クラリティ法案とは?仮想通貨の国際ルールを動かす米国法の全貌と行方

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2026年4月、米国では財務長官・SEC委員長・CFTC委員長の3者が同日に揃って議会にCLARITY法案(クラリティ法案)の成立を求めるという、仮想通貨規制をめぐっては異例の動きがありました。

CLARITY法案は、仮想通貨が「証券」に該当するのか、それとも「商品」として扱われるのかという米国で長く争点となってきた問題に対し、法律上の基準を設けるための法案であり、SEC(証券取引委員会)とCFTC(商品先物取引委員会)の管轄権を整理する米国初の包括的な仮想通貨市場構造法案として、米国内にとどまらず世界の仮想通貨市場にも影響を及ぼす可能性があります。

同法案は2025年7月に下院を超党派の大差(294対134)で通過しましたが、上院ではステーブルコインの利回りや規制権限の扱いをめぐって銀行業界と仮想通貨業界の利害がぶつかり、審議は長期にわたって停滞しています。

市場関係者の間では、5月末までに上院を通過できなければ2026年中の成立は難しくなるとの見方が広がる一方で、上院では審議を進めるべき段階に入ったとの認識も示されており、法案は成立に向けた最終局面に入っています。

この記事では、CLARITY法案の仕組みと目的、すでに成立しているGENIUS法との関係、立法経緯の全体像、2026年4月時点の最新動向、そして成立・不成立それぞれの場合に投資家や事業者が受ける影響までを体系的に整理しています

CLARITY法案とは?仮想通貨市場構造法の概要

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CLARITY法案(クラリティ法案)は、仮想通貨の分類基準と規制当局の管轄権を法律で整理するための米国の包括的な市場構造法案です

法案の正式名称と目的、SECとCFTCの管轄を分ける仕組み、デジタル資産を3つに分類する考え方を押さえることで、米国がどのような規制体系を作ろうとしているのかが見えてきます。

法案の正式名称と目的

CLARITY法案(Digital Asset Market Clarity Act of 2025)は、米国における仮想通貨(暗号資産)の規制枠組みを包括的に定めるための法案で、正式名称は「デジタル資産市場明確化法」です。2025年5月29日に下院農業委員会のグレン・トンプソン委員長と下院金融サービス委員会のフレンチ・ヒル委員長が超党派で提出しました。

この法案が焦点を当てているのは、米国の仮想通貨規制で長年残されてきた「どの資産を、どの当局が監督するのか」という問題です。米国ではこれまで、仮想通貨が「証券」に該当するのか「商品(コモディティ)」に該当するのかを判断する明確な法的基準がなく、SEC(米証券取引委員会)とCFTC(米商品先物取引委員会)の管轄権も曖昧なまま運用されてきたため、取引所への訴訟、新サービスの開発停滞、機関投資家の参入判断の遅れなど、業界全体に影響する問題が積み重なってきました。

CLARITY法案は、こうした曖昧な状態に法律上の基準を設けるものです。仮想通貨の分類基準を明文化し、どの資産がどの規制当局の監督下に置かれるのかを定めることで、事業者や投資家が自らの法的立場を判断しやすい環境を整える狙いがあります。

SECとCFTCの管轄権を明確化する仕組み

法案の中心にあるのは、SECとCFTCの管轄権をどのように分けるかという点です。現行案では、十分な分散性を備えたデジタル資産は「デジタル商品」としてCFTCの監督対象となり、投資契約性が認められるトークンは引き続きSECの管轄下に置かれると規定されています。

この考え方に沿えば、ビットコイン(BTC)イーサリアム(ETH)のように、特定の発行者に依存せず分散的に運営されている資産は「デジタル商品」としてCFTCが監督する一方、IEO(Initial Exchange Offering)のように発行者が存在し、投資契約性が認められるトークンについては、引き続きSECの管轄に残る形になります。

この管轄区分が確定すれば、仮想通貨取引所は自社が提供する取引サービスについて、SECとCFTCのどちらに登録すべきかを判断しやすくなります。法案にはプラットフォーム運営者向けの新たな登録制度も盛り込まれており、一定の猶予期間を設けたうえで、新制度への移行を求める内容となっています。

