オリンピック金メダリストのアリサ・リュウさん、カナダ発のBLドラマ『Heated Rivalry』で知られる俳優ハドソン・ウィリアムズさん、そしてアイスランド出身の歌手レイヴェイさんは、それぞれ異なる才能で今年一躍有名になった。
しかしネット上の多くのファンにとって、彼らは単なる有名人ではない。白人とアジア人のルーツを持つというアイデンティティで結ばれた架空の王国「Wasia(ホワジア)」や「Wasian(ホワジアン)アベンジャーズ」の“王子”や“王女”でもある。
「ホワジアン」は白人とアジア人を組み合わせた造語であり、新しい言葉ではないが、ミックスルーツのアイデンティティを研究するユタ大学のマイラ・ワシントン准教授は「これまで、これほど可視化されたことはなかった」と話し「今まさに、自分たちを新しい形で分類できる世代が現れている」と語った。
TikTokやInstagramでは、「ホワジアン」セレブのルーツへの注目が急速に高まっており、当人たちもこの呼び名を気に入っているようだ。
レイヴェイさんの新曲「Madwoman」のミュージックビデオには、リュウさんやウィリアムズさんのほか、俳優ローラ・タンさんや、ガールズグループKatseyeのメーガン・スキエンディエルさんなど「ホワジアン」キャストが出演しており、リュウさんがSNSに「ホワジア最高!」と投稿すると、レイヴェイさんは「ホワジア万歳」と返信した。
レイヴェイさんは米メディアHollywood Reporterに対し、「子どもの頃、音楽やメディアで自分のような見た目の人を見ることは少なかった。だからこの『Madwoman』のビデオで、自分がその存在になりたかった」と語っている。
同じようにホワジアンであるファンたちは、この新たな動きを歓迎している。
シカゴに住む22歳のTikTokクリエイター、ヘイリー・バスさんは、ウィリアムズさんのドラマ『Heated Rivalry』での急速なブレイクとリュウさんの金メダル獲得が、2026年を「ホワジアンの年」として決定づけたと考えている。
「ホワジアンたちがみんな団結して、『こんなにたくさんいたなんて知らなかった』って感じで盛り上がっています」と語った。
2026年は「ホワジアンの年」?
ワシントン大学のコミュニケーション学教授で、ミックスルーツのアジア系アメリカ人を研究するレイラニ・ニシメ氏は、アメリカの歴史では「ホワジアン」以前にも、複数のルーツを持つアジア人を表す言葉はあったと指摘する。
例えば、ベトナム戦争後には、アメリカ兵の子どもとされる白人とアジア人のルーツを持つの人々が「Amerasian(アメラジアン)」と呼ばれた。また1980〜90年代には、ハワイ語で「一部」を意味する「Hapa(ハパ)」が広く使われたが、文化の盗用との批判を受け、次第に使われなくなったという。
ニシメ氏は、「ホワジアン」という言葉は、特定の経験を言語化し、同じ背景を持つ人々がコミュニティを見つける助けになる可能性があると言い、「名前がつくことで、人々は人種についてより複雑に考えることができるようになる」と語った。
また、「ホワジアン」という呼び方はユーモラスな造語でもあり、人種についての会話を軽やかにする側面もある。
バスさんは、「女王はまだ決まっていないけど、王様はキアヌ・リーブスだとみんな話してる」とホワイジアの“王室”を想像して楽しむネットのファンについて語る。
コミュニティを生む一方で、分断も映し出す
一方で懸念もある。ニシメ氏は「『ホワジアンとはこういうものだ』という境界を生み出してしまう可能性がある」と危惧する。
またワシントン氏は、本人が公にそう名乗っていない場合に他者が「ホワジアン」と呼ぶことには注意が必要だと述べ、「この言葉は他人に使うものではなく、自分自身に対して使うべきです」と指摘する。
異なるルーツを持つホワジアンたちを結びつけているのは、単なるユーモアだけではない。彼ら特有の疎外感や居場所のなさという共通体験もある。
ホワジアンたちは他にも、アジア系女性が白人男性と交際することをめぐる有害なステレオタイプとの闘いを強いられるとバスさんは述べた。
「白人でもない、アジア人でもない」
「私たちはいつも、『白人でもない、アジア人でもない』と言われ続けるんです」
韓国系アメリカ人のバスさんは、韓国に住んでいた際、自分が韓国人として受け入れられなかったと当時の経験を語り、「だからこそ、より広い意味のミックスルーツという言葉に共感する」と説明する。
「どの国にルーツがあるのかを細かく説明するより、『ホワジアン』と言った方がラクなんです。そもそも自分の民族グループに完全には属していないと感じているから」
黒人とアジア人のルーツを持つ人を指す「ブラジアン」もかつて注目を集めたが、こうしたトレンドは「常に循環している」とワシントン氏は言う。
母親がインドから、父親がジャマイカからの移民であるカマラ・ハリス氏が注目される前には、“ザ・ロック”様ことドウェイン・ジョンソンさんやゴルフのタイガー・ウッズ選手、モデルのキモラ・リー・シモンズさんなどが代表的な存在だった。
またホワジアンの中でも、誰が注目されるかには偏りがある。現在人気を集めているのは、ウィリアムズさんやリュウさんのような東アジア系が中心だ。
バスさんは、レイヴェイさんのMVでも主役は東アジア系に限られており、「南アジア系の可視化ももっと増えるべき」と指摘する。
この状況に対しニシメ氏は「東アジアはより裕福で政治的影響力も大きい」と述べ、「そのヒエラルキーによって、注目や報道が集中するのです」と説明する。
メディアにおける「ホワジアン」の躍進は、複数のルーツを持つというアイデンティティをめぐる認識が変化している一例だが、依然として課題は残っている。
それでも、オンラインでコミュニティを求める人々にとっては、一歩前進だ。

2 時間前
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