むしろ「中国有利」に変化。米国とイスラエルのイラン攻撃で“中国が窮地”なる日本メディアの大きな誤読

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Mexico,City,,Mexico,June,6,2013.,Enrique,Peña,Nieto,,President

イラン戦争に伴うホルムズ海峡の閉鎖で、深刻な影響に晒されている国際社会。そんな中にあって日本メディアはしきりに「中国の苦境」を伝えていますが、はたしてそれは真実なのでしょうか。今回のメルマガ『富坂聰の「目からうろこの中国解説」』ではジャーナリストの富坂聰さんが、かような報道と現実のズレを2つの観点から検証。その上で、中国を取り巻く国際環境の変化と各国の動きを詳しく紹介しています。
※本記事のタイトルはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:イラン戦争の裏で、外交、台湾海峡問題で静かに点数を稼ぐ中国の思惑

日本メディアの「読み違い」か?イラン戦争の裏で、外交、台湾海峡問題で静かに点数を稼ぐ中国の思惑

アメリカとイスラエルがイラン攻撃に踏み切って以降、ホルムズ海峡が事実上封鎖され、世界のサプライチェーンに深刻な影響が及んでいる。

なかでも話題は、ホルムズ海峡を通るエネルギー・物資に大きく依存するアジアへのダメージだ。

最も強い逆風にさらされているのが台湾だろうことは想像に難くない。日本や韓国も同じように先行きが懸念されている。

そうした中、なぜか日本のメディアでは中国が被る打撃に焦点を当てた報道が目立つのだ。

その中身は大別して二つある。一つは友好国・イランの窮地を同じく中国の窮地としてとらえようとする国際政治の視点からの見方だ。もう一つは、イラン産原油の90%以上を中国が輸入していることをとらえ「中国経済への深刻なダメージが及ぶ」との憶測記事だ。

だが現状を見る限り、中国がどちらの視点からも「慌てふためいている」様子は伝わってこない。やせ我慢しているということでもなさそうだ。

いったいなぜなのだろうか。順番に見てゆくことにしよう。

まずは、国際政治の視点から。アメリカとイスラエルのイラン攻撃で国際秩序の崩壊が話題になる中、中国を取り巻く環境はむしろ中国有利に変化しているからだ。注目される動きは主に二つだ。

いずれもミドル・パワーと呼ばれる国々の動向だ。特に欧州を中心にホルムズ海峡問題に対し「アメリカ抜き」で向き合おうとする動きだ。中心はイギリスのキア・スターマー首相やフランスのエマニュエル・マクロン大統領だ。米外交誌『ザ・ディプロマット』はこれを「ヘッジング同盟」と報じている。

そしてもう一つは米誌『フォーブス』が「中国ピボット」と呼んだ、ミドル・パワーの国々の北京詣でとも言うべき現象だ。

北京詣での最初の流れは2025年末から翌年初めにかけて見られた。

具体的には、昨年末に韓国の李在明大統領とフランスのマクロン大統領が訪中。年が明けると1月にカナダのカーニー首相、フィンランドのペッテリ・オルポ首相、そして英国のスターマー首相が北京を訪れ、2月末になると今度はドイツのフリードリヒ・メルツ首相が、首相として初の訪中を果たすという動きだ。

2月の末には周知のようにアメリカ・イスラエルによるイラン攻撃が始まり、ホルムズ海峡の封鎖をめぐり世界が固唾を飲んで戦局を見守っていた。

そうした中「中国ピボット」と呼ぶべき2回目の流れが4月に起きる。アラブ首長国連邦(UAE)アブダビ首長国のハーリド・ビン・ムハンマド・ビン・ザーイド皇太子、スペインのペドロ・サンチェス首相、ロシアのラブロフ外相、ベトナムのトー・ラム国家主席(ベトナム共産党中央委員会書記長)がそれぞれ北京を訪れたのである。

一連の会談で習近平国家主席は、「世界が『ジャングルの掟』に逆戻りすることに旗幟鮮明に反対する」と語り、アメリカの動きをけん制した。

イラン攻撃をめぐり米中が対峙する中、かつてならスペインもUAEも中国とあえて距離を詰めるような外交をすることはなかったはずだ。それだけ世界の景色が変わっていることを意識させた。

中国が台湾の国民党主席から引き出した「共通の政治的基礎」

一方、原油の輸入が止まることでの中国経済へのダメージだが、これに関しては日本の一部で騒がれた「ダメージ」よりも、中国の「備え」の手厚さがかえって目立っているのではないだろうか。

そのことはエネルギー不足が懸念される台湾に対して「統一されれば何も心配なくなる」と発信したことからもうかがえる。

さて、その台湾で注目を集めたのが中国国民党(国民党)の鄭麗文主席の訪中だ。

鄭麗文主席が到着したのは4月7日。翌日、南京市の東郊外にある中山陵(孫文の墓)を参拝した後に上海でお決まりの中国のハイテク技術を見学。最後に北京に向かうというスケジュールだった。

上海ではECプラットフォームの美団の上海本社を訪れ、鄭主席自ら注文したタピオカミルクティーが「空から降ってくる」のを体験した。

ハイライトは北京での習近平国家主席との会談だが、国共(国民党と共産党)両党の指導者の会談は10年ぶりだった。

この会談で中国側は、鄭主席から「国共両党は、『九二共識』(92コンセンサス)の堅持と『台湾独立』反対という共通の政治的基礎を堅持」という言葉を得て、大いに満足だったはずだ。

鄭主席の訪中終了に合わせて発表された台湾に対する新たな10項目の措置は、上海市と福建省の住民を対象にした、台湾本島への「個人旅行のパイロットプログラム再開を促進する」ための取り組みなど、台湾に対する優遇政策であった。

直行便の拡大の他、台湾のドラマやドキュメンター、アニメの輸入も認める方針だという。

現状、国民党は野党であり、その国民党内でも今回の訪中への評価は固まっていない。だが、それでも中国にとっての成果が大きいとおもわれたのは、鄭主席が中国を離れる際に「平和が最高のお土産」と語った点にある。

これは単なる台湾統一に向けたものではなく、紛争に悩む世界に向けて、中国の姿勢が協力にアピールできたからだ。

(『富坂聰の「目からうろこの中国解説」』2026年4月19日号より。ご興味をお持ちの方はこの機会に初月無料のお試し購読をご登録下さい)

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