デジタル商品・証券・ステーブルコインの3分類

CLARITY法案では、デジタル資産を大きく3つのカテゴリーに分けています。第一に、ビットコインやイーサリアムのように分散的に運営される「デジタル商品」、第二に、発行者が存在し投資契約性を伴う「証券的デジタル資産」、第三に、ドルなどの法定通貨に価値を連動させた「ステーブルコイン」です。

このうちステーブルコインについては、2025年7月に成立した「GENIUS法」がすでに発行・監督基準を定めています。ただし、ステーブルコイン保有者への利回り付与の可否についてはCLARITY法案の審議過程でも扱われており、上院審議を長引かせている主要な争点の一つになっています。

この分類体系が制度として定まれば、米国で初めて仮想通貨の法的地位が体系的に整理されることになります。

GENIUS法との違い|2つの法案の役割分担

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米国の仮想通貨規制は、GENIUS法とCLARITY法案の2本柱で整備される構想になっています。

両者は同じ対象を取り合う法律ではなく、GENIUS法がステーブルコインを、CLARITY法案がより広いデジタル資産市場を扱うという形で役割が分かれています。

GENIUS法(ステーブルコイン規制法)の概要

GENIUS法(Guiding and Establishing National Innovation for U.S. Stablecoins Act)は、ステーブルコインの発行・監督基準を定めた法律で、2025年7月にトランプ大統領が署名して成立しています。施行は2027年1月18日、または規制発効後120日のいずれか早い日が予定されています。

同法では、ステーブルコインを米ドルまたは同等の流動資産で完全に担保することが義務付けられています。時価総額500億ドル(約7.9兆円)を超える発行者には年次監査が課され、外国発行に関するガイドラインも定められました。銀行が独自のステーブルコインを発行する場合の要件や、消費者保護の枠組みも同法に含まれています。

CLARITY法案が担う「市場構造の交通法規」

GENIUS法が「ステーブルコインの発行ルール」を定めた法律だとすれば、CLARITY法案は「仮想通貨市場全体の交通法規」に近い役割を担います。GENIUS法はステーブルコインという「決済手段」に焦点を絞っていますが、CLARITY法案はビットコイン、イーサリアム、その他のトークンなど、ステーブルコイン以外のデジタル資産の取引・発行に関するルールを整える法案です。

具体的には、仮想通貨取引所やブローカーの登録制度、資産の証券・商品分類基準、ブロックチェーン上のネイティブ資産に対する監督体制など、市場参加者が実務上直面するルールの多くがCLARITY法案の対象になります。ステーブルコインの発行ルールだけでは補えない、デジタル資産市場全体の取引環境を整えるための法案といえます。

2法案が揃うことで完成する米国の仮想通貨規制体系

GENIUS法とCLARITY法案は競合する関係ではなく、補完関係にあります。GENIUS法がステーブルコインの「入口」にあたる発行・監督ルールを整え、CLARITY法案がそれ以外の市場全体の「構造」を定めることで、米国の仮想通貨規制はより一体的な枠組みに近づきます。

2つの法案が揃えば、米国は欧州連合のMiCA(暗号資産市場規制)に匹敵する包括的な仮想通貨規制体系を持つことになります。機関投資家が証券口座を通じて仮想通貨にアクセスする際の法的基盤が整い、DeFi(分散型金融)プロジェクトの開発者にとっても、自らのサービスがどのように扱われるのかを判断しやすくなります。

CLARITY法案の立法経緯|提出から上院審議まで

CLARITY法案は2025年5月の提出以降、下院可決、上院審議入り、審議停滞、妥協合意という段階をたどってきました。なかでも、ステーブルコイン利回りをめぐる銀行業界と仮想通貨業界の対立は、法案の進行を左右する大きな要因になっています。

2025年5月の法案提出と下院可決

CLARITY法案は2025年5月29日に下院で提出され、同年7月17日に賛成294票・反対134票の超党派の大差で可決されました。共和党・民主党の両党から幅広い支持を集めたことから、デジタル資産の規制明確化に対する議会内の関心は高い水準にあることがうかがえます。

