右巻きと左巻きは、ふつう交われない
動物の体の左右の違い(左右非対称)は、体づくりの土台となる性質です。
しかし、その左右がどう決まるのかを探る研究は、なかなか進んできませんでした。
ほとんどの動物では、左右の向きが個体によって変わらず、比べる相手がいないからです。
まれに臓器の左右が入れ替わる例もありますが、その多くは胚(受精卵から育つ途中の体)の発生の問題と結びついています。
その中でカタツムリは例外で、野生でも殻の巻く向きが違う個体がたくさん見つかる種がいます。
ジェレミーと名づけられた珍しい左巻きのカタツムリが、右巻きのカタツムリの上に乗っています。マイマイ属とは別の仲間の種で、今回の研究で調べたカタツムリではありません。Credit: Angus Davison / Wikimedia Commons(CC BY-SA 4.0)これまで手がかりにされてきたのは、モノアラガイ(Lymnaea stagnalis)という巻き貝でした。
ただ、モノアラガイの左巻きはまれな変異で、体に異常を伴います。
この変異で左巻きになったモノアラガイでは、胚のおよそ半分しかふ化しません。
病気を起こす変異を調べても、自然に生まれる左右の違いの仕組みを知る手本にはなりにくいのです。
そこで英ノッティンガム大学と東北大学のチームは、日本の野生のマイマイ属(Euhadra)のカタツムリに目を向けました。
マイマイ属には30を超える種があり、そのうち4種は左巻きです。
さらに1種(ヒダリマキマイマイ)は、名前に反して、地域によって右巻きのものもいます。
ゲノム全体の系統樹からは、この属の左巻きは右巻きの祖先から1回だけ生まれ、その後ヒダリマキマイマイの仲間の中で右巻きに戻ったものがいると考えられています。
ヒダリマキマイマイです(宮城県大崎市の鳴子温泉、2023年7月)。Credit: Timur Kalininsky / iNaturalist(CC BY 4.0)ここでも、原因の遺伝子を探すには大きな壁がありました。
右巻きと左巻きでは生殖器の位置が左右逆になるため、ふつうはうまく交尾できないのです。
そのため両者は、たいてい別々の場所に分かれて暮らしています。
遺伝子が混ざり合っていないと、多くの個体の遺伝子を比べて原因を絞り込む方法(ゲノムワイド関連解析)はうまくいきません。
チームに必要だったのは、右巻きと左巻きが一緒に暮らし、遺伝子を交わし合っている場所でした。







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