「外国人は生活保護を受けやすい」
「外国人ばかり優遇されている」
そんな言葉をインターネット上で目にしたことがある人は多いだろう。
が、生活保護が対象としているのは「日本国民」。外国人には「準用」という扱いで、その対象となるのは永住や定住などの在留資格を持つ人のみ。それ以外の人は、どれほど困窮していようと基本的には対象とならない。
9月9日、そんな残酷な現実を反映する判決が最高裁で下された。
人工透析を受けるガーナ国籍の男性シアウ・ジョンソン・クワクさん(36歳)が千葉市に処分取り消しなどを求めた裁判で敗訴したのだ。
ジョンソンさんは2015年に来日。慢性腎不全を発症したのは日本語学校に通ったのち、働き始めてからのことだった。仕事は辞めざるを得なくなり、週3回の人工透析が必要な身に。退職に伴い、在留資格は療養を目的とするものになり就労は不可能となる。当然生活は困窮し、21年、千葉市に生活保護を申請するものの却下されたのだ。
ジョンソンさんはこれを違法として千葉市に処分取り消しを求めて裁判を起こしたのだが、一審、二審は申請却下を適法と判断。最高裁でも同様の判断となった。
「外国人は生活保護を受けやすい」と言っていた人たちは、この非人道的な判決について、なんと言うのだろう。働けない在留資格で、人工透析が必要な人が生活保護を利用できないことが適法なら、それは「死ね」とイコールではないのか。
「日本人ファースト」と言うまでもなく、これほどに、この国で外国人は守られていない。ちなみに政府は今年1月に出した「総合的対応策」にて外国人の生活保護の厳格化方針を掲げている。が、生活保護の利用率は、国内全体で1.62%。永住外国人で1.96%。ほとんど差がないのだ。
また、生活保護を利用する人のうち、日本人は97%で外国人の割合は3%ほど。海外に目を向けると、生活保護利用者のうち外国人が占める割合はフランス12.4%、ドイツ37.8%、スウェーデン59.4%。日本の3%というのは非常に低い数値なのである。
さて、こんな判決が出る3日前、ある選挙結果が世界をざわつかせた。
それはドイツ東部の州議会選挙。反移民などを主張する「ドイツのための選択肢」(AfD)が第一党となったのだ。
ドイツのメルツ首相は、AfDの政策を「民族浄化に他ならない」と非難している。
その政策とは、移民の国外退去や帰還を促進する政策。ブレイディみかこさんの新刊について触れた772回の原稿「『再移住=リマイグレーション』という”ソフトな民族浄化”〜日本とイギリスの排外主義」でタイトルにも使った「再移住=リマイグレーション」だ。
そんな政策を掲げるのはドイツのAfDだけではない。
昨年、支持率1位となり、今も高支持率を誇るイギリスの政党・リフォームUKもリマイグレーション的な政策を掲げている。
党首のナイジェル・ファラージ氏は、最大100万人の不法移民や強制送還対象者を5年間で英国から送還する計画を発表し、永住権の剥奪も掲げている。それだけではない。24年の終わりで43万人だった永住権保持者(主にEU以外の国から来た人々)からそれを剥奪し、5年更新のビザに強制的に切り替えるという計画もある。他にも高所得、英語力など厳しい条件があり、条件を満たさなければ永住権で英国に住んでいた人々も強制送還の対象になるという恐ろしい方針だ。
これは何も対岸の火事ではない。
「経営・管理」の資本金が突然6倍に値上げされ、永住権の要件を厳しくするガイドライン案には、「日本人世帯の平均を上回る年収水準」や「将来受け取れる年金額が、平均収入の日本人が厚生年金に30年間加入した場合の水準に達していること」などが盛り込まれた上に、日本語能力などの条件も追加された日本。
一方、永住資格の取り消しに関する運用も厳格化される方針で、「決して大きくないミス」が、永住資格取り消しにつながるのではと多くの外国人が怯えている。
それによって、地道にこの国で働き、生活してきた外国人の人生設計が今、根こそぎ破壊されつつある。
この国は一昔前と違い、景気がいいわけでも賃金が高いわけでもない。それなのに日本を選んでくれて、人口減と人手不足のこの国をさまざまな形で支えてくれている外国人たち。なぜ、国はそんな人々に感謝するのではなく厳しく取り締まるようなことをするのか。日本が選ばれなくなってしまったら、困るのは自分たちであることは明白ではないか。
しかし、世界各地で外国人に厳しい目線が向けられ、政治家はインスタントな人気取りのためにそれを利用している。だけど、いろんなことを「外国人のせい」にして一時的に溜飲を下げたその先に何があるのか。滅亡の道しか見えないのは私だけではないはずだ。
今から15年前、この国はレベル7の原発事故に見舞われた。その時、「もう日本に住めなくなるかも」という思いが脳裏をよぎった人も多いはずだ。実際、あの事故をきっかけに国外に移住した人もいる。
英語もできない私は、他の国に移住することなど一度も本気で考えたことはなく、ずっと日本にいたいと思っている。しかし、自分が望まなくても、「移民」になる可能性は誰だってゼロではない。
外国人政策の厳格化を支持している人たちは、その矛先が自分に向くことは考えないのだろうか。その時「しまった」と思っても、すべては手遅れなのだ。
※ドイツのAfDについては今年1月、ドイツの問題に詳しい東大教授の板橋拓己さんに取材し、「東西格差のもと、極右政党が躍進するドイツの『自国ファースト』」という原稿を書いているのでこちらもぜひ。

1 ヶ月前
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