同時期には上院のシンシア・ルミス議員が、下院版を基にした独自の上院版草案(「Responsible Financial Innovation Act of 2025」)を発表しています。この草案には「ancillary asset(補助的資産)」という独自の定義が加えられており、上院側でさらに内容を調整する余地が示されました。

下院通過後、法案は上院銀行委員会と上院農業委員会の双方に送付されています。証券関連の規定は銀行委員会が、商品関連の規定は農業委員会がそれぞれ審議する体制となり、SECとCFTCの管轄に対応する形で、上院内でも審議の役割が分かれました。

上院審議の停滞|コインベースの支持撤回と審議延期

2026年1月6日、上院銀行委員会のティム・スコット委員長は、同月15日にマークアップ(修正審議)を実施する予定だと明らかにしました。ところが、その直前となる1月14日に事態は大きく動きます。

米大手仮想通貨取引所コインベースのブライアン・アームストロングCEOが「現行の法案条文では支持できない」と表明し、マークアップは急遽中止に追い込まれました。アームストロング氏が問題視したのは主に2点で、ひとつはステーブルコイン報酬プログラムへの制限、つまりコインベースの収益の約20%を占めるUSDC関連収益への影響であり、もうひとつは大手銀行が規制を利用して仮想通貨業界との競争を制限しようとしているのではないかという懸念でした。

この支持撤回を受けて、民主党議員と業界代表が協議を再開する動きも出ましたが、上院での審議は約5か月にわたって実質的に停滞することになります。下院を大差で通過した法案であっても、上院では銀行業界、仮想通貨業界、規制当局の利害が絡み合い、条文の調整が簡単には進まない状況が浮き彫りになりました。

ステーブルコイン利回り問題|銀行業界vs仮想通貨業界

審議停滞の最大の原因になっているのが「ステーブルコイン利回り問題」です。仮想通貨プラットフォーム(コインベースなど)は、ステーブルコイン保有者への報酬(利回り)をサービスの重要な機能として提供してきました。これに対し銀行業界は、「利回り付きステーブルコインは実質的に預金と同等であり、既存の貯蓄商品と直接競合する」と主張し、強いロビー活動を展開してきました。

2026年2月3日には、ホワイトハウスのクリプト評議会が仮想通貨企業と銀行業界の代表者を招いた協議を実施しています。コインベース、クラーケン、リップル、テザー、ペイパル、フィデリティなどの仮想通貨関連企業に加え、米銀行協会や銀行政策研究所などの銀行業界団体も出席しました。

この対立はCLARITY法案だけでなく、すでに成立しているGENIUS法の規則策定プロセスにも影響しています。米国銀行家協会(ABA)は2026年4月22日、GENIUS規制に関する規則案のコメント期間を60日延長するよう要請しており、ステーブルコイン規制全体の施行スケジュールにも影響が及ぶ可能性があります。

2026年3月の妥協合意と残る論点

2026年3月20日、トム・ティリス上院議員(共和党)とアンジェラ・アルソブルックス上院議員(民主党)は、ホワイトハウスの支持を得てステーブルコイン報酬に関する原則合意を確認しました。合意の骨子は「保有するだけの利回り(残高連動型報酬)は禁止し、取引や支払いなどのユーザー行動に連動した報酬は許可する」というものです。

ただし、「アクティビティ連動型報酬」をどこまで認めるのかについては、法案の条文だけでは明確に定義されていません。その線引きは、SEC・CFTC・財務省が1年かけて共同で策定する規則に委ねられています。

利回り問題のほかにも、DeFi(分散型金融)条項、倫理規定、コミュニティ銀行規制緩和の抱き合わせなど、未解決の論点は複数残っており、最終的な調整にはなお時間がかかる状況です。

2026年4月の最新動向|立法最終局面の攻防

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2026年4月に入ると、CLARITY法案をめぐる動きは一段と活発になりました。政権トップによる異例の一斉要請、コインベースCEOの態度転換、120社超による共同書簡など、成立を求める圧力が複数の方面から同時に強まっています。

