【分析】「シャチがホッキョクグマを捕食」、プーチン氏の世界は常に弱肉強食 トランプ氏のウクライナ和平構想に暗雲

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ANALYSIS

2026.09.12 Sat posted at 13:05 JST

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上海協力機構(SCO)首脳会議の後、報道陣の取材に応じるプーチン氏/Vyacheslav Prokofyev/AFP/Getty Images

上海協力機構(SCO)首脳会議の後、報道陣の取材に応じるプーチン氏/Vyacheslav Prokofyev/AFP/Getty Images

(CNN) ロシアのプーチン大統領は先月下旬、上海協力機構(SCO)首脳会議に出席するため中央アジアのキルギスを訪問した。この首脳会議には、中国の習近平(シーチンピン)国家主席、インドのモディ首相、イランのペゼシュキアン大統領も出席した。

首脳陣が首都ビシケクに集まったのは、地政学的な緊張が極めて高まる中でのことだった。イランと米国は新たな報復攻撃の応酬を繰り広げ、ロシアのドローン(無人機)やミサイルがウクライナを激しく攻撃。さらにドイツは、8月にライプチヒの空港を標的としたドローン攻撃について、ロシアに責任があると非難した。

だが、プーチン氏はこうした状況でも余裕を失っていないように見えた。今月1日夜の記者会見では、ある一つの主張をことさら明確にしようと努めている様子だった。それは、国家はダーウィン的な競争状態にあり、適者生存の争いではロシアが勝ち抜くというものだ。

クレムリン(ロシア大統領府)担当記者のパベル・ザルビン氏から、数日前に「シャチがホッキョクグマを食べる」との異例の発言(プーチン氏の海洋生物学に関する見解については後述)をしたことについて問われると、プーチン氏は、それは西側諸国との現在進行形の対立を表すために「即興で」用いた例えだったと説明し、以下のように述べた。

「シャチは間違いなく恐るべき捕食者だが、同時に非常に知能が高く、狡猾(こうかつ)な生き物でもある」「一方で、西側諸国にはソ連時代、今日でも通用する特定の定義が与えられた。『帝国主義のサメ』だ」

サメとシャチは同じ種類の動物とは言い難いが、プーチン氏はさらに例えを続けた。

上海協力機構(SCO)首脳会議後の記者会見でサメについて語るプーチン氏/Vyacheslav Prokofyev/Sputnik/Reuters
上海協力機構(SCO)首脳会議後の記者会見でサメについて語るプーチン氏/Vyacheslav Prokofyev/Sputnik/Reuters

「私の発言の趣旨は、もし何者かが我々を食物連鎖の下位へ引きずり下ろし、食い尽くそうとするならば、その者は歯を折られる覚悟をすべきだということだ」「そしてロシアは、こうしたサメたちの飽くなき食欲と、ますます研ぎ澄まされる歯にもかかわらず、まさにそれを実行する準備ができている」

ここで発せられたメッセージは、国内の聴衆に対しても、各国の指導者に対しても明確だった。ウクライナでの戦争に関して言えば、前線がどこにあろうと、またウクライナがロシア深部攻撃作戦を通じて一般市民にどれほど経済的な痛手を与えようと、プーチン氏は強硬姿勢を一段と強める構えだ。

プーチン氏は、ウクライナが防空面で劣勢に立たされていることを認識しており、ロシア軍はウクライナ各地の都市にドローンやミサイルを大量に浴びせている。

ウクライナのゼレンスキー大統領は1日、ウクライナのドローンが飛来しているため、ロシア上空は「事実上閉鎖されることになる」と警告した。これに対しプーチン氏は、その発言は聞いていないとして、事態をエスカレートさせるような言辞を一蹴した。

プーチン氏はこうした発言について、「国家が支援するテロ行為を呼びかけるものにほかならない」と述べた。「彼らは我々に交渉再開や直接会談を要求しているが、テロリストとは交渉しない」

ロシアのドローン攻撃を受けた現場のそばを人々が通り過ぎる様子=ウクライナ首都キーウ/Alina Smutko/Reuters
ロシアのドローン攻撃を受けた現場のそばを人々が通り過ぎる様子=ウクライナ首都キーウ/Alina Smutko/Reuters

また、8月にライプチヒの空港を狙ったドローン攻撃の責任がロシアにあるとするドイツの主張についても同様に一蹴し、ドイツ側が意図的な挑発のために証拠を仕込んだとの見方を示した。

