世界最大の消費国から支配者へ。中国の「銅戦略」が塗り替える産業地図

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近年はレアアースをめぐる各国の動向が注目されがちですが、電気自動車やAI関連設備の普及によって需要が高まる銅をめぐっても、世界的な争奪戦が進んでいます。今回のメルマガ『富坂聰の「目からうろこの中国解説」』ではジャーナリストの富坂聰さんが、銅を切り口に中国の資源戦略と世界の産業構造の変化について考察しています。

産業に必要なのはレアアースだけではない 銅でも存在感を高める中国

アメリカ、日本、インド、オーストラリアの外相が5月26日、4カ国の枠組みである「クアッド」の会合をニューデリーで開き、インド太平洋地域を対象とする海洋監視構想を発表した。

会合を伝えたメディアの記事には、例によって「名指しは避けつつ」、「中国を念頭に」という言葉があふれた。いわゆる「中国包囲網」の流れだ。

ただ4カ国それぞれの思惑にはばらつきがあり、インドとオーストラリアはすでに中国との関係改善に動いていることは明確で、オーストラリアはその関係を利用して航空機燃料を融通された。アメリカの対応も、バイデン時代の勢い比べれば、極めて落ち着いたものだった。

そうした各国の変化の裏側にあるのは、5月のドナルド・トランプ大統領による北京訪問である。中国によるレアアースの輸出規制が、アメリカの対中政策に大きな変更をもたらしたことは、すでに世界が目撃した通りだ。

レアアースに関して中国は、鉱山から精製に至るまで、スキの無い供給体制を整えているが、その中でも強みとされるのが精製技術とコスト面での優位だ。各地でレアアースが採れたとしても、なかなか「中国支配」を崩しきれない理由がそこにあるというのだ。

昨秋の米中首脳会談以来、西側先進国を中心に多くの国がレアアースの新たな調達ルートを開拓しようと躍起になって動いてきたのは周知のことだ。

ただ、こと製造業という視点に立てば、生産に不可欠な素材はレアアースだけではない。現状、日本ではナフサの不足が深刻だが、供給が滞れば製造そのものが止まってしまう素材は少なからずある。

例えば、銅である。銅は、伝統的な製造業を支える重要な金属であると同時に、AIなどの新興産業には欠かせない素材でもある。そして銅は、長らく「中国のアキレス腱」と指摘されてきた。

その大きな弱点に関して、中国メディアが大々的に扱った話題がある。5月29日の『人民日報』の記事だ。タイトルは、「2007年の下半期まで受注でいっぱい 新たな業界で受注爆増」である。

記事が伝えているのは、銅の供給者である中国がにわかに起きた「受注増」に沸いていて、その背後では銅製品の価格も急騰し、追い風が吹いているという話だ。

この記事の内容と「中国のアキレス腱」が銅だという事実が容易には結びつかないはずなので少し整理すれば、そもそも、中国にとって「銅が弱点」とされた理由は、銅鉱石(精鉱)の対外依存度が80%超と非常に高かったことにある。

つまり、精錬して出す能力は非常に高いものの、銅鉱石は輸入に頼るしかないという状況が中国の弱みだったのである。このため中国は、世界の鉱山権益を持つ資源メジャー(寡占企業)に対する原料購入時の価格交渉力で弱い立場に立たされてきたのである。

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一方で中国は世界最大の銅製品の生産国であると同時に、消費国でもあり、その消費量は世界全体の半分以上を占めている。

買い手であり、売り手でもある中国がここ数年にわかに存在感を高めてきたのは、鉱山の確保に自ら道を開いたからだ。

その理由の一つは単純に産業の上流へと遡上したことある。

鉱山を持たず、鉱石を高値で買うしかなかった精錬企業が、その弱点を補うため、南米エクアドルやペルー、そしてアフリカのコンゴ民主共和国などの鉱山を積極的に取得していったのだ。

その裏で中国政府が、国を挙げた資源外交を展開したことはよく知られている。

中国の資源に対する貪欲な取り組みを批判する声は、西側先進国を中心に多く聞かれた。

だが、いま中国が「銅」というアキレス腱を克服しつつあると世界が見るようになったのは、単に海外での積極的な鉱山開発が成功したからだけではない。

もう一つ忘れてならないのは「都市鉱山」に対する取り組みだ。

都市鉱山という言葉は2012年、日本が尖閣諸島を国有化したことに反発した中国がレアアースの輸出を止めたという文脈の中で日本でも多用された。

もっとも実際は、中国のレアアースの輸出規制と尖閣諸島国有化は時期的に少しずれていて、日本のメディアが説明するようなものではないのだが、その話はひとまず置いておく。

都市鉱山とは要するにリサイクルのことで、廃棄された製品に眠る資源を指す言葉だ。中国ではいま、使用済みのEVバッテリーや太陽光パネルからも銅を回収する技術開発が進んでいる。

都市鉱山を有効利用すれば、資源の対外依存を減らせるというメリットがある。事実、中国国内に蓄積された都市鉱山における銅の埋蔵量は、理論上1億1000万トンともいわれている。

これは10年分の国内消費量にも相当する膨大な資源だ。

中国政府は、2025年から2026年にかけて、再生金属の生産量を2000万トンにまで引き上げる政策を掲げている。

見えてくるのは中国の資源に対する貪欲な取り組みだが、この都市鉱山という考え方も取り組みも本来は日本が中国の手本だったと考えると、複雑な気持ちにさせられるのだ。

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