米政権3トップが異例の一斉要請

2026年4月9日、スコット・ベッセント財務長官、SECのポール・アトキンス委員長、CFTCのマイケル・セリグ委員長の3者が同じ日に、CLARITY法案の早期可決を米議会に要請しました。財務省・SEC・CFTCのトップが同日に揃って法案成立を後押しするのは極めて異例であり、米国の仮想通貨規制立法が政権主導で最終局面に入っていることを示す動きと受け止められています。

ベッセント財務長官はXへの投稿で「米議会は約5年にわたり金融の未来を国内に取り込むための枠組みづくりに取り組んできました。いまこそ上院銀行委員会がマークアップを行い、CLARITY法をトランプ大統領のもとへ送るべき時です」と述べています。

さらに同長官は4月22日の上院歳出小委員会でも、CLARITY法案の成立はドルの基軸通貨としての地位を守るうえで不可欠だとして、議会に可決を求めました

コインベースCEOが支持表明に転換

政権3トップの要請翌日となる4月10日、1月に支持を撤回していたコインベースのアームストロングCEOが「可決する時が来た」とXに投稿し、CLARITY法案への支持を明確に表明しました。

約3か月を経て態度を変えた背景には、停滞期間中の交渉を通じて、条文がコインベース側にとって受け入れ可能な水準まで修正されたことがあるとみられます。

上院農業委員会は2026年1月にCFTC管轄部分をすでに可決しており、残る関門は上院銀行委員会による証券関連部分の通過です。アームストロング氏が支持に回ったことで、業界内の対立は一定程度収束に向かいつつあり、法案成立に向けた環境が整い始めています。

マークアップ再延期と「5月デッドライン」

一方で、4月中のマークアップ実施は実現しませんでした。4月16日には、上院銀行委員会によるマークアップが4月最終週以降に再延期される見通しであることが明らかになっています。FRB議長候補ケビン・ウォーシュ氏の指名公聴会(4月22日)が議会日程を圧迫したことに加え、残る論点の最終調整に時間を要していることが理由です。

ギャラクシー・デジタルのアレックス・ソーン氏は「4月末までに委員会を通過しなければ、2026年中の成立見込みが大幅に低下する」との見解を示しています。一方で、仮想通貨ベンチャーキャピタル「パラダイム」の規制担当副社長ジャスティン・スローター氏は「実質的な期限はメモリアルデー(5月末)以降だ」とし、上院本会議への移行まで6〜7週間あるとの楽観的な見方も示しています。

ホワイトハウスのデジタル資産担当上級顧問パトリック・ウィット氏は4月18日、ステーブルコイン利回り交渉における銀行業界の姿勢を「greed(欲)」と断じ、交渉打ち切りを求める異例の発言を行っています。行政側が業界ロビー活動に対して公開の場でここまで強い言葉を使うのは前例が少なく、立法の遅れに対する危機感の強さがにじんでいます。

120社超が共同書簡で即時審議を要請

2026年4月23日には、クリプト・カウンシル・フォー・イノベーション(CCI)とブロックチェーン協会が、上院銀行委員会に宛てた公開書簡を公表しました。書簡にはコインベースやクラーケンを含む120社超が署名し、マークアップへの早期移行を求めています。

リップルのブラッド・ガーリングハウスCEOも上院議員との直接会談でCLARITY法案の早期成立を訴えており、産業界と政策当局の双方で法案への関与が強まっています。予測市場ポリマーケットでは、同法案が2026年に署名成立する確率が約45%で推移しており、4月中旬から低下傾向にあります。

4月30日には、トム・ティリス上院議員がCLARITY法案について「審議に進むべき段階」として推進を要請しており、5月のマークアップ実現に向けた動きは続いています。

CLARITY法案が成立した場合の影響

CLARITY法案が成立すれば、取引所、投資家、事業者のそれぞれに具体的な変化が生じます。ETFやRWA、DeFiといった成長分野にも波及し、日本を含む各国の規制設計にも一定の影響を与える可能性があります。

