を取り巻く状況は極めて健全だったように思える」

テレビ報道について詳しく知りたいと思う読者のために、筆者は数年前の記事の中で、9・11当日の報道局の様子を事細かに伝えた。テレビ局のプロデューサーは、ニュースキャスターの資質について「9・11のような放送にその人を起用できるか」という問いを突き付けられたとも指摘した。

あの日、トム・ブロコウ、ピーター・ジェニングス、ダン・ラザーといったニュースキャスター各氏は、歴史家のギャレット・グラフがかつて言った通り、「アメリカで国家指導者に最も近い存在として、この悲劇のさなか、国を導き支えるという極めて歴史的な役割を果たしていた」

刻々と伝えられたあの報道が、25年たった今もなお共有され、配信されているという事実は、その証でもある。

9・11のテレビ生中継には間違いもあった。当時の混乱した状況の中では仕方のないことだった。しかし陰謀論者はそうした言い間違いの映像に飛びつく。よくある技術的な不具合や解像度の低い映像も取り混ぜて、同時テロに関する一連の虚偽証言を裏付ける「証拠」とする。

「9・11のテロ攻撃について出回っている陰謀論は無害どころではない」。外交問題評議会のジェームズ・M・リンジー氏はそう指摘する。「民主的な政府の合法性を失わせ、根拠なく非難された罪のない集団を悪者にする。真の原因や実行犯から目をそらさせる」

リンジー氏は、9・11関連で最も執拗(しつよう)な虚偽に反論する上で役に立つ資料10点のリストを公表している。

配慮なしのTikTokコンテンツ化

2001年当時、一般に伝えられる映像や写真のほとんどは、大手メディアが管理していた。テレビ局は、高層ビルから人が転落したり飛び降りたりする写真や映像を流すことを控えた。

AP通信のカメラマン、リチャード・ドルー氏がとらえた象徴的な写真「Falling Man(落下する男性)」は、ほとんどの新聞で「1度だけ」掲載され、再び掲載されることはなかった。トム・ジュノッド氏がそう指摘したエスクァイア誌の特集号の記事は、9月11日が来るたびに、SNSで広く共有されている。

ジュノッド氏によると、あの写真を掲載した新聞は、「人の死に付け込んで尊厳を奪い、プライバシーを侵害し、悲劇をいやらしいポルノに変えた」という責めに対して弁護を強いられた。

論議はそこで終わらなかった。旅客機がWTCに突っ込む映像など、心の傷になりかねない映像をテレビ局が流すかどうか、あるいはいつ、どうやって流すかについては論議が続いた。今もCNNなどの放送局はそうした懸念に配慮して、衝撃的な場面を放送するタイミングには細心の注意を払う。

しかしユーチューブなど9・11以降に登場したサイトに、そうした配慮をする編集者はいない。映像は何度でも繰り返し再生される。

今、アルゴリズムによってこのコンテンツが再浮上し、中には「落下する男性」を初めて見る人もいる。ある世代にとって最も大きな心の傷を残した記憶が、別の世代にとってのTikTokコンテンツと化すことは、どんな心理的代償を伴うのだろうか。

本稿はCNNのブライアン・ステルター記者の分析記事です。

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