「提示されている説明はただ一つ、『攻撃的なロシア』に対抗する必要性だ」「だが証拠はどこにあるのか。今になって何らかの『証拠』が仕込まれたというわけだ」

ビシケクでのプーチン氏の発言は好戦的だったが、トランプ米政権について語る際には、やや融和的な姿勢も見せた。

米中央情報局(CIA)のラトクリフ長官が先月下旬、ロシアの首都モスクワを訪問したことについて問われると、プーチン氏は、ラトクリフ氏とロシア情報当局者との接触は建設的だったと示唆したものの、新たな詳細には触れなかった。

「接触は常に存在する。冷戦の最も困難な時代でさえそうだったし、今はなおさらだ」とプーチン氏は指摘。「いかなる交渉であれ、まず何より具体的な中身を伴う必要がある。もし誰かがこのプロセスに具体的な貢献をしている、あるいはできるのであれば、我々はそれを全面的に歓迎する」

プーチン氏はまた、トランプ大統領との間で何らかの取引を行う際、誰を交渉相手として望んでいるかも明確にした。スティーブ・ウィトコフ特使と、トランプ氏の娘婿ジャレッド・クシュナー氏という異例の外交コンビだ。

「彼らはトランプ大統領に近い人物だ。私の考えでは誠実な人々であり、我々の取り組みに具体的な中身を持たせようと努めている。大統領が彼らを信頼しているという点は非常に重要であり、その信頼がなければ通常、いかなる交渉も不可能だ」とプーチン氏は語った。「クシュナー氏もウィトコフ氏も、我々にとっていつでも歓迎すべき客人であり、喜んで協力していく」

トランプ氏が2期目の大統領任期を開始して以降、ウィトコフ、クシュナー両氏はモスクワを何度か訪問している。だが、プーチン氏が両氏を好ましい交渉相手とみていることは、ウクライナ政府に不安を抱かせる可能性がある。両氏はトランプ氏の和平交渉担当としての役割を担って以来、一度もウクライナを訪れておらず、一部の観測筋からはロシアに有利な取引を支持するのではないかとの懸念が出ている。

ロシアのプーチン大統領が米国のスティーブ・ウィトコフ特使や、トランプ氏の娘婿ジャレッド・クシュナー氏と会談する様子/Kristina Kormilitsyna/AFP/Getty Images
ロシアのプーチン大統領が米国のスティーブ・ウィトコフ特使や、トランプ氏の娘婿ジャレッド・クシュナー氏と会談する様子/Kristina Kormilitsyna/AFP/Getty Images

ウクライナには厳しい冬が待ち受けている。今月後半の議会選挙後、ロシアが新たな動員に踏み切るのではないかとの懸念もある。プーチン氏はそうした臆測について「全くのでたらめだ」と一蹴した。だが、動物界についての発言は、プーチン氏が現在、何を考えているかをうかがわせる材料になるかもしれない。

シャチとホッキョクグマをめぐる話は、先月29日にモスクワ国立教育大学で開かれた会合で、参加者の1人が北極圏を訪れた経験を語った際に初めて浮上した。プーチン氏は想像力をかき立てられたようで、その学生にホッキョクグマを見たかと尋ねた。

「すぐそばにはシャチもいる。シャチはこれらのクマを小魚のように食べてしまう。群れで襲いかかり、引き裂くのだ」とプーチン氏は語り、さらに政治的な文脈を付け加えた。「これが食物連鎖だ。子どもたちにもこのことを教える必要がある。我々がどんな世界に生きていて、なぜ特別軍事作戦を実施しているのか理解してもらうためだ」

複数の観測筋は、実際にはシャチがホッキョクグマを捕食することはないと指摘し、プーチン氏が、AI(人工知能)が生成した低品質な動画でも見たのではないかとの臆測も出た。だが、疑わしい動物学はさておき、トランプ氏を思わせるような唐突な発言からは、ウクライナとの戦争を続けるかという根本的な問題について、プーチン氏の姿勢が今なお極めて強硬であることがうかがえる。プーチン氏の世界では、いつだって米テレビ番組「シャーク・ウィーク」さながらに、弱肉強食の論理が支配しているのだ。

本稿はCNNのネイサン・ホッジ記者の分析記事です。

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