取引所・投資家が受ける恩恵

法案が成立すれば、仮想通貨取引所は自社が提供するトークンや取引サービスについて、SECとCFTCのどちらの管轄に属するのかを法的根拠に基づいて判断できるようになります。グレーゾーンを前提に設計せざるを得なかった事業モデルを見直しやすくなり、規制対応にかかるコストの低減も期待されます。

投資家にとっては、取引所の運営基準や詐欺防止措置が全国共通のルールとして定められることが重要な変化になります。これまでは州ごとに規制が異なり、利用する取引所によって保護水準にも差がありましたが、連邦レベルで統一的な消費者保護基盤が整えば、取引環境の透明性は高まりやすくなります。

ETF・RWA・DeFiへの波及効果

規制の明確化は、ETF(上場投資信託)市場にも影響します。ビットコイン・イーサリアム以外の銘柄についても、「デジタル商品」として分類されれば現物ETFの組成が法的に後押しされ、ソラナ(SOL)カルダノ(ADA)など主要アルトコインのETF申請が進みやすくなる可能性があります。

RWAトークン化(現実資産のブロックチェーン上での証券化)についても、資産分類が法的に明確になれば、トークン化株式やトークン化債券の発行・流通を進めやすくなります。DeFi分野では、非管理型プラットフォームと開発者が送金事業者として扱われないことを明確にする条項が盛り込まれており、DeFi(分散型金融)開発者が抱える法的リスクの一部が軽減される見通しです。

日本の金商法改正との接点

米国でCLARITY法案の審議が進む一方、日本でも仮想通貨の規制体系は転換期を迎えています。金融庁は2026年4月10日、金融商品取引法および資金決済法の一部を改正する法律案の説明資料を公表し、暗号資産規制の具体的な設計を明らかにしています。

日本の改正案では、発行者がいる暗号資産を「特定暗号資産」として新たに定義する方針が示されており、CLARITY法案の「証券的デジタル資産」分類に近い考え方が採用されています。仮想通貨の税金・確定申告の制度設計や、税制改正(申告分離課税20%の導入方針)とも密接に関連しており、米国の規制確定が日本の制度設計に間接的な影響を与える可能性があります。

ステーキングやレンディングなど、収益を生む仮想通貨サービスの法的位置づけについても、米国の分類基準が国際的な参照材料になる可能性があります。日本を含む各国の規制当局は、米国でどのような線引きが行われるのかを注視しています。

CLARITY法案が不成立の場合のリスク

CLARITY法案が今会期中に成立しなかった場合、仮想通貨市場には複数のリスクが残ります。次期議会への持ち越しによる施行遅延、事業者の米国外流出、投資家が直面する不透明感の長期化が主な懸念点です。

次期議会への持ち越しと「2029年施行」シナリオ

CLARITY法案が2026年会期中に成立しなかった場合、法案は次期議会(2027年〜)に持ち越され、新たなリーダーシップのもとで内容がゼロから見直される可能性があります。投資銀行TDコーウェンは、CLARITY法案が2027年まで可決されず、施行が2029年にずれ込むシナリオを公表しています。

上院デジタル資産小委員長のシンシア・ルミス議員は「2030年まで次の機会は来ないかもしれない」と警告しており、今回の会期を逃せば、仮想通貨規制の空白状態が数年単位で続くリスクがあります。

米国外への事業者流出リスク

規制が不透明なまま推移すれば、仮想通貨事業者がより明確な規制環境を持つ国や地域へ拠点を移す動きが加速する可能性があります。ベッセント財務長官はウォール・ストリート・ジャーナルへの寄稿で「米国に拠点を置くメリットがリスクを上回ることはほとんどなかった」と指摘し、規制の不在そのものが事業者の国外流出を招いていると警告しています。

欧州連合ではすでにMiCA(暗号資産市場規制)が施行されており、シンガポール・アブダビ・英国でも規制枠組みの整備が先行しています。米国の法整備が遅れれば、投資、雇用、技術開発がこれらの法域に流出するリスクが高まります。120社超が署名した共同書簡でも、この競争力低下への危機感が強調されています。

投資家が取るべきスタンス

規制の行方が不透明な局面では、法案の成否に一喜一憂するのではなく、規制環境の変化に備えたポートフォリオ管理が求められます。法案が成立すればETF市場の拡大や機関投資家の参入加速が見込まれる一方、不成立の場合は規制リスクプレミアムが残り、相場や事業展開の重しになる展開も想定されます。

仮想通貨の始め方を含む基礎的な知識とあわせて、自身が利用する取引所がどの国の規制下にあるのかを確認しておくことが、投資家としてのリスク管理の第一歩になります。

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よくある質問(FAQ)

CLARITY法案はいつ成立しますか?

2026年4月30日時点では、上院銀行委員会でのマークアップ(修正審議)が5月に実施される見通しです。マークアップが完了すれば上院本会議での採決に進み、下院との最終調整を経て、大統領署名による成立プロセスに入ります。

予測市場ポリマーケットでは2026年中の成立確率が約50%とされており、5月のマークアップ実施が成立の成否を左右する最大の焦点となっています。ただし、ステーブルコイン利回り規定や倫理条項をめぐる最終調整が長引いた場合、2027年以降に持ち越される可能性も指摘されています。

CLARITY法案が成立すると日本の投資家に影響はありますか?

直接的な影響としては、日本の投資家が利用する海外取引所の規制環境が整備されることが挙げられます。CLARITY法案が成立すれば、米国拠点の取引所は連邦レベルの運営基準に準拠する必要があり、利用者保護の強化が期待されます。

間接的には、米国での規制確定が日本の金商法改正の議論にも影響を与える可能性があり、申告分離課税20%への移行に向けた制度設計の加速につながる可能性があります。また、ETF市場の拡大によって、日本国内での仮想通貨関連投資信託の選択肢が広がることも期待されています。

ビットコインやイーサリアムは証券になりますか?

CLARITY法案の現行案では、ビットコインやイーサリアムのように十分な分散性を備えたデジタル資産は「デジタル商品」として分類され、CFTCの監督対象となります。証券(SEC管轄)には分類されません。

この点については、2026年3月にSECとCFTCが共同で「大半の仮想通貨資産は有価証券には該当しない」とするガイダンスを公表しており、法案成立前にも行政レベルでの方向性が示されています。

GENIUS法とCLARITY法案の違いは何ですか?

GENIUS法はステーブルコインの発行・監督基準を定めた法律で、2025年7月にすでに成立しています。ステーブルコインの完全担保義務、発行者の監査要件、外国発行ガイドラインなど、ステーブルコインに特化した規制です。

一方、CLARITY法案はステーブルコイン以外のすべてのデジタル資産を対象とし、証券・商品の分類基準、取引所の登録制度、SECとCFTCの管轄権整理など、仮想通貨市場全体の構造を定める包括的な法案です。GENIUS法が「デジタルマネーのルール」、CLARITY法案が「デジタル資産市場の交通法規」と考えると、両者の違いを整理しやすくなります。

まとめ

CLARITY法案は、米国の仮想通貨市場で長年課題となってきた規制の曖昧さを解消し、デジタル資産の法的地位を体系的に定義する包括法案です。ビットコインやイーサリアムを「デジタル商品」としてCFTC管轄に、投資契約性のあるトークンをSEC管轄に振り分けるほか、取引所の登録制度やステーブルコインの利回り規定も含む幅広い内容になっています。

2025年7月の下院可決から上院審議に移行して以降、ステーブルコイン利回りをめぐる銀行業界と仮想通貨業界の対立により、審議は長期にわたって停滞してきました。しかし、2026年4月に入ってからは、政権3トップの一斉要請やコインベースCEOの支持転換など、成立に向けた動きが急速に強まっています。

5月のマークアップ実施は、2026年中の成立可能性を左右する大きな節目です。上院銀行委員会の審議日程が今後どのように確定するかによって、法案の行方は大きく変わります。日本を含む世界各国の規制設計にも影響を与え得るため、CLARITY法案の動向は引き続き注視しておく必要